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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
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飢え満ちる者の献身

『mimimimi……』


――ガシャンッ……ボリボリッ――


それは肉塊がうぞうぞと蠢いている様な、そんな姿……腐った血肉の香りを纏わせ、ドロドロの肉を伸ばして、周囲の死骸も、食い物も、無機物も食い荒らしていた。


『mimimimi……』

「コイツ、再生早すぎんだろ!?」


それは、飢えていた……餌を求め這い回る一匹の無形の魔物だった、ただ飢え、それを満たす為に喰い続け、迫りくる者も喰らっていた……。


『お前は食いしん坊だな』


またあの人の〝肉〟を食いたい、アレは良い……飢えなくなる。


それが出会った……あの黒く楽しげな男、飢えに苦しんでいた、そしてつい彼の腕を千切り、貪ってしまった。


――美味いッ――


驚いた、今の今まで、味等気にすらしなかった……それが、彼の腕を喰らった時、初めて美味いと感じた……何より。


『おいおい、がっつき過ぎだろ』


彼はそんな自分に、喰われていながら、気にしていないと言うように、自分の身体を撫でていた。


――奇妙だ――


何もかもが奇妙だ、喰われていながら自分へ敵意もなく、楽しげに笑っていた彼が、何故笑えるのか、どうして怒っていないのか……飢えなくなって、そして気になった。


――知りたい――


と……そして、此処へ来た、彼の望みの為に。


『お前を捨て駒にする、生きて帰れることは無いだろう』


構わない、だって彼は己に満ちる事を教えてくれたから。


『ん?……何だ、そんな事か』


彼の望みの為ならば、この身、この生命を此処で果てさせようが構うものか。


食らって、喰らって、貪って……人の死を、彼の目的を果たす……それだけで良い。


『mimimimi……?』

「フンフンフン……成る程〜、スライム系統、死霊系の進化個体……構成は他の奴と何ら変わらんのね」


――ドスドスッ――


「お〜怖ッ、デカいし腕は多いし、俺一人じゃ対処しきれねぇよ?……って事で、助けてくんねぇかな、ノーマン?」


――……――


『mimi!?』

「――〝起爆(イグニッション)〟」


一瞬感じた寒気、それに従い身体を動かした瞬間上から叩き付ける様に爆炎が迫る。


「……タフだな」

「俺の見立てじゃあコイツは耐久と再生に重点したタイプだ……おまけに触腕が無限に湧いてくる、俺じゃ逃げれても勝てねぇな」

「では俺がダメージを与えて削るしか無いか」

「んだな」


爆炎に包まれながら、会話を盗み聞く……今ッ。


「「ッ!?」」


炎を盾に触腕を突き出す……しかし、それをギリギリで回避される。


最も危険なのはこの妙な左腕の男だ、そして時点で右の男、コレは驚く程早い……周りの奴等は気にする程ではないな。


――グチュグチュッ――


殺す、ただそれだけで良い。




●○●○●○



「マジかッ!?」

「分裂!」


「「「mimimimiッ!」」」


――ヒュンッ、ドガガッ――


巨大な肉塊が四に分かたれた、1つは周囲の守護者を殲滅し、もう一つはノーマンを、もう一つは俺を、そしてそれに間髪入れず後ろの奴が攻撃を差し込む。


(思考共有と独立した個体の超高度連携、厄介な野郎だ)


