月夜の出会い、悪魔と双月の銀狼
『龍の国……ですか……』
「そーそー、ちょいと神さんに頼まれ事で龍の所に行きたいんだわ、場所知ってる?」
『アンタ今サラッととんでもない事言ったわね!?』
『よもや神の知己とは…』
『凄ーいねー?』
「偶々だ偶々……で、分かる?」
現在精霊の国の城内にて、精霊の長達と茶を飲みながら龍の居場所を集めていた。
『……無論知っておりますが……何故?』
「其処の〝淀み〟を処理する」
『『『ッ!?』』』
『……何処で……いや、神からの依頼ですか?』
「おう、面白そうだから受けた、既に一個は処理してるぞ?なし崩しだがな」
俺の発言に更に驚嘆を見せる四人……やはり精霊は驚かせると良い反応をする、いやそれよりも情報をだな……。
「知ってるなら教えてくれ」
『……分かりました、コチラを御使い下さい』
「地図か……成る程、北西に有る渓谷の中に入口が有るのね」
『はい、淀みを処理するならば〝龍王〟と縁を繋ぐのが良いでしょう』
「ん〜……まぁ、そうだな、序だ、新しい能力を試すのにも丁度良いか」
龍……竜の上位種、是非とも見てみたい、あわよくば……。
『……お勧めはしませんよ』
「……なんの事カナ?」
なにはともあれ、こうして龍の住処の情報は手に入ったのだった。
〜〜〜〜〜
「―――ッと言うわけでさっさと殴り込みに行きたいんだけど、遠いのよね」
イベント開始まで一週間の現状、既に予約済ませてるから、あまり遠くに行きすぎると闘技大会に間に合わん。
「闘技大会が終わったくらいにセレーネ達も肉体戻るだろうし……その後かなぁ」
どうせなら全員連れて行くか、久し振りに彼奴等の実力を試してみよう……ん?
「……う〜ん、フェイちゃんフェイちゃん、アレ何だと思う?」
『……遂にボケたか?』
「叩き割るぞお前……しかし妙だなも?この辺りに〝不浄〟の溜まり場は無いんだなも?」
大体俺が吸ってるし、〝悪霊〟も態々作ったりはしてないし……野良だよな?
『『『――ッ!!!』』』
「妙なのだ、こいつ等悪霊の癖に〝悪意〟が無いなのだ?」
『その話し方は何なのだ?』
「……お前流石にその語尾は無いわ〜」
『……』
「……ッとまぁ、そんな馬鹿みたいな冗談は宇宙の彼方に置いてくとしてだ……ハロー、こんな良い月の夜に何してるんだ?この辺に人は居ない――ッ!」
『『『――ッ!!!』』』
俺が声を掛けた瞬間、悪霊共が震える……と同時に地面を枝が這う。
ツ イ テ キ テ
ア ノ コ タ チ
シ ヌ
「着いてきて、あの子達、死ぬ……その餓鬼共を助けてくれと?」
ソ ウ
「随分と珍妙な悪霊共だ……人への恨み辛みでは無く、〝憐憫〟と〝優しさ〟を持った個体……滅多にでは無い、異常とも言える……フフフッ♪」
悪霊共を此処まで言わせるその子達とは何者だろうか?
