国境って
連載物で1867年のメキシコ皇帝銃殺のニュースを出しました。この頃は中米からアメリカ合衆国を目指している難民が大集団になっている、アメリカ合衆国側では警戒していると、ニュースになっています。
小学生の頃に読んだ学研漫画で、アメリカ合衆国の国旗は、独立した時は十三州しかなかったので、星は円を描くように丸く十三個左上に配置され、赤と白の横じまが十三本。横じまは増えなかったけれど、開拓やら何やらで、州が増える度に左上の星が増え、現在の五十州に合わせて、星は五十個と説明されていました。
中学の社会の先生も、現在アメリカ合衆国の領土になっている土地に入植したのはイギリスだけじゃないと授業で教えてくれました。ルイジアナ州はフランス入植地、その為にフランスの王様に因んだ「『ルイ』ジアナ」と名付けられました。
ロサンゼルスはスペイン語で「天使」で、スペインは南米や中米だけに入植したのではないし、アラスカ州はロシア帝国から購入したのだし、中米の国境辺りではテキサスの帰属を巡ってメキシコと色々とあったりと、ざっと歴史を眺めて合衆国の成り立ちは様々。現在最後に合衆国に加わったハワイ州、あれもハワイの王室が断絶だか、統治が上手くいかなくなったかの事情があったと、以前歴史番組で観たような記憶があります。ハワイの王様がアメリカ合衆国からの干渉を躱す手段として、明治天皇に婚姻政策を持ち掛けたけれど、日本から断られてしまいました。
ヨーロッパ史のゲルマン民族の大移動に始まる、食べる困った人たちが大挙して押しかけてくる、これは元から住んでいる人たちから見れば怖い。それは理解できます。日本みたいに地平線がないくらい平野が少ない、周りが海っていうのと、ある日大平原の向こうから見知らぬ大集団がこちらに進んでくるのが見えてくるかも知れない不安は、かなり感覚が違うのでしょう。ジョン・レノンの『イマジン』みたいに国境はないんだと歌う余裕のない人たちがいます。
突然見知らぬ人たちがやって来て、お腹が空いた、病人がいる、なんでもするから仕事とお金と要求し、公園や空き地に寝泊まりを始める、観光地でバッタモンを売りさばき始める、そういった心配は、少しの想像で思い付きますよね。
でもそうやって国を捨ててきた人たちだって生きたい、良い暮らしをしたいと必死です。
優秀な人材が海外から来てもらうのは歓迎でも、生産性の低い人たちは嫌だと言って拒んでいいのか、基本的人権の尊重を確立する為に戦ってきた歴史をもつ国、また、敗戦の苦渋から立ち直る為にそれを学び血肉にしてきた歴史をもつ国が、懸命に働き、税金を納めて国の発展に貢献してきたと胸張って言える人たちが、自国での暮らしが成り立たなくなったと逃れてきた人たちに、我々と同じ苦労をして、我々と同じように振る舞えるのなら我が国の福祉を受けていいと認めるよと言っていいのか、という問題だって存在します。AIに仕事を奪われるとマスコミで煽り立てていたのに、今度は人材不足で、海外からの労働者を受け入れる条件はとか、国会で論争しているのを見聞していると、人間都合の良いものしか見えないようにできているのだと、しみじみ思います。
今もいるのかしら? 日本はアメリカ合衆国の属州みたいだ、五十一番目の州になったらいいじゃないか? の自虐ギャグがありましたが、現状考えれば、中国やロシアに対しての防衛ラインとして、更に米軍基地化されるでしょう。
でも、アメリカ合衆国だって面倒くさいはず。あちらの人口は三億を超えたくらい、日本の人口は一億二千万人くらい。人口の四分の一が急に日系になったら、大勢力になっちゃいます。おまけに、英語が通じない可能性大。敗戦後の牙抜きに成功したので、銃を持つのに忌避感がある、自然環境や宗教、浄・不浄の感覚が全く違う。国籍の考え方が血統主義。社会保険制度が違い過ぎる。無茶です。
アメリカ合衆国は世界の警察ではないと明言していることですし、アメリカンドリームはもう死語になってしまったのかな?
都に行って一旗揚げる、自分の国でも難しい。




