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Chaos Odyssey Online 〜VRMMOで魔王と呼ばれています〜  作者: 暁月ライト


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チープな喫茶店

 平原で暴れてから数日が経ち、闘技大会までの時間はあと三日まで迫っていた。


「それで、チープも出るんだったよね?」


 そして今、僕はサーディアの隅っこにある喫茶店でチープと話していた。ここはあんまり人も居ないが、店の雰囲気は良いし、料理や飲み物の味も悪くない。取り敢えず、久々に会おうと声をかけたが、要件は別にある。


「ん、何がだ?」


 チープはコーヒーを飲み、首を傾げた。


「闘技大会だよ。あと三日で始まるでしょ?」


「あぁ、そうだったな。すっかり忘れてたわ」


 チープは笑いながらフォークをチョコケーキに突き刺した。


「まぁ、僕もその闘技大会に出るんだよね」


 僕がそう言うと、チープは意外そうにすることなくチョコケーキを食らった。


「へぇ、そうなのか……これ美味いな」


「それでさ、僕はいっつもネルクスとかエトナとか……あ、ネルクスはこの子ね」


 僕が影を指差すと、ひょっこりと執事服の悪魔が顔を出した。


「えぇ、私で御座います」


 それを見たチープは表情を気持ち悪そうに歪めながら目を逸らした。


「……あぁ、そう。それで?」


 ネルクスがズブズブと影に沈んでいくのを見届けた僕は、砂糖がたっぷり入ったミルクティーをゴクリと飲み、お手拭きで口を拭った。


「うん。それでね、いっつもはネルクスに影から守ってて貰ってたんだけど……闘技大会ではそうもいかないよね?」


「まぁ、そうかもな……で、それがどうしたんだ?」


 疑問符を浮かべるチープに僕はうんうんと頷き、そしてチープを指差した。


「ちょっと、君に僕を鍛えて欲しいんだ」


 僕の言葉に、チープはケーキを刺したフォークを口の前で止めた。


「……は?」


 口をあんぐりと開けたままのチープを無視して僕は話し続ける。


「つまり、いつも守ってもらってばっかりの僕はPvPというか戦闘というか……まぁ、僕を直接狙われた時の対処が出来ないってことだね。だから、そうなった時に多少は対処できるようにしときたいんだよね」


「……分からなくはないけど」


 チープはコーヒーを飲み、深いため息を吐いた。


「はぁ……しゃあねぇな。近接戦の心得をちょっと教えりゃ良いってことだな? ただ、必須スキル的なのは取ってもらいたいんだが……SPに余裕はあるか?」


「うん、ありまくりだね。500以上余ってるよ」


 と言っても、200〜300SPくらいは使う予定があるんだけどね……いや、さっさと使っとこうかな?


「あ、ごめん。今、200SPくらい使っちゃった」


 正確には190SPだ。闇魔術をSLv.10にしておいた。と同時に、スキルショップに【暗黒魔術】が解放されたので80SPを消費して取得しておく。


「ごめん、更に80SP使っちゃった」


「は? え? 何やってんのお前? い、いや、別にいいんだが……100SPくらいは残しておけよ? 一応」


 僕は頷き、苺のムースをフォークで一口分に切った。


「うん、ありがとね。助かるよ。一応、報酬は渡すから安心してね」


「報酬? 別に無くてもいいが、何をくれるんだ?」


 僕は微笑み、ムースを口に運んだ。


「……ん、それは秘密だけど」


 ムースを飲み込み、次の一口分を更に切り分ける。


「まぁ、お金じゃなくてアイテムだね。装備とか、武器とかの」


「へぇ、アイテムか……まぁ、期待しとくわ」


 チープはニヤリと口角を上げて言った。


「あ、そうだ。アイテムといえば……お前、大分前に渡した卵からは何が生まれたんだ?」


 卵? 一体何のことを言ってるんだろう。


「えっと、卵って何の話?」


「は? 忘れたのかよ。お前と戦った後に渡しただろうが。お前が、もし僕が勝ったらなんか頂戴みたいなこと言ってたの、忘れたのか?」


 ……あ、思い出した。


「あー、アボン荒野で貰ったね。そういえば」


「お、お前……まさか、孵化させてないのか?」


 チープが恐る恐る問いかけてきたその言葉に、僕は微笑んでから頷いた。


「……嘘だろ。折角渡したのに放置されてたのかよ」


 チープは机に突っ伏して、やるせなさそうに拳を机に叩きつけた。


「あはは、ごめんね。いやぁ、インベントリの中じゃ孵化しないんだね……なんて」


「するわけねえだろ……そもそも、何で卵ってインベントリに入れられるんだ。生き物は無理なのに卵はいけるって、ちょっと納得いかないが」


 良い感じに思考がズレてくれたので、僕は甘々のミルクティーを飲み、ホッと息を吐いた。


「まぁ、それよりもだ。その、近接戦闘の稽古とやらはいつつけてやればいいんだ?」


 チープの問いに、僕は最後の一口になったムースを飲み込んでから口を開いた。


「それは勿論、今日だけど?」


 僕の言葉に、チープは呆れたような笑いを浮かべた。


「……正直、お前ならそう言うだろうと思ってたけどな」


 お互いの皿の上に何も乗っていないことを確認した僕たちは、残った飲み物を一息に飲み込んでから会計を済ませ、店を出た。

戦闘パートよりこういうゆっくり話してるパートの方が簡単に書ける気がします。

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