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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:燃える燃える、骸は燃える
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夢の化物と致命の男子

――ギィンッ――


剣鬼の斬撃が肉を裂く。


――ボチャッ――


弾丸が肉を抉り、穴を生む。


――ガンッ――

――ガチャンッ――


「ハッハッハッ、まだッ、まだまだまだッ!」


身体を抉り、四肢を引き千切る、既に20の屍を積み上げて、戦場を駆ける。


――ズシャァッ――


「取っ「てない」――ッ!?」


混戦、1人の戦士が俺の首を斬り付ける……其処じゃない。


「「其処は人の急所だぞ?」」

「ウェッ……ギッ!?」


また1人、頭蓋をもぎ取り屍を積む……。


「「ケッヒャヒャヒャッ、恐れたな?」」


――グチュッ――


「ヒィッ」


その悍ましい形に、多くの人間が足を止める……それを6つの眼が捉え、口角を歪め嗤う。


「どうした〝生き残りの敗残兵〟、殺す為に来たのだろう?何故刃を振るわない、敵は今もこうして無防備に立っているぞ?」


――ギィンッ――


「シィィッ」

「三郎丸、お前は本当に面白い……だが」


――グチャグチャッ――

――カチャンッ――


「詰みだ♪」


翁の心臓に銃口を突き付ける。


――ガチャンッ――

――ブパァッ――


そして、その心臓に、胸元に大きな風穴を開く……剣鬼は死んだぞ?


「サァ、次は誰の番だ?」

「ヒィッ――」


――ガシッ――


恐怖を漏らした戦士の腕を掴む、その切っ先を私に向けさせて。


「さぁ、敵は此処だ、化物は此処だ……殺せ(殺せ)鏖せ(殺せ)壊せ(殺せ)、其の為に来たのだろう?……出来ないならやり方を教えてやる」


ゆっくりと、俺の喉に剣を通していく……恐怖に顔を歪めさせる男の顔が愉快だ。


「どうだ?…伝うだろう?震える声の振動が、聞こえるだろう?肉を裂いて進む音が、感じるだろう?肉を抉る感触が……コレが〝殺す〟だ、コレが死を与えると言う事だ…さぁ、お前がこの剣を振り下ろし、俺の心の臓腑を切り裂けば、俺は死ぬるぞ?」

「あ……あぁぁッ」

「さぁ、さぁさぁさぁさぁ!…殺れ!やってみせろ!そして吠えろ!俺が英雄だと、俺こそが化物殺しの勇者だと!」

「―――」


グラリと、男が垂れた……強制ログアウトによる死亡だな。


「クックックッ、肝の小さい男だ…そして、同時に残念だ」


この場に居る数十人、その中で動こうとする者が居ない……〝勇者〟足り得る者は居ないらしい。


「お前達の中で、誰か一人でも動けば、誰か一人でもあの男に手を貸し、俺の臓腑を刺し貫けば、俺の命をくれてやっても良かった……」

「シィィッ」

「ァアアッ!」

「遅かったな勇者共……だがもう〝飽きた〟」


漸く復帰した勇者達を見ながら俺は、取り出した"菓子"を喰らう。


――ゴポッ――


「此処らで潮時だ……〝夜は夢の世、夢は悪夢へ〟」


――グチャッグチャッ――


「〝旧き古き言の葉、無意の音色、迷いし少女、狂い回る時計、着飾るは導きの兎、帽子屋は狂気に溺れ、狂乱の茶会、白き駒の女王、赤き札の女王〟」


黒い黒い瘴気が包む、何人も近付けず手出しできない混沌の渦の中で、俺は言葉を紡ぐ。


「〝ソレは人で在り、獣で在り、化物で在り、〈悪夢〉で在る〟」


「――〝千屍:狂い唄う悪夢の屍獣ノスフェラ・ジャバウォック〟」


「〝炙りの刻、粘らかなるトーヴ、我が息子よ!ジャバウォックに用心あれ!〟……ってな?」


その姿はまるで黒い靄の様に、其処に在った、その姿を無限に変形させ、蜥蜴にも、人にも、狼にも天使にも、竜にも見せ、6つの赤紫の目が嘲るように嗤っていた。


「さぁ生き残りの敗残兵(アリス達)、〝致命(ヴォーパル)の剣〟は持っているか、既に現は夢と化したぞ、お前達が悪夢を選んだ、悪夢は夢にて化け物として現れた、残されたのは斃すか死ぬかだ、此処にお前達を助ける〝帽子屋(マッドハッター)〟は居ないぞ?」