ノーマンには爆炎の届かぬ位置から触手で。


俺にはそもそも近づけさせずに、広範囲で乱れ切り。


「賢いな、面倒だ」

「うざったいなぁ……ッて事で」


――タッ――


ノーマンと俺が交差する……互いに不利な相手には別のやつをぶつければ良い。


「〝開放(パージ)〟……」


ノーマンが駆ける、目標は1つ、今己へ無数の触手の鉤爪わ振るわんとする、分かたれた肉塊。


「〝起爆〟……」


――ドオォォンッ――


肉塊が爆ぜる、骨と肉が散らばり、土煙は立ち込め、岩畳は礫と化し周囲の壁面全てに傷を付ける。


「相ッ変らず惚れ惚れする火力だ事で……じゃ」


――ドドドッ――


俺は俺の仕事を終わらせようかね。


「鈍い鈍い……欠伸が出ちまうなぁッと!」


ものの数秒で、テストは分体の側に到達し、その脚で蹴り抜く。


「miッ!?」


――グシャッ――


そして、それは分体の核を踏み砕き、ドロドロの屍肉の液体と化した。


「さぁ、分体はもう居ないぜ肉塊ちゃん?」

「……」


「mimimi……」


そして、二人が足を止めた、その瞬間。


――ドパァッ――


大地から屍肉の槍が飛び出し、二人の臓腑を貫いた。



「……マジ……かよ……」

「チッ……」



二人の男が、地面に伏せる……腹から流れ出た血が地面を彩る……そして、遠くから、守護者を蹂躙し終えたで有ろう、分体が戻って来る。


「mimimimi……」


――ブンッ――


触手に刺さったまま、そのまま壁に投げ飛ばされる、霞む視界で敵を睨むテスト。


そして、分体が二人に触手を伸ばした、その瞬間。


「〝起爆〟」


触手が爆ぜた……。


「mimimimi!?」


「〝第二心臓(セカンド・ハート)〟」

「……ハッハッ、マジかよ」


胸に穴を開けたノーマンが立ち上がる……明らかに瀕死な筈のその男は、何事もないように立ち上がる。


「アカネ謹製の〝機械心臓〟だ、数分間だけ動ける様になる」

「サイボーグか……?……まぁ良いや」


――ガシッ――


「?…テスト?」

「コレももってけ……〝風纏〟」


テストの言葉と共に、ノーマンの身体から風が渦巻く……そして、テストの身体を包んでいった。


「まぁ頑張れよ?」


それだけ言うと、テストは力を無くし、骸を残して消える。


「……殺す」


そして、ノーマンが駆ける……数多の触手を風の様に躱して。


「mimimimiッ」


そして、異形のソレも負けじと応戦する……だが。


「……〝起爆〟」


触手を、炎が焼き尽くし、炎が視界を防ぐ……。


「……貰った」


化物がソレを見失った瞬間、背後から声が響く。


「miッ――!?」

「……〝風脚〟」

動こうとした一瞬、そのど真ん中をノーマンの脚が打ち抜く……そして。


――カランッ――


硬い核と、それに突き刺さった白い剣を外に弾き出した。



●○●○●○



「mimi……mi…mi」


嗚呼……負けてしまった……。


核と成ったソレは崩れる身体を見て、悔しげに口にする。


まだ……彼の役に立てていない、届いていない……このまま負けては行けない。


そんな思いを抱きつつも、ソレは死の道を進む。


嗚呼……もう一度、貴方に逢いたい……。




『何をしている、この馬鹿め』


意識を途切れさせるその一瞬、ソレの願う者の声が聞こえた気がした。






「……?……今、何か……」


ノーマンはふと足を止め、周囲を見渡す、一瞬、黒い影が居たような気がして……そして、周囲を確かめる。


「……誰も居ないのか」


そして、ノーマンは白い剣を掴むと、その場を立ち去る……消えた核を記憶から消して。



○●○●○●


「馬鹿が、大馬鹿が……何故己のままに暴れなかった?」


ハデスは、片手に大きな結晶を手にして、そう呟く。


「何の為にお前を此処に呼んだと思っている?」


いや、お前達だ……お前達には何も求めていなかったと言うのに。


「ただ暴れ、ただ己の為に食い尽くせば良いだろうに……阿呆が」


このままお前を死なせては、俺の律に外れるでは無いか。


「全く……世話の焼ける〝奴〟だ……」


――ギィンッ――


「そして……随分と余裕綽々な登場だな、〝アーサー〟」

「ハデス……ッ」


憤怒に燃える……下らん玩具が、俺を射殺さんばかりに睨み付ける。


「貴様のせいで祭りが台無しだ……と、言うわけでだ」


――ビキビキッ――


「――死ね」

「ッ――!?」


その瞬間、アーサーが吹き飛ぶ……そして、祭りの終幕は刻々と迫っていた。

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