極道さんたちが出てくる小説
大型連休が終了してしまいました。大型連休中にNHKのBSプレミアムでフランシス・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』を放映していました。一作目と二作目が放送されて、三作目はこれからの放送予定。
『ゴッドファーザー』はこれまで度々映画館でリバイバル上映されたり、テレビで放映されたりしていましたが、わたしは観たことがありません。一作一作長いのと、内容が暗いらしいと聞いて、途中で寝てしまいはしないだろうかと心配なのでした。
四月のみどりの日の昼間、一作目の放送で、字幕版だけど、ほかのことしながらでも、テレビを点けとけば、チラチラと視聴するだろうと思い、テレビをスイッチオン。冒頭部分からハリウッドのプロデューサーだかの馬の辺りまで来ましたら、良人が部屋に来まして、「チャンネル変えてもいいか?」と言いました。一応録画しているので、譲りました。今度何時みるのか解りません。
チャンネルを変えられる直前の、ハリウッドのプロデューサーさんの愛馬がとんでもないことになった場面を観つつ、昔読んだ小林信彦の『唐獅子株式会社』で出てきたのはこれかと、思い出しました。
『唐獅子株式会社』は映画化されたこともある、反社会的勢力の人たちが主な登場人物のコメディの小説です。コメディというよりパロディ色が強いです。わたしが読んだのは新潮文庫でしたが、巻末の解説が筒井康隆で、パロディの元ネタを詳しく載せていました。映画評論をしている著者らしく、映画のネタがチラホラ。『未知との遭遇』やら『カサブランカ』やら、そして勿論、『ゴッドファーザー』。
どうして観てもいない『ゴッドファーザー』が元ネタと解るのかといえば、作中人物の極道さんたちが、その映画観て、色々と褒めたり感想を言ったりしているといった場面があるからです。おまけに『唐獅子株式会社』の組長さんが気に入った女性歌手を大々的に売り出そうと計画して、業界関係者を呼び寄せて、宿泊先のホテルの枕元にチワワの生首を置いといたとか、話しているのでした。「馬の生首は用意できなかった」とか言って。
いや、映画を観る限り、ただ動物の首で脅したんじゃないってのは解ります。そこはギャグとして笑うとこ。やっぱり本家の映画はチラ見でも迫力がありました。
また、放送局を手に入れて、ドラマを制作すると決まって、『ゴッドファーザー』のようなドラマを作りたい、となるのですが、それは先行して漬物屋(名付け親から菜漬け親の発想だそうです)のドラマがあるから使えないとなり、『カラマーゾフの兄弟』はいかがとインテリが提案してきます。周囲のヤーさんたちは勝手に日本的な解釈をして、人情噺とは違うんですがと主張するインテリを無視して『てなもんや三兄弟』のタイトルで行こうと決定します。
『ハムレット』の‟To be,or not to be,……”から始まる独白も関西弁で語られ、まるで出入りの前の心境のよう。
発想の妙もあるし、元ネタを探るのも楽しいし、お道化の登場人物を笑うのもよし、面白い本だったなあと、ここに紹介いたしました。




