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イタリアに関しての本

 新潮社から出ている塩野七生の『イタリアからの手紙』はエッセイ集です。わたしの手持ちの文庫本の巻末には「この作品は昭和四十七年六月新潮社より刊行された。」とあるので、実際にエッセイを綴られたのは五十年くらい前になるでしょう。エッセイなので勿論塩野七生が語るのですが、この『イタリアからの手紙』の中の二つの話は、塩野七生のかつて配偶者だったイタリア人医師と思われる男性が語り手という形になっています。その一つの「村の診療所から」は、夏の一週間に、先輩医師に代わって片田舎の診療所に診察をしに行く話です。

 当時のイタリアは健康保険制度がきちんと行き届いて、医療費がタダになっていました。で、その経験の浅い青年医師が田舎の診療所に赴いて、驚いてしまうのです。既に所見がなくなっているのに高血圧の薬を求める患者、全く症状があると思えないのに風邪だからいつもの薬をくれという患者、急患と言われて車を飛ばして往診すれば患者は六歳の子どもで元気に走り回っています。熱があるというので体温測定すれば三十七度(体の小さい幼児なら平熱に近い)しかありませんし、診察してみても体に異常はありません。

「これで急患と呼び出さないでください」

 気持ちを抑えて母親に注意するものの、悪びれた様子もなく、ついでに家族も診てくれるかと依頼してきます。

 薬剤師からは、診察したら処方箋も書いてくださいよと言われちゃいます。

 そのほかにもドラマがあるのですが、タダなんだからと気軽に医者に診てもらって薬をもらってと、医者が真剣に患者に対するのか、こんなものだと割り切るのか、問題が潜んでいます。

 新型肺炎で、イタリアの患者数や医療現場の混乱などニュースで伝えられてきます。

 五十年前のエッセイと同じく、医療費負担はどうなっているのだろうと思ったら、webニュースでイタリアの医療費はほぼタダとありました。

 財源として国の医療保険の保険料の徴収をしているのか、税金で一元的に徴収しているのかまでは知りませんが……。

 日本では国民皆保険で、保険料を所得額や給与額で算定、料率は変化していますし、窓口の自己負担の率も昔とは違ってきています。

 医療費負担が高額になって財政を圧迫しているのは、多分、どこの国でも同じでしょう。とはいってもいい知恵が浮かぶものでも無し。健康は大切です。


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