「オーケー、案内しろ、急げよ?」
『『『――ッ!!!』』』
俺の言葉と同時に悪霊共が踵を返す……物理法則を無視した速さで。
「……随分と必死だな」
俄然気になって来た。
○●○●○●
昔、と言ってもそれ程昔で無い話、人の世の人の村は、一匹の狼に襲われていました。
銀の毛を持つ、赤い眼を持つ獰猛な狼に……時に人を喰らい、時に戯れに殺し、人々は恐怖し、祈りながら暮らしていました。
そんなある時、1人の女性を狼は襲った……食らうでは無く、己の子を作る為に……その女性は狼の子を宿した……そして、それから凡そ1年の月日が経ち、村に忌まわしき狼の子が産まれた……人の世で忌み子として扱われる双子として。
忌まわしい、恐ろしい化物の、それも忌み子の双子、村人達は殺せと叫んだ、誰にも愛されない双子を、村の子も、大人も、老人も、母でさえ、その村には双子を愛する者は居なかった……しかし、殺さなかった、否、殺せなかった。
殺そうとした者は皆例外無く腕を奪われ、脚を奪われた……銀の狼の。その影を見て……夜月に響く遠吠えを聴き、村は双子に手を出すことは出来なくなった。
しかし、何時しか銀の狼は姿を消した、遠吠えも消えた……死んだのか、どうなのか誰もわからない、双子を殺せと叫ぶ者も、銀狼が生きていた時の報復を恐れ、双子を、村の離れに有る、洞窟の牢へ押し込めた。
土の牢は冷たく、童の身を凍えさせ、飯は与えられず、飢えを凌ぐ為に己の身を削り合い、時に現れる村人の暴力に双子は晒された。
愛を与えられぬ悲しさに、飢えを凌ぐ為に己を食い合うその辛さに、ただ産まれただけに受けたこの酷い仕打ちを、双子の悲しみに引き寄せられた彼等は目にし、思った。
『酷く憐れだ』と
『このままでは死んでも死にきれまい』と
か弱い念で水を微かに運び、か弱い念で虫を殺し、少しでも長く生き永らえさせ、そして、少しでも早く、あの子達を救う救世主を見つけなければと、悪霊で在った者達は陽の光に晒されながらも彷徨っていた。
●○●○●○
「ボロ雑巾みたいだな」
俺は眼の前の光景にそう零す、鎖に繋がれた童を、両手足を失った童達を、寄り合い、涙を流し、微かな荒い息を吐くその二人を見て。
「耳も削がれ、目も潰され、最早死体に成りかけて居る……凄まじい執念と悪意だな」
気に入らないなァ。
「たかが人の分際で悪魔の領分に入ろう等、不敬だろう、不遜だろう?」
絶望は〝俺〟の糧で有る、恐怖は〝私〟の食事である、殺意は〝我〟の物であろう?高々人間の分際で、その域に手を伸ばした、悪魔に成ろうとしたその不遜、その高慢、その罪科を。
「支払わせねばなァ?」
瘴気を食らう、この場に溜まりに溜まった、悍ましく、不味い瘴気を……そして、俺は二人の童へ近寄る。
「憐れな小僧、愛されぬ幼狼、お前達は俺へ新たな余興を与えた……〝対価と代償〟……〝悪魔の法〟に法り、貴様等に対価を与えよう」
――ピタッ――
「「――ッ!?!?」」
「……喉も潰されたのか、まぁ良い……少し痛むが安心しろ、治してやる」
生憎と治癒魔術は扱えんのでな、半分死んだ身体なら、俺の力で生やせるだろう……痛むがな。
「序だ、こいつ等は俺の〝所有物〟と成る、どうせなら見てきたお前等がこいつ等を護ってやれ」
腕を伸ばし、同時に死霊達に術を行使する。
「「――ッ!?!?」」
『『『『『『――ッ!!!!』』』』』』
「ま、そうでなくとも磨くがな」
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【無し】LV:0(衰弱状態)
【銀魔の幼狼】
生命力:1000
魔力 :800
筋力 :600
速力 :800
物耐 :1500
魔耐 :800
信仰 :500
器用 :400
幸運 :200
【保有能力】
〈五感強化〉LV:5(制限)
〈気配探知〉LV:5(使用不可)
〈魔力探知〉LV:4
〈苦痛耐性〉LV:6
【保有称号】
〈被虐者〉〈忌み子〉
―――――――
―――――――
【無し】LV:0(衰弱状態)
【銀魔の幼狼】
生命力:1000
魔力 :800
筋力 :600
速力 :800
物耐 :1500
魔耐 :800
信仰 :500
器用 :400
幸運 :250
【保有能力】
〈五感強化〉LV:5(制限)
〈気配探知〉LV:5(使用不可)
〈魔力探知〉LV:4
〈苦痛耐性〉LV:6
【保有称号】
〈被虐者〉〈忌み子〉
―――――――
「此方は終わったな……で、お前等の方は?」
『問題無いです、我が王よ』
『我等の願いを叶えて頂き感謝致します』
『我が魂砕けても、貴方に仕えましょう』
半透明の剣と鎧を纏った六人に目を向ける。
――――――
【無し】LV:25
【従護の霊騎士】
生命力:6000
魔力 :8000
筋力 :4000
速力 :6000
物耐 :―
魔耐 :3000
信仰 :3000
器用 :5000
幸運 :2000
【保有能力】
〈物理無効〉LV:MAX
〈魔力探知〉LV:5
〈気配探知〉LV:5
〈剣術〉LV:5
〈無属性魔術〉LV:3
〈聖属性脆弱〉LV:8
【保有称号】
〈ハデスの眷属〉
――――――
「んなもんどうでも良いわ、それよりコイツ等見とけ、痛みで気絶してる、後で戻って来る」
『何方へ?』
「決まってんだろ、〝無謀者〟共のお仕置きだよ」




