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どっかで観た

 わたしが「ビートルズ」を知ったのは、小学生の時にジョン・レノンの死亡ニュースを聞いた時だ。その少し前に、ポール・マッカートニーという海外の大物らしいミュージシャンが来日して、大麻所持で逮捕されて公演がおじゃんになったとニュースで流れていたが、そのご仁が元「ビートルズ」とは全く知らないまま。「ずうとるび」というお笑いかなんだかよく解らないグループは知っていたけれど、元ネタがどうこうというのには興味がないままだった。

 ジョン・レノンの死は、その後の角川映画の『悪霊島』の冒頭に使われるなど、時代の象徴なのかと、単純な印象を持ち続けている。

 多少は洋楽を耳にするし、今でも楽器の演奏をしようとなると、「ビートルズ」の曲が楽譜集の中に入っている。

 二十年以上前に、新聞に「ビートルズ」の映画が公開されると記事を目にした。

 五人目の、幻の、と形容詞付きで呼ばれる、ジョン・レノンの親友、スチュワート・サトクリフの映画だという。ドイツで公演している間、そこで知り合った写真家の女性と恋に落ち、元々も画学生でもあったので、画業に専念するために、「ビートルズ」を抜けた。しかし、翌年脳出血で急逝。「ビートルズ」のマッシュルームカットはそのドイツ人の写真家が提案したもの、なんて、当時を懐かしむ写真家の姿が添えられ、載っていた。

 その映画に興味が湧いたが、地方に来なかったような気もするし、忙しかった所為もあるし、そもそもミニシアター系にしか掛からなかったのだと思う、観そびれた。

 先日やっとそれを観た。

『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』はジョン・レノンが仲間と共にハンブルクに旅立とうとする場面で終わるが、『バックビート』は仲間と共にハンブルクで一旗揚げようとするところから始まる。夜遊びも、美術学校でも一緒のジョン・レノンとスチュワート・サトクリフ。通称スチュは画業に専念しろと忠告する人がいるくらいだが、ジョンたちと一緒にハンブルクの酒場でバンドの生演奏の舞台に立つ。仕事をこなしていく中で、ポール・マッカートニーはスチュのベース演奏が良くないと口に出し、ジョンが庇うのが度々繰り返される。仲を揶揄さえされる。場末の酒場に相応しくない垢ぬけた姿の男女が客席に現れ、ジョンとスチュはショートカットの金髪の女性に目が釘付けになる。その女性はスチュに興味を抱いたよう。

 アストリッドという写真家の女性とスチュはあっという間に親しくなり、アストリッドの恋人のクラウスは戸惑い、ジョンは苛立つ。

 史実をなぞりつつ、ジョンとスチュの友情と、アストリッドとの恋愛、当時の世相と芸術が描かれる。そしてまた、「ビートルズ」のドラマーはピート・ベストで、リンゴ・スターは名前くらいしか出てこない。

 アストリッドがスチュの髪型を変え、変だと評しつつ、ラストシーンで、ピート以外のメンバー三人、真似をして前髪を下ろしたマッシュルームカットで可愛くなっている。

 ジョン・レノンの最初の奥さんのシンシアがどんな女性か知らないが、アストリッドとの対比の為か、芋姉ちゃんぽい。

 最愛の相手を喪ったジョンとアストリッドが互いをいたわりあう最後が美しい。後年ジョンが年上の芸術家と恋愛するのも解るなぁって感じもするように作られている。


 スチュの役の男優は正統派ハンサムの顔立ちで、どっかで観たと思った。検索してみたら、うん、過去に別の映画で観て印象的だった。ジョン・ウォーターズの『セシル・B/シネマウォーズ』に出てたあんちゃんだ。このかなりトンデモナイ映画のトンデモナイ役が似合っていたので、覚えてた。

 清水義範の『世界衣装盛衰史よのなかはきぬぎぬのうつろい』(角川文庫)の中の、『伝説の展開図――偽ビートルズ伝』なる中編は、偏っているのだろうけれど、面白い。

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