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「一寸の虫にも五分の魂」は本当だと後悔しました

虫の話です。虫のお嫌いな方は読まないでください。

 お釈迦様、わたしは不殺生の戒を破りました。酷く後悔しております。なんと身勝手なと仰言られても詮無きこと。迷える衆生をお導きください。

 先月垣根の枝払いをしました。枝を払ったら、陰のクチナシが生き生きと若葉を伸ばしています。昨日、姑が外にいまして、わたしも外に出て、垣根のクチナシが葉っぱを伸ばしていると話し掛けますと、「虫がたかって困る」と毎日枝を箒で払って虫を取っているのだと返してきました。姑がクチナシの花を好んでいるのは知っています。そしてクチナシを好むオオスカシバの存在も知っています。

「はあ」と生返事をするわたしをよそに姑はクチナシの葉の茂る枝を箒で払っておりました。

 青虫が一匹コロン。

「惠美子さん、踏み潰しちゃって」

「えっ!」

 凍り付くわたし。何もそこまでしなくったって。確かに放っておくとオオスカシバにクチナシが丸坊主にされると言われていますが、わたしにやらせるんですか?

「直接が嫌なら、そこの石を使って」

「えっ!」

 姑が別の所に目を向けているうちに他所に移してやればよかったし、そのままにしていたってよかったのです。しかし、わたしは大きめの石を拾って、青虫を潰してしまいました。

 ジャイナ教でも小乗仏教でもないですから、必要悪の一つではございます。

 キャベツやトマトに付いた虫なら食い扶持ですから、躊躇しませんでした。

 屋内なら自分のテリトリーだからと、入りこんできた虫を追い出したり、潰したりするのにも罪悪感がありません。

 しかし、蛾の仲間の中でも小ぎれいな外見を持つオオスカシバ、垣根とはいえ、虫たちが勝手に飛び回る屋外、易々と潰してよかったのかと激しく後悔いたしました。

 ええ、身勝手です。屋内ならよくて、外は駄目なんて理屈は通りません。外でも蚊が寄ってきたら払いますし、肌に止まれば叩き潰そうとします。蠅や蚊が駄目で、蝶や蛾が可哀想なんて言うのは愚かです。虫は虫、食用であろうと鑑賞用であろうと、人に有用と思われる植物を痛める虫を、人間は害虫と呼び、駆除の対象とします。実害が少なくても見た目が悪い、清潔感を損なう虫を不快害虫と呼びます。

 害虫を食べてくれたり、植物が実を結ぶのに役立つ虫を益虫と呼びますが、殺虫剤は区別する能力がありません。

 殺虫剤のお陰でどれだけ農作物が荒らされずに済み、寄生虫の心配なく生野菜が食べられるか、有難味は知っています。

 それだけに、余計な殺生をしていいのかとためらう戒めを守ろうとする気持ちを、偽善と言われようとも、忘れないでいたいのです。

 一匹の青虫で、これほど考え込むとは、我ながらおかしなことと自覚しております。

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