表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
98/479

屍の夜降ろし

――ギィンッ……ギィンッ……――


剣と剣が叫び合う、場所は街道、其処には雄々しく駆けて斬り掛かる白い男と、それを捌く黒い男が居た。


「ウォォッ!」

「……」


――ギィンッ……ギィンッ……――


また打ち鳴らされる剣の音色……〝聞き飽きた〟。


――ザシュッ――


「ッ良し――」


――ガシッ――


「良し、じゃねぇよ」

「――ッな!?」


白い剣が男の胸を裂いた、それに勝機を見出した白い男の剣を、黒い男の腕が掴む。


「〝自らを贄に魔の頂きへ至った探求者〟」

「グァッ……ガフッ」

「〝己の業で竜の王を討滅した鬼〟」

「ガッ、ウグッ――」

「〝勇猛に王を殺さんと迫った赤獅子〟」

「〝影を纏い、悪意を喰らう少女〟」

「〝直向きに強さを渇望する剣の乙女〟」

「皆が皆、己の持ち得る力でこの祭りに総てを賭した、総てをだ……心行くもので有った、満たし得る余興だった……だと言うのに」


――ブンッ――


〝アーサー〟を投げ捨てる……下らない塵め。


「だと言うのに何だお前の体たらくは?……己で策を練らず、挙げ句神の人形に成り下がった……愚かな無能者め」


――ドカッ――


項垂れるアーサーの顔を蹴り抜く……そのまま家々を砕き進む。


「貴様は初めから己の力を振るい魔物を討滅するべきだった、神になど乞わず、己の力で俺へ挑むべきだった……お前が如何な手段で俺の首を狙うか、期待していたと言うのに……こんな様か!?」


巫山戯るなよ守護者、巫山戯るなよアーサー……巫山戯るな――。


「善神……己の責務を放棄し、神の力に溺れた愚者が、神気取りのクソピエロが」


こんなゴミに俺の玩具箱を壊させてたまるか。


「〝我は悪の魔、有らん限りの呪詛を込めて、我は神を否定する〟」


今の今まで……何故俺が、この力を使わなかったか分かるか?……良いや、分かるまい……お前如きでは理解すらままならんだろう。


「〝白き光は黒き闇へ、蒼き空は赤き夕暮れへ、陽は転じ月へ、生は沈み死の刻は来たれり〟」


人も、獣も……その骸は、その尽くは例外なく俺の支配下……いや、俺の力だ。


「〝我は夜の主、神すら手を退く夜月の屍王〟」


そして、俺の用意した手駒、その残りはこのゴミに駆除された……ならば仕方ない。


「〝屍の夜は、心臓と共に……永久の鼓動を紡ぐ〟……さぁ、目を開けろ夜の〝厄災〟……有象無象区別なく、この地この街、この城に居る尽くの生者を蹂躙せよ……踊れ、音楽は私が奏でてやる」


生命溢れる光の世界を、屍の月が覆う、光は闇に飲まれ、空は紅く染まり、そして屍が、万を超える屍が寄り集まり、瘴気の台風が街の外に現れる。


「〝万屍:奈落より神を討つ者(アディス・タイタン)〟……〝アナテマ〟、お前に下す命は三つ」


瘴気渦巻く外のソレに、俺は三つの命を与える……それは、ソレにとっての存在意義、〝滅ぼす者(アナテマ)〟を冠する者に唯一与えられる、破壊の言葉。


「〝壊せ〟」


人を。


「〝崩せ〟」


街を。


「〝潰せ〟」


神の面目を、神の楽園をこの世界から壊し尽くせ。


『―――ッ!』


命令は成され、名は与えられた……そして、それは産み落とされた。



巨人、いや或いは巨神とすら言える……しかし、その姿は神と呼ぶには余りに禍々しい姿をしていた。


その身体は赤い肉で覆われ、白い骨が身体を覆い、胸元には幾千幾万の人間の上半身が、その頭蓋は幾つもの骨が混ざり合い、巨大な人の頭蓋を作り、その目には赤い血の如き炎が揺らめいていた。