さぁ、生き残る為に死にに来い。


「〝浄滅の光条〟」


浄化の光条は霧を焼く……だが。


――パァッ――


「惜しいな勇者、その剣では俺を殺せない」


光は霧散し化物はせせら笑う。


――グチュ、ボキッ――


「サァ、歌え」


霧が収縮し、屍の鋭い爪が人の身体を裂く。


「豚の悲鳴を、蛙の叫びを、忌むべき狂騒を、絶望し、そして途絶え、また繰り返す狂気の時間を、終わらせるのは誰ぞ、無論、無論覚悟有りし夢の少女、赤射の男子だ、泥臭くも気高き、弱く強い真なる勇者で有る、さぁ悪夢に迷い込みしアリス()よ、お前はアリス()か、それとも()か?」


問答に返すは苦痛の叫び、また1人、弱き兎の躯は積まれる、恐れ抱き逃れようとする度に、お前達は生から遠退く。


「〝残るは十の少女達、さぁ今一度問おう、お前は何だ?〟」


聖剣の男、聖剣の女、その背後には恐れ抱く兎達、さて――。


「うおぉぉぉッ!!!!」

『ッ!?』


――ザシュッ――


霧を〝斬った〟、化物の〝肉〟を裂いた、勇者で無く、聖剣を持たぬ凡才が、誰一人と傷付けられなかった化物の体を、化物の命を削った……つまり、つまりは――。


「〝見つけた、見つけたぞ赤射の男子!化物を狩る迷い姫!帽子屋を救う祈り手!狂気終わらせる現の勇者ァ!〟」

「「素晴らしい、素晴らしいッ!お前は選んだッ、誰が為に、己が為に!化物を殺し、今生きる兎を救う者として、そう在れと!…あぁ、嗚呼ッ!最早この夢に価値は無いと、微睡む光は無いと思っていた!この土壇場で、とうとうアリスは現れたッ!」」


――ズォンッ――


俺はその男子を包む、凡才の男子、人の域を出ない、主役に選ばれなかった者……その名は〝ビーク〟。


「さぁ英雄、此処から先はお前の舞台だ無才のアリス、お前はこの私、〝夢の化物(ジャバウォック)〟を殺す唯一の存在と化した、その手には眩く輝く〝致命の剣〟、お前が死ねば兎も死ぬぞ」

