名も無きナントカ
先日、良人に誘われて、宮城県北の方に出掛けました。栗原市の一迫にある百合園です。
百合の種類によって開花時期が違っているので、七月上旬、既に終わっている花もあれば満開、美しい彩りと香りを楽しませてくれる百合で溢れておりました。
「品種名が付いていても区別が難しい」
「薔薇もそれぞれ名前があるけど、区別が難しいのと同じじゃないの」
とか言いながら百合の花を見て、品種名の札を読んでおりました。『エクスカリバー』と札が立てられている百合がありましたが、もう見頃が終わっており、残った一つ二つの花も花弁がだらんとしていて、聖剣のような花形だったのか解りませんでした。
白い百合にも色々と品種があるんだ、『カサブランカ』は全部まだ蕾で残念だったけど、ほかにも色々見られて、面白かったです。『ビラブランカ』という名の白いユリが咲いておりました。「カーサ」と「ヴィラ」とどっちが豪華なお家なんだろうと眺めておりました。『ビラブランカ』の隣の花壇に、『無名』と札の立てられた百合の一群がありました。良人はそれに気付かなかったようです。わたしが後から、あれ何だったんだろうと話し掛けて、そんな花があったのかと言っていました。
「園芸家がわざとそんな名前にしたのかしら?」
「新発見の花じゃないのか?」
「新発見なら、学会に鑑定をしてもらって、未発見の物でしたと判明したら、命名権は発見者じゃないの? 品種改良でできた花なら育苗した人が名付けるし。
だいたい名も無き花ってのは文学的な表現の中だけで、世の中ないことになってるんだから。植物にしろ、星にしろ、動物にしろ、見掛けない物を見付けたら、専門の学会に鑑定してもらって、新発見だったら、さっさと名付け親になっちゃう」
「鑑定中とか?」
「う~ん」
鑑定中なら花壇に沢山植えていないような気もしますが、どっちか解からないままにした方が良さそうです。
百合園の中には柵があり、その柵には感電注意の札がありました。熊が出るのかと思いましたが、熊よけにしては、柵の背が低い。猪かな? とふと思いました。
農家の方から休耕地を借りて、畑ではなく、花を作っている人が、百合根を猪に食べられたと嘆いていた話を聞いていたので、猪の方に発想が行きました。
自宅の庭に姑が百合を植えていて、たまに百合が増えたからと球根を掘って、茹でたのを食卓に出してくれます。新鮮な百合根だと苦みがなくて、甘味ばっかりです。
きっと猪も美味しいと感じて食べに来るんだと、漠然と想像しています。
勿論、百合の盗難だってあり得るので、防犯上の問題もあるでしょう。美しい花をどのように眺めるか、手折ってみなくても充分です。花盗人は犯罪です。




