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『フランケンシュタイン』が誕生した陰で その二

 ディオダディ館で、シェリー、メアリ、クレアは客人として迎えられます。バイロン卿は詩人、思い付いた詩句を書きつけてはあちこち壁に貼り付けています。

 フュースリの『夢魔』を観て、メアリとバイロン卿の会話が出てきます。バイロン卿はメアリに何らかの才能を感じているようです。それはポリドリ医師も同様で、科学に興味があると知って、電気実験の記事や医学について教えます。気の毒なのはクレアで、日々のピクニックや遊戯でお道化役されたり、無視されたり。

 スイスの湖畔の素敵な別荘で過していたら、土砂降りが続きました。

「退屈だ。みんなで怪奇小説を書いて出来を比べてみようじゃないか。競争だ」

 とバイロン卿が言い出しました。なんだ怪奇小説を朗読してみて、詰まんなかったからってバッサリ切っちゃったんですか。

 そんな中でクレアが言います。

「恋人に詩の清書ばかりさせて!」

「おバカさんだね。君は恋人じゃなくて遊びだよ」

 さいてー。

 ひっでえ言葉にクレアは雨の夜、飛び出していきます。メアリは追い掛けていきます。シェリーも追おうとしますが、シェリー宛てに電報がと手渡されます。メアリは暗い森の中でさまよい、なんとかクレアを見付けます。クレアはバイロン卿の子を身籠っていました。

 なんとかかんとかクレアをなだめてメアリは館に帰ってきます。今度はシェリーがいません。クレアはバイロン卿に事情を話しに行き、メアリはポリドリ医師と書こうとしている怪奇小説について語り合います。

 翌朝、ヨレヨレの恰好でシェリーが館に戻ってきます。

「君はポリドリと仲良くしているのだろう」

 自由恋愛のなんのと言いながら、実際自分の女が、自分の認めない男と親しくしていれば嫉妬するのか、身勝手な奴だと、笑いたくなります。しかし、シェリーは続けました。

「妻のハリエットが死んだ。汚いテムズ川に身を投げた」

 幾らか情は残っていたのでしょうし、当てつけの自殺と感じての苦痛があるのでしょう。

 クレアはメアリに言いました。

「子どもに養育費は払ってくれるけど、結婚は無し。失敗しちゃったわ」

「そろそろここをお(いとま)すべきね」

 三人はロンドンに戻ることにします。バイロン卿はメアリに、あなたの作品を楽しみにしていると言いました。

『ゴシック』のバイロン卿は異母姉のオーガスタへの禁断の恋を断ち切れずにメソメソしていたかと思えば、交霊会をしているうちに変な状況になり、メアリから「異母姉と寝るのはどんな気持ち?」と詰られて、「ほかの女と同じだよ」となんでもないように答えるのでした。おまけに交霊会に使っていた骸骨をメアリが叩き壊すついでにバイロン卿にも鈍器をぶつけようとするのをシェリーが身を挺して庇ったので、バイロン卿とシェリーははっと見詰め合い、濃厚なキスシーンで絡みはじめていました。あああああ。

 元のおんぼろ貸間に帰り、クレアは実家に戻りました。メアリは小説を一心に書き綴ります。そして、『フランケンシュタイン 或いは現代のプロメテウス』を完成させます。原稿を読んで、シェリーは傑作だと褒めます。

 メアリはシェリーの手を借りずに出版しようと、出版社巡りを始めます。しかし、何所もいい返事をしてくれません。怪奇趣味が過ぎる、シェリーの手が加わっているのでは? とあしらわれるのです。やっとOKを出してくれた出版社は、シェリーの序文を付けるのと作者名を匿名にするのを条件としてきました。

 何故女、それも十八歳の若さだからとこんな扱いなのかと憤りを露わにするメアリに、シェリーと言い合いになり、シェリーは家を出ていってしまいます。

 そこへポリドリ医師が訪問してきます。自分も作品を書き上げて、出版になったと本を差し出します。ところが、バイロン作となっています。

「自分が書いたのに、出版社が勝手にバイロン卿の名前にしてしまったんだ。バイロン卿も自分が書いたんじゃないと言ったのに、この通り。バイロン卿が女性をもてあそぶ姿をモデルにして『吸血鬼』を書いたのに、バイロン卿の作品にされてしまった」

 ポリドリ医師の顔にあざができています。

「あなたも出版が決まったそうでおめでとう。僕の本を受け取ってください」

 ポリドリ医師は去っていきます。本の間から紙切れが出てきます。その紙片を読むと、ゴドウィン書店で『フランケンシュタイン』出版記念の集いとあります。

 メアリがこっそりとゴドウィン書店に行くと、父とその知り合い、シェリーが集まっています。シェリーが作者のように言われているこの作品、どうするだろうと見守っていると、シェリーや父からの温かい眼差しが向けられます。

「この作品を書いたのはメアリです」

『メアリーの総て』は終わります。その後、第二版ではメアリ・シェリーの名が出された、シェリーが海難事故で亡くなったと英語字幕で説明が流れていきます。クレアの産んだ娘が十歳で亡くなったのも英字幕で流れましたが、話の筋と関係ないと思われたのか、日本語字幕では省略されました。監督、脚本、プロデューサーの一人が女性と、制作に関わった人たちも女性でした。

『ディオダディ館の幽霊会議』とその後が描かれたのは『幻の城』。史実とは違って、メアリの第二子出産後すぐにディオダディ館には行っていません。話をややこしくしない為に、赤ちゃんを連れていかなかったことにしたのでしょう。ここは三つの映画共通です。シェリーの最初の妻ハリエット、『ゴシック』と『メアリーの総て』では存在が省略されたメアリの異父姉ファニーの死が語られています。メアリの二番目の子は男の子ウィリアム、クレアの娘アレグラと仲良しのいとこ同士です。

『幻の城』でヴェネツィアのバイロン卿の屋敷に訪問した際、屋敷の池で溺れて亡くなります。クレアは娘をバイロン卿に取り上げられ、娘はヴェネツィアで寄宿舎付きの学校に入れられます。

 メアリの想像の中にしかいなかった怪物が現実化し、そこここに現れ、人々に運命を示していきます。ポリドリ医師が自殺しようとしたところに初めて姿を現し、ウィリアムは怪物の姿を見て池で玩具のヨットで遊ぼうとしました。シェリーも怪物の声を聞きます。

 メアリはアレグラの死を幻影を見ることで知り、やがて夫シェリーのヨットの海難事故で死に、バイロン卿のギリシアでの死をも予見します。

 バイロン卿はメアリに全てを受け入れろといってギリシアに去っていきます。メアリは物語の主人公のように北極海への旅をし、やっと怪物と訣別します。

『幻の城』もまたロマンチックではありますが、怪奇色のある作品に仕上がっていました。

 三作とも、それぞれの味わいに仕上がっています。

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