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京に田舎あり

 映画『翔んで埼玉』が好評上映中だとか。原作漫画を読んだことがないですし、映画を観に行く予定もないです。お正月に映画館に行った際に、『翔んで埼玉』のチラシをもらってきてみて、埼玉県の地図に大笑いしておりました。

 昭和の昔、高速道路の建設で、東北自動車道の計画があり、工事が着工される際、東北自動車道の道筋に栃木県が入っていて、その栃木県の某市が、「ウチは東北じゃない!」と抗議したそうです。井上ひさしが、「目くそが鼻くそを笑っている」と評論したとかしないとか。

 東北自動車道の川口インターのある埼玉県がどう対応したかは知りません。関東圏の出入り口だからと、どんと構えていたのか、田舎扱いに今更何もと諦観を抱いていたのか、どうなのでしょう。多分前者でしょう。

 陸奥の国だの、道の奥だの呼ばれ、戊辰戦争に敗れて白河以北一山百文と言われ、日本のチベ〇トなど未開発の場所があるなどと言われ続けてきた東北出身のわたしには、どこが都会で田舎かなんで莫迦々々しい話題です。

 いろは歌留多に「京に田舎あり」とあるように、どんな所にも華やかな場所と田舎くさい場所があるじゃないですかとしか、言いようがござんせん。

 家族旅行で東京に行った時、多摩動物公園や高尾山を観光して、「(ざい)だ」としみじみ感じ入りました。在郷でもきちんと線路が敷設されているあたりが都である証左であるのだなあと、また感心。

 東京二十三区内で、江戸時代ここら辺は江戸ではなく近郊農作地帯だった、江戸っ子と言ったら神田の辺りとか、井上章一の『京都ぎらい』(朝日新書)のような洛中洛外の違いとか、もうこの目くそは目尻からでたもので、目頭ではないってレベルのようにしか見えないんですよねえ。

『金田一耕助』シリーズに、作者の横溝正史を思わせる「成城の先生」と呼ばれる推理小説家が作中に出てきます。「成城の先生」のお住いの描写が東京郊外の閑静な場所の印象で、そこがどこかわたしは十代の頃知りませんでした。後々成城とは世田谷区で高級住宅地と教えられて驚きました。そういや長谷川町子の『サザエさん』のお宅だって世田谷区の平屋一戸建てで、漫画本を読むと庭で鶏を飼っていたような記憶があります。

 NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』でも調布に嫁いだら、牛がいて、畑があって、「花の東京」じゃない場所だったとショック受けてましたしねえ。

 アスファルトやコンクリートで固められていれば移動に便利で、雑草に悩まされなくて済みます。でも人は自然を求めて遠出するのですから、田舎は必要なんでしょう? 酸素の供給に緑は欠かせないはずですし。だから他県で二十四時間営業のファミリーレストランチェーン店が、宮城県の某所で深夜営業していないからって別に気になりません。ええ、気にしていませんってば!

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