「さ、此処でお前とともに蹂躙の果てを見るのも一興だが――生憎とお前如きにそんな贅沢をしてやるつもりはない」


――ガシッ――


「ウッ……グァッ!?」

「俺のストレス解消に付き合ってもらうぞ?」


なぁに、心配するな……ちょっとした組手だとも。


「死なんでくれよ〝ヒーロー〟……その勇姿を皆に見せろよ〝人の希望〟」




○●○●○●


「うわぁお……相変らずボスもやる事が派手だね〜」

「此処の死体の殆どを使ってるからなぁ……しかも強化済みの……コリャ俺達でも殺せるか怪しいぞ?」

「う〜ん、何か主様怒ってる?」

「ふむ……どうやらその様で」


廃墟の屋根に座りながら、残る三人の騎士と一人の執事、二人の小狼は菓子を片手に壁外の巨人を見る。


――ドッガァァンッ――


「「ッ!?」」

「ん?」「「へ?」」「おや?」


それとは別の方向、大教会の街道が突如崩壊する、その土煙に混ざり、1つの人影が空に突き抜ける。


「アレは……主――ッ!?」


「「ヒッ!?」」

「おや……コレは」


騎士の目に映る……主の姿、それは普段見る彼等の主と同じ、とても愉しげな顔……だった、だが。


――ゾォッ――


途轍もない怒気と殺意……其れ等を突き抜け、主の本質が彼等の脳に、魂に触れる。



それは虚空……渦巻く色の中でその中心に燻る色の無い空の〝形〟。


それが、狂気を纏い、悪意を纏い、空を覆い隠していた。


醜く美しい化物の姿だった。



「相当…お怒りな様で」


唯一平静を保っているベクターは、眼下で固まり、呆然としている三人と、怯えている二人の幼月を見て、そう溜息を吐く。




●○●○●○



――ドシャァッ――


「クハハ♪」

「グゥッ、舐めるなッ!」


地面に転がり、そして俺へ刃を振るうアーサーを殴り飛ばす。


「グッ」

「何を怯んでるんだッ!?」


――ブンッ――


そのまま地面を跳ねるアーサーの腹にそのまま蹴りを突き込む。


――ドゴォンッ!――


民家の壁が壊れ、アーサーの姿が消える……。


「「「ヒィィッ……」」」

「グ……ァァッ」

「どうしたどうしたアーサー、円卓の長?……何を其処で悶えてる……クフッフフフッ♪」


――ヒュンッ――


「……あ……」

「――ッリリー!?」


風切り音と共に、童の首が崩れ落ちる、父親は目を見開き童を見、母親は嘘だ嘘だと喚き立てる、アーサーは……。


「ハデスッ……貴様ァッ」

「お前が其処で悶えて居るからこうなる、クヒッヒャヒャヒャッ♪」


さぁ、早く立てよユウシャ、ほら早く立たねば――。


「また一人、死んでしまったなぁ?」


女の身体が半分に裂かれる……。


「やめろ、止めろッ!!!」

「さ〜ん♪…に〜い……い〜ち……クフフッ♪」


――ギィンッ――


「グッ」

「――ゼロ♪」


――バシュンッ――


男の頭蓋が爆散する……民家に血溜まりが出来、それがアーサーの足に伝う……そして、アーサーの目に童の首が転がり込む。


「どんな気分だ?……アーサー〝様〟?」


童の顔が愉悦に歪み、そして爆ぜる。


「ハァァァデェェェスゥゥゥゥッ!!!!」


憤怒が、勇者の憤怒が愉快だ、身体の端々に感じる……実に、あぁ実に――。


「無様な面だなぁッ……アーサーッ!」


さぁ、憎悪を奏で続けよう、この街が焦土と化し、塵に帰すその時まで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
『「〝万屍:奈落より神を討つ者アディス・タイタン〟……〝アナテマ〟、お前に下す命は三つ」 瘴気渦巻く外のソレに、俺は1つの命を与える……それは、ソレにとっての存在意義、〝滅ぼす者アナテマ〟を冠する者…
「〝万屍:奈落より神を討つ者〟……〝アナテマ〟、お前に下す命は1つ」 実際の命が3つなら3つでいいのでは
[良い点] 確かに全員が力の限りを尽くして、どうにか倒した。という話なのに1人だけ『善神から力を貰って楽勝です!』なんて舐めたこと許されるわけないか… ハデスは"楽しむ"ためにここまでのことをしてるの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