表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
83/479

龍の悩み事

「ォォォぉぉぉおぉぉぉぉぉッ!」


――ベチャッ――


どうも、地面と再び熱烈なキスをしたハデスさんだよ……と、言ってる間にエレノア達が降りてきたな。


「ハデスよ、何をしている?」

「何でそのまま落ちてくんだよ、飛べよ」

「馬鹿か?」

「『散々な言われようだなぁ?』……良し、偶には毒気を抜かないと狂ってしまう性分でね」

「主様には今の奇行が狂っていないとお思いなのですか?」

「そりゃな!」

『………』

「いやそれよりもだ、エレノアが早めに降りてくれて助かった――」


――ザワザワッ――


「エレノア様が来たぞ……?」

「あの人間……人間?…は敵ではないのか?」

「いや怪しいだろ、入れて良いのか?」


渓谷の底、その影に居る数名の〝人〟は俺に露骨に不審者を見る目で見ながら、話し合っていた。


「お前結構偉い奴だったんだな……って訳で俺達を〝龍畜無害〟な御友達だと説明してくれたまえ」

「貴殿と友に成った事をこれ程後悔したことは無いぞ……我まで可笑しくなったと思われたらどうするのだ?」

「何、そんなもん笑い飛ばせ、実際に頭の可笑しい奴はそんなもん反応すらせんよ!」

「いや、対処にはなってないだろう……コホン、すまないな、彼は我の……うむ、い、一応友達だ、危害は加えん、だな?」

「そうだとも、俺が襲うのは人間だけだ……いや、悪魔も殺したな、他にも魔物も殺したし同族も殺したな?……ンンッ、取り敢えず君達に無許可で襲う事は無いッ、遊びたいなら歓迎するがな!」


俺の言葉に、もう、それはもう悩み抜いた結果、エレノアの面子も加味してギリギリ天秤が勝ったのだろう、龍達は、俺を訝しげにチラチラと見ながら〝門〟を開く。


「ほう!……コレは転移陣か、かなりの大規模だな」

「稀に本来の姿で出る者も居るからな」


そして、俺達はとうとう龍の国へ脚を踏み入れた。







視界一面広がるは青空、緑豊かな大地、其処に見える人工物……壁。


「此処は我等が世界……龍神様が創りし龍の世界……龍の皆は龍神様の名をあやかりこの世界を〝ガウリア〟と呼んでいるのだ」

「精霊の所と同じで、異空間に世界を創ったのか……神のやることは規模がデカイ」


俺の心象結界も突き詰めれば世界を創れるかね?


