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伊福部昭の音楽を聴きました

 中学一年生の時の担任は音楽の先生でした。その先生はベートーヴェンがお好きだったようで、よくその話をしていました。ベートーヴェンが耳が聞こえなくなっていくのに絶望して、遺書をしたためた、それが今でも残っていると、その写しを持っていると、田舎の中坊にドイツ語を解する生徒がいないのを承知で、その遺書のコピーを生徒に配りました。ベートーヴェンは自殺しようと森に行ったけれども、その田園風景や森の清々しい光景に心が動き、自殺を思いとどまり、交響曲第六番『田園』を作曲したと、語ってくれました。

 これがどこまで史実に基づいているのか、わたしは知らないです。でも長じて『田園』を(CDでですけど)聴いて、心の洗われる美しい曲だ、生きていこうと希望を抱くに値すると感じました。『田園』は、昔麻婆豆腐の調味料のCMに使われ、今でもカトリック教会のラジオ番組オープニングで流れています。

 で、伊福部昭の音楽、特撮映画以外のクラッシック音楽を聴きたいと、近くのレンタルショップで見掛けないので、ネットレンタルで借りてようやく聴きました。

 伊福部昭は父親の代に北海道に入って、そこで育ち、アイヌの方々の生活を見聞きし、独学で音楽、作曲を学び、現在の北海道大学の前身の帝大では音楽を履修していません。林業について学び、その職業に就き、戦時中は物資不足、中でも金属が不足しているので、木材を放射線で強化して兵器に転用できないかの研究をやらされて、被曝したそうです。ここら辺、片山杜秀の『鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)やテレビで伊福部昭の特集をしていた番組を参考にしています。

 変わり種の出身の音楽家ではあります。

 アイヌ語で「立って踊る」を意味する「タプカーラ」、『シンフォニア・タプカーラ』、『管弦楽のための「日本組曲」』を聴いた感想を綴ります。

『シンフォニア・タプカーラ』は、静かに始まりますが、すぐに大地に宿る命が湧き上ってくるようなリズムが響きます。次いで、静けさが戻り、北の大地の情景描写だろうかと思わせます。第三楽章に入ると、当に「立って踊る」。大地を踏み鳴らし、謳い踊るとしか言葉では表現しようないリズムとメロディです。大人し気な曲ではないです。心の底から自然の恵みの中に住まう暮らしを謳歌して、喜びを表す終章。

『管弦楽のための「日本組曲」』は、Ⅰ.盆踊、Ⅱ.七夕、Ⅲ.演伶(ながし)、Ⅳ.佞武多(ねぶた)の四つに分かれています。

 オーケストラで日本の音階、和楽の旋律を奏でるのを聴いたことはありますが、この『日本組曲』はそんな簡単に済まされるレベルではありませんでした。盆踊は祭囃子そのものが表されていました。わたしが聴いたバージョンでは和楽器は使用されていません。テレビのニュースで東北の夏祭りと題したねぶた祭りの映像を観たことがありますが、実際に青森に行って見物したこともなければ、震災後の東北六魂祭も行ったことがありません。しかし、この『日本組曲』の佞武多を聴いて、勇壮な姿の武者ねぶたの山車が目の前を通っていく映像がありありと浮かんでくるようでした。『田園』を聴いた時以来の驚きと感動でした。『日本狂詩曲』より『日本組曲』に大きく惹かれました。

 音楽評論家の片山杜秀が伊福部昭はメロディよりもリズム優先の作曲と言っていました。そこはどうだか判断がつきませんが、伊福部昭のクラッシック曲を聴いて、確かに下手でもつい皆で踊りたくなるような衝動、命の躍動を感じさせると深く肯きました。

 ゴジラの作曲家とだけで覚えているのは、実に勿体無いです。『サロメ』と『プロメテの火』も聴きました。舞踏曲と冠されていて、物語を想像しながら聴いていました。舞台でどんな振り付けだったんでしょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 伊福部昭さん、北海道の人で、ゴジラの曲を作った人だ、というのは知ってました。が、独学で音楽を学び、北海道帝大で林業について学んでいた――という事は全然知りませんでした。しかも、被爆をなさっ…
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