『COVERS』というCD
先日、わたしの活動報告で「クイーン」の『Death on two legs』の話をちょいとしました。この作品、わたしは詳しく知らないのですが、マネジメント側との金銭トラブル、「クイーン」が受け取るべき印税やら配当を会社やマネージャーがネコババしていたと、フレディ・マーキュリーが怒った結果生まれた曲なんだそうで。ピアノの綺麗な旋律、ペダルを使って響き方も華麗と聞いていたら、ぎゅおおん、ぐおおおんとギターの音が絡み始め、唸るような感じ、ピアノの音も不穏な曲調になり、ハードロックに切り替わって、歌詞は英語による罵詈雑言。よくぞここまでの内容を発表したものだ、と驚くばかりです。しかも『Death on two legs』は「クイーン」の四枚目のアルバム『オペラ座の夜』に収録されています。『ボヘミアン・ラプソディ』と一緒です。『Death on two legs』、今はyoutubeでも視聴できますが、以前は『オペラ座の夜』を購入、或いはレンタルしたら、アルバムの一曲目がこれ。『ボヘミアン・ラプソディ』目当てで、予備知識の無い人は、わたし同様驚いたと思います。
わたしの家に「RCサクセション」の『COVERS』のCDがあります。良人が中古のCD店で購入してきました。発売当時が昭和の終わる頃。『COVERS』は様々な紆余曲折があったそうで、しかし、わたしはその頃、歌謡曲、ポップスやロックに興味を持っていなかったので、事情を全く知りませんでした。まあ、良人も詳しいことは知らなかったようで、それはどっこいどっこい。
『COVERS』のお陰でわたしはボブ・ディランの『Blowni’in the wind』を知り、ローリング・ストーンズの『Paint it,Black』を知りました。有難いCDでもあります。
で、ここからは伝え聞いたお話です。
『COVERS』は戦争反対の歌ばかりではありません。カバー曲の歌詞をそのまま訳さず、政治や原子力発電所に対する風刺をあえて歌詞にしていました。当然、このままの歌詞ではCDを発売しないと、レコード会社と揉めたそうです。元々の契約していた会社で発売ができなくなって、ほかのレコード会社でCDを発売しました。歌詞の内容から『COVERS』の曲を放送しないと決めたラジオ局も出てきました。
これらの話題があり、CDは売れたそうです。
「RCサクセション」、ではなく、別のバンド名で、覆面はしていたけれど、ヴォーカルはどこからどう見ても忌野清志郎、が生放送の歌番組に出演しました。
そのバンドが演奏を始めると、『COVERS』の曲を放送しないと決めたラジオ局を名指しして、「腐ったラジオ、汚ねぇラジオ」とすっかり替え歌にして流したそうです。
もう昭和の終わり頃にビデオデッキは普及していましたから、録画テープを保存していた方々がいらっしゃったのでしょう。検索するとyoutubeで視聴できます。観ました。途中でCMに無理矢理変えちゃうとかしなかったのかと、逆に放送したテレビ局に感心します。「腐った」などの言葉のほかに、別の罵倒語、放送禁止用語まで飛び出していました。司会の古舘伊知郎が演奏後、「不適切な発言がありましたことをお詫びします」と定型の発言をした後、忌野清志郎(にしか見えないヴォーカル)に「リハーサルと違う」と言っていました。演奏中の古舘伊知郎をはじめとした出演者の面々の表情も色々でした。ほとんどは困った事態と感じつつ、面白いことになっていると見守っていました。
流石はロックの忌野清志郎と評価するか、やり過ぎじゃないかと思うかは、人それぞれです。表現する手段を持つ人間が反骨精神を持ち合わせていると、こんなこともあるよ、との教訓、そして、自制。
芸術などの表現が、後援者を称える為だけではない、プロテストの為に使う、それは諸刃の剣であると、肝に銘じておかなければなりません。