「客である貴殿等にはこの場所をじっくり見て欲しくはあるが、我は龍王様に謁見して欲しい」

「構わんよ、此方の目的としてもさっさと済ませておきたい」

「助かる」


大地を離れ、空を舞う……至る所に龍達が居て、時折コチラを興味深げに見てくる……時折〝愉しい〟視線も来るが、それにはコチラも〝穏やか〟に対処する。


「……すまんな、龍の中にも自分より優れた者を嫌う者は居るのだ」

「其処は人間と同じか……自分を鍛えると言う発想が無いのも、やはり同じか……下らん奴等だ」

「全くな……見えたぞ……アレが龍王様の住まう城、〝龍宮殿〟だ」


其処には豪華な和洋混合の城が有った……そして。


「凄い〝圧〟だな、面白そうだ」

「主ならば問題あるまい、貴殿等には少し強かろう、私の元を離れぬ様に、下手に離れれば気を失うぞ」


――バサッ――


「これより先に龍王様は居る、不敬が無い様に頼むぞ?」

「考えておこう」

「はぁ、全く………」


城の前に降り立ち、暫く中を進むと、エレノアが立ち止まる。


「龍王様、只今戻りました」

「おう、入れ」


そして扉が開かれた…瞬間。


――ブワッ――


エレノアと比較にならないほどの魔力の圧、気配の濁流を受ける……セレーネは何とか堪えたか、バリット達は……顔色が悪いな……ふむ。


――ゾォッ――


『ッ!』

「ほぉ?」


コチラも魔力を解き、中和する……それを見ると、円卓に座る奴等は面白い程の殺気と好奇の色を見せ、玉座に肘を付く小僧の姿の龍は面白そうに目を笑わせる。


「吐くなよ、流石にゲロまみれになるのは御免だぞ?」

「分かって…ウッ」

「本気で頼むぞ………でだ」


セレーネをベクターに押し付け向き直る。


「御初に御目に掛かる、龍の王……俺はハデス、しがない悪魔で、コイツ等の主をしている者だ、今回は用が有って来訪した」

「おう、俺の名前は〝ガレリア〟……龍神の息子にして、現龍王だ、宜しくな悪魔」

「あぁ、宜しくな龍」

「貴様――ッ!」


俺が龍王と愉しくお話していると、ふと赤鱗の龍が叫び尾を振るう。


――ブンッ――


「ん?」


――パァンッ――


それは俺の頭蓋をを見事に砕き、俺を首無し死体にした。


「エレノアッ、貴様かような無礼者を招きおって!」

「〝シャーネル〟……君が龍王様を慕っているのは知っているが、今の行動は余りに短慮だぞ?」

「黙れッ、貴様の様な者が「『オイオイ、随分熱烈な歓迎じゃないか』」……ッ!?」

『ッ!?』


俺の言葉に、エレノアと龍王を除く全ての龍が俺の声に驚く、全く………ソレは精霊の所でやったぞ。


「『知らんのか?…人が会話してる最中に横槍を入れるのは失礼なんだぞ?』」

「死体が……動いて……」

「『ふむ、エレノアは知っていたので龍全般でも知られていると思ったが、知らんのか〝死霊術〟、まぁ稀な上人間社会では完全排除された異端の術理だもなぁ』……でだ」


まぁ、永きを生きる龍だからこそ、エレノアも少しの知識は有ったのだろう……それは兎も角。


「龍王よ、お前の部下がこうして俺に手を掛けた訳だが……〝そういう事〟で良いのかね?」


――ゾォッ――


「ハデスッ!」


途端、部屋全域を黒が伝う、エレノアが少し焦ったように叫ぶが、今は無視だ。


「お前達龍は、引いては龍の長は、この俺……〝悪魔〟ハデスと〝敵対〟すると、殺し合いを所望していると考えて良いのか?」

「……」

「答えろ、沈黙は肯定と見なす」

「貴様――ッ!?」


また〝赤蜥蜴〟が騒ぎ始めたので四肢を影の腕で抑えつける。


「……いや、俺の負けだな、非礼を詫びよう、〝ハデス〟」

「ふむ、では謝罪を受け入れようか、ガレリア……しかし、此度の無礼には相応の贖いをしてもらう」

「分かっている」


――ヒュンッ――


龍王が腕を振り下ろした、瞬間、シャーネルと呼ばれた龍の首が落ちる。


「〝暫くは魂のまま頭を冷やせ〟……シャーネルの屍肉は好きに使え」

「ふむ……では頂戴しようか」


さぁ、口煩い輩も消えた訳ださっさと本題に移ろうか。


「今回俺がここに来た理由だが……お前等の所のゴミを処理しに来た」

「ゴミ………ふむ、〝淀み〟の事か」

「察しが良いな、ソレだ、場所は分かるか?」

「無論、今現在も封印している……しかし、淀みの処理を本当に出来るのか?」

「既に1つ処理してる」

「ふむ……どうやって?」

「俺が〝喰った〟」


俺がそう応えると、ガレリアは目を見開き、そして吹き出す。


「ッハッハッハッ!アレを喰っただと?……正気かッ!?アレは魂を蝕む、下手に触れれば我々でさえ消滅しかねん代物だぞ?」

「確かに魂に干渉してくるが、元々魂の変質した俺なら淀みの干渉は防げるよ、死霊術は死と魂の術理だぞ?…舐めてもらっては困る」


元より狂っている……と言うのは言わんがな。


「ふむ……真に〝淀み〟を回収しに来たと?」

「そうだ」

「………」


ガレリアはそう問うと、エレノアを見る……確か真偽が分かるんだったな。


「………分かった、明日案内しよう……此度は休むと良い、部屋を用意させる」

「ン〜……まぁそれで良いか、偶には他所の生活に混じるのも悪く無い」


こうして、俺と龍王ガレリアの謁見は果たされた。




『特殊クエスト【聖戦の前触れ】を受諾しました。』

『このメッセージは、秘匿されます』




●○●○●○


「……信用出来るのですか、龍王様」

「淀みに触れようなど、危険では?」


〝彼の一団〟が、玉座の間を去った後、俺の家臣がそう進言する。


「エレノアが連れて来た〝客人〟だ、信用出来るだろう、〝アレ〟に関しては未だ信じられんがな」


忌々しい生命の〝歪み〟、生命ある者を蝕み喰らい増殖する〝概念〟……ソレを喰らい、腹に入れ、溶かし、消し去る等……俺でさえ無理だ……。


「器の方も限界だろう……最早この可能性に賭けるしかあるまい」


でなければ……間違いなく〝世界が壊れる〟。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