当時は怖かったけど、今思い出すと腹が立つ出来事
当時体験して不愉快でしたが、それ以上に怖いと感じた体験があります。全て十代二十代の時の体験です。若くて、それなりに男性から見ての価値があったとされる年代です。今の年齢となれば、そんな目に遭わないだろうし、思い出すと腹立たしいというか、失礼だろうこの野郎という気持ちです。
中学・高校は自宅から近くて、徒歩で通っていました。そんでも同じ学校の生徒が通学路で変質者に遭遇して交番のお巡りさんを引っ張っていった話がありましたし、わたし自身が本屋で立ち読みをしていて、同じく立ち読みを装う男性がわたしの真後ろに立ってわたしに手を伸ばしてきた、痴漢との遭遇がありました。本を読みたいと夢中になっていて、そのうち、あれ? となったのですが、立ち読みしていた後ろめたさと場所を移しても付いてくる怖さがあって、その男性やお店の人に訴えず、一目散に逃げだしました。
その後は社会人一年生の時に仕事の後、散歩していて、結構いい年した男性から「君女子大生? いいアルバイトがあるんだけど」と声を掛けられました。「わたしは働いていますので、失礼」とすぐ断って去りました。これはちょっと謎。翌日、「女子大生に間違われちゃった」と職場でお喋りしていたら、「女子大生と変わらない年齢じゃないか。どんなアルバイトか訊けば良かったのに」と、冷静な男性先輩から言われました。
後は当時住んでいたアパートは二階だったのですが、一階に住んでいる若い男性が、女性が通る度に窓に寄ってガン見していました。もう無視を決め込んでいました。しかし、アパートに遊びに来た友人から、「通りがかったら、バッと窓際に寄ってくる男の人がいて怖い」と言われました。
窓に寄ってガン見するだけで、引っ張りこもうとしないからと無視していましたが、知らなければ幽霊屋敷の急に出てきて脅かす系の化け物と同じです。友人には報せておらず、悪いことをしました。
ある時交際していた男性とお出掛けして、階段を二人並んで上っていました。後ろ、下から急いで登ってくる気配があり、追い抜きざま、わたしお尻を触って、駆け上っていく男性がいました。わたしは驚いて声もなく立ち止まりました。一緒にいた男性が不審がり、わたしは理由を言いましたが、触った男性はもう先に行ってしまっているし、どうにもできなかった出来事です。
いや、別に追い掛けてとっ捕まえて『鋼の錬金術師』のイズミ師匠の旦那さんのように、「おれの女に色目使いやがって」とタコ殴りしてもらいたかったんじゃないんですが、こういう時に、被害に遭った女性に男性がどう対処したらいいかも大変困るのでしょう。おまけに隣に同伴の男性がいても、そんな真似ができる野郎がいる事実にまずうんざりしました。
確かインドでバスに乗っていて集団暴行の末に殺害された女性だって、恋人だか婚約者と一緒に出掛けていて事件に遭っていました。
最近体当たり、ぶつかってくる男性が話題になっていますが、わたしも二十代の頃に体験しました。車道脇の狭い歩道を歩いていて、向こう側から男性が歩いてきます。わたしは脇に除けました。それなのにその男性も同じ側に除け、その上わたしとぶつかりました。胸辺りに衝撃を感じ、インネン付けのおっさんかと思わず「済みません」。しかし、相手は無言で過ぎていきました。インネン付けるんじゃなきゃ掏りかとバッグの中身やら持ち物を点検しました。驚きが冷めてきて、まず頭に浮かんだのは、これは一種の痴漢か嫌がらせじゃないか!
わたしが除けたのにわざわざぶつかってきて! 「済みません」なんていうんじゃなかった!
結婚して、子どもができて、その子を保育園に預けながらお勤めしていた頃のこと、まだわたしは二十代。まだ日の長い季節の黄昏、地下鉄から降りて、保育園まで我が子を迎えに行く途中、向こう側からスーツ姿の男性が二人歩いてきます。人通りの多い場所ですから気にしませんし、道幅は広かったです。しかし、その男性の内の一人がすれ違いざま、わたしの顔を覗き込むようにして、「好み!」と言いました。そしてそのまま、二人、去っていきました。
なんだこれは!
当時としては変な奴らだ、また会ったらどうしよう、お迎えに行く道やら時間帯を変更しなければならないのかと、焦りました。二度とこの野郎たちと遭遇しませんでしたが、結構ぎょっとされられた体験です。
何事もなかったように歩き去っていったからには、わたしをナンパしようとしていたのではないのでしょう。二人連れだったので、何かの罰ゲームか度胸試しだったのか。思い出すにつけても、失礼な人たちです。
女性が外出するのに家族の男性からの許可が必要、或いは必ず男性が同伴する文化圏が現在でもあるので解ってきちゃうんですよねえ。宗教上とか、女性の地位が低いからとかありますけれど、つまりは保護すべき男性が近くにいない、或いはいても多勢を恃めるとなれば、性的対象と見られる女性に自分の抱いた印象や欲望を正直に出してもいいと思う男性が、それこそ思想宗教関わりなく、世界中に存在しているだろうという事実です。
この年齢になると、もう男性からそんな目で見られないと妙に安心しています。でも、世の中、不安を抱く方々は大勢います。解決するにはどうしたらいいのでしょう。