「ッ!?」

「恐れ、しかし立ち向かう責任、実に結構、で有るならばアリスよ、ジャバウォックの首を、悪夢の心臓を、その剣で持って刎ねて見せろ」


――ザッ――


「――グッ!?」

「致命の剣は夢の物、悪夢殺す剣は、お前の意思で強くなる、分かるか、私の一撃を受けて尚砕けぬ強靭な剣を持つ者、お前の覚悟は確かに化物へ届いている」


――ドッ――


「そして夢の英雄はその身を砕けさせない、己の心が諦めへ至るまで」


腹を蹴り抜く、しかしその姿は五体満足、さぁ。


――ドォッ――


「化物の腕をもげ」

「その足を貫け」


化物の体を切り裂き、夢の英雄は迫る。


「掴んで離さず」

「引き寄せて殴れ」


その距離は、次第に詰まる、対岸から、同じ大地を踏み、剣戟が指を掠め、その顔が近付き――。


――ブシャアッ――


「これにて、悪夢の座興は終わり、しかしジャバウォックはまだ死なず――」

「シィアッ!」


その剣は、化物の首を刈り取り、その手に納めた。


――フッ――

『ッ!』


霧は溶け消え、勝ち取りし英雄がその姿を見せる……アリスがジャバウォックを打ち倒した。


「赤射の男子夢見る守護者、〝ビーク〟、選定に選ばれた英雄には相応の対価を与えよう」


倒れ込んだ化物の身体は霧散し、その身体から、白い純白の剣が現れる。


「〝夢破の鋭剣ドリーム・オブ・ヴォーパル〟、神では無い、人の祈りが産んだ清き剣、お前に相応しく、お前以外には扱えぬ、お前だけの武器を……そして」


――ゾォッ――


「〝悪夢(ジャバウォック)の呪い〟を、お前は夜の獣に襲われる、しかしその剣で以て斬り伏せた時、お前はさらなる力を与えられるだろう」


そして化物は消え……。


「『選定の夢は覚めた、新たな英雄の産声と共に』」


怨敵、ハデスは討たれた。


















●○●○●○


「……二度目、いや、幾度目かな?」


死して再誕した俺は、その身体を見やる……未だ覚めやらぬ〝悦〟の色が心地良い。


「ベクター、ヴィル、今回のゲームは、俺達の負けだ」

「そうですね」

「んだよ、人にあんだけ無茶させて負けたのかよ!?」

「悪い悪い……だが、〝収穫も有った〟」

「「ッ!?」」


また1人、俺を殺せる者が現れた……フッフフフッ♪


「喜ばしい事だ……フフフッ♪」


俺の元へ帰還した5つの魂を、肉塊に入れる。


「お前達は暫く休め、器が出来るまで動けないぞ……早くても一ヶ月は掛かるな」

『ッ!?!?!?』

「そう騒ぐな、味覚も何もかもは創って有る、眷属達に世話させる……後は」


――グチュグチュッ――


「ピィッ?」

「コレを〝彼〟に…渡しそびれていた」


新たに生み出した鷹の死霊をとばす、その手には茶色い鞘の剣を持って。


「暫くはまた自由行動だ、俺は第二エリアのボスを殺して回る、好きに過ごせ」

「「御意」」

『ッ!』


それじゃあ、時間も時間だしそろそろ――


――ピロンッ♪――


ん?メッセージ……運営?……何々…〝先刻の戦いをプロモーションに使いたい?〟構わんぞ……ん?〝自重しろ?〟断る。





〜〜〜〜〜〜




「「「んあァァァッ!?!?!?」」」

「見事に拒否されたッスねぇ……御愁傷様」

「まぁ従う道理はねぇわなぁ」


そんなこんなでハデスがログアウトした後の某運営では、システム管理に奔走する職員達が絶望の声を上げていた。

〈アイテム紹介コーナー〉


コレは作者が思い付きで作った、主人公が使ったアイテムを偶に紹介するコーナーです(尚不定期に行います、気が向けば書きます)


ではドンッ!


――――――――

【悪夢のお菓子】

憎悪の生地に、たっぷりの血のクリームを、トッピングは赤い人の肉を、甘く蕩ける様な甘味を、そして悍ましい力を、弱き器は取り込まれる、しかし強き悪意はその力を形に出来よう。


ソレは"悪夢の化物"、意味の分からぬ悍ましい獣の姿。


――――――――


ハデス作消費型"呪物"、ハデスが現実で見た童話、映画を思い出し作った忌物、ハデス自身を触媒にせずとも"受肉"出来る物……例えば其処らに居る人間に食わせると……ハデス程とは言わないまでも相当強力な化物を作れる、アーサーや聖剣、魔剣持ちなら倒せる、頑張れば他の守護者でも……ハデスの場合は本編を見た通り"覚悟を持った者(アリス)"に選ばれた者に"特攻"を付与します。


"悍ましき化物を討つは覚悟の勇士、アリスの担い手、首を刎ねて掲げ、心臓を穿つ者"

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― 新着の感想 ―
[一言] ハデスって強いとか弱いとか勝ちだとか負けだと気にしないよね?それでだだ...そう...愉しんでる。この世界をある意味一番ね、そして狂気が凄い!その精神性は人に在らず化け物やクトゥルフ神話の奴…
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