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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:悪夢に足掻く者達
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悪夢の劇場に狂騒は奏でられる③

「おい!住民の避難は!?」

「もうやってる!もう少し耐えろ!」


東の街……その街で、何処よりも堅牢な守りを持った場所、〝領主館〟、其処では何人もの守護者達の怒号が響いていた。


「此処で遅滞戦闘を続けろ!相手のヘイトを俺達に集中させるんだ!」



「ね、ねぇ……私達も手伝おうよぉ」

「あの数が居れば問題ない筈だ、それよりも俺達はヒントの解読をするべきだろう」


多くの守護者が攻防を続ける中、現状打破に情報収集が必要だと考える複数のグループは各々が散り散りに街の調査を始めていた……〝彼等〟もその内の1つで有る。


「掲示板に流した情報と照合して、各街に存在するヒントは同一だと解ったわ、〝真理の開拓者〟が主動して残りのヒントの在り処を割り出してる今、私達はこの領主館を調べないと行けないのよ」


ヒナの言葉に私はそう返し、道を進む……時折部屋を探索するプレイヤーに遭遇しながら。


「〝統べる者の宝物庫に財貨を投げよ〟……統べる者はつまり領主だと思う、領主館の宝物庫を探すぞ」



――ピンポンパンポーン♪――


「『ゲーム開始から30分が経過しました!コレにより鬼が強化……はされません、皆様頑張って下さい♪』」

「チッ……巫山戯た野郎だ」


巫山戯たアナウンスにグインが悪態を吐く。


「……階段ね」


道を進むと階段が現れる、上か地下へ続く階段が……。


「宝物庫って言うとやっぱり地下のイメージが有るし、下に行こーぜ!」

「そうだな、此処で何方か迷うのも時間の無駄だ」

「異議なし」

「わ、私も」


そうして地下に入ってく……さっきまでの明るさは嘘のようにどんよりと仄暗く、人気がまるでない。


「うわ、暗いし埃クセェ……幽霊でも出てきそうな雰囲気だな?」

「幽霊は苦手かな〜……本当に出ないよね?」

「さぁな、出ても魔術で倒せそうだが」


雑多な会話を交わしつつ、一部屋一部屋を確認していく……そのどれもが嫌味な程綺羅びやかで、悪趣味だった……どこもかしこも純金の美術品、財力を誇示する様な、そんな浅はかな思いが詰まった様な感じがする。




――ギィィッ――


「う〜ん?此処も外れかぁ?」

「そうだな、普通の部屋だ」

「え〜?でも此処が最後の部屋だよ?」


部屋を見て回り、最後の部屋の扉を開く……見窄らしい古扉に質素な部屋が其処に有った……。


「……当たりね、此処が宝物庫の入口よ」

「「え!?」」

「……その根拠は?」


私の言葉に二人が驚き目を見開いて私を見る、カイは冷静に私へ問い掛ける、確かに一見すると普通の部屋ね……。


「簡単よ、此処だけ他の部屋とは明らかに違う……家具の質も、配置も、何もかもが〝貧しい〟わ、今までの部屋の様相から、この屋敷の主、たしかヨーリスだったかしら……ともかくヨーリスは自己顕示欲の高い人間だと推測出来るわ、悪趣味な金の装飾もそのまま自分の財力の高さを見せつける為だと思える……そんな奴がこの部屋だけをこんなに質素にしているなんて、明らかに〝変〟よ」

「でも、飾り付けする物が足りなかったとか……?」

「それなら買えば良いじゃない、あれだけの見栄を張るならそれくらいは出来るはずよ、それにこの部屋の端とかに溜まった埃……何日も掃除されてないって事は使用人も誰一人近付けさせてないって事よ、つまりこの部屋は何か特別な物が有るのよ」

「スゲェな、まるで探偵見たいだなルスト!」

「だね!ルストカッコいい!」

「頭脳は大人、身体は高校生ってな」

「いやいや中学生だろ!」

「ぶっ飛ばすわよグイン!」


私は煽るグインを睨み、それから部屋の捜索を開始する……皆もそれぞれ分かれて捜索を始めた。




そして。



「……おい皆、見つけたぞ」


カイが隠し扉を見つけた。


「此処だ、此処の壁の音が軽い、空洞が有る……この辺に何か有るはずだ」

「……グイン、壊して」

「んぁ?良いのかよ壊して?」

「脱出するためよ、不可抗力だわ」

「不可抗力ね、不可抗力……そんじゃ」


――ドゴンッ――


「おぉ!ビンゴ!」

「行きましょうか」


私達は新たに現れた隠し通路へ進む。

……道は二人並んで通れるかどうかと言う程狭く、階段はウンザリするほど長い……だが、どうやら其処も終着らしい。



――ギィィッ――


「うわぁ〜!お金が一杯だ」

「スゲェ数の金貨の山だな、どんだけ溜め込んでんだよ」

「ルスト」

「えぇ……皆、武器を構えて」


扉の先は金銀財宝に彩られた広い部屋、何億かは分からない程に溜め込まれていた……そして、私の目の先には、黒い人影が……〝ヨーリス〟が居た。


『何者ダ!?』

「皆、どう思う?」

「どうってありゃぁ……」

「うん……」

「だな……」

「「「幽霊だな・だね」」」


その人影は確かに、ゲーム開始前に見たヨーリスだった、しかし、その実体は薄く言葉もカタコトだった。


『此処ハ我ノ宝物庫ダ!貴様等ニヤル物ハ無イ!』

「鑑定出来ない?……魔物じゃ無いの?」

『失セロ下民!我ノ宝物ヲ奪ウナ!』


只管に私達へ咆えるヨーリスに眉を顰めていると、不意にヒナが声を上げる。


「ねぇルスト!あの人何か入ってるよ!」

「ッ!……本当ね」


ヒナの指差す方向に目を向ける……ヨーリスの身体の中心部に、〝黒い硬貨〟が見える。


「〝統べる者の宝物庫に財貨を投げよ〟……つまり、アレがその財貨?」

「だろうな……狂った戦士に鉄錆た剣を、神の居座る地には反逆の十字を、統べる者の宝物庫に財貨を投げよ、妄信の果てに正義は穢れた……つまり、宝物庫にあの硬貨が存在する、それ自体がこの〝悪夢〟を創る要因だと思う」

「って事は……どういう事だ?」

「っ!分かった!あの硬貨を宝物庫から出せば良いんじゃない!?」

「そうね、悪夢を夢に変えるならそれを形作る要因を反対にすれば良いんじゃないかしら?」

「ってこたぁ…」


――ズムッ――


『ッ!?貴様何ヲ!?ヤメロ!コレハ我ノ物――』

「知らねぇよ」


――ズボッ――


『※※※※※!?!?!?』


グインが幽霊から硬貨を奪い取る……そして引き抜いたと同時に宝物庫の外へ硬貨を投げ捨てると


――ボシュンッ――


その瞬間、黒い硬貨は塵となって消え、幽霊も奇声を発して霧散する。



――ピンポンパンポーンッ♪――


「『おめでとうございます♪東の街で楔が1つ消し去られました!』」


「どうやら合っていた見たいね、掲示板にもこの情報を流しておくわ」

「そうだな」

「ふへぇコレで一歩進んだね!」

「んだな!」


――パチッパチッパチッパチッ――


「「「「ッ!?」」」」


私達が宝物庫の中で肩の力を抜いていると、入口から誰かの拍手が響いた。


「〝堕落の楔〟は解かれた、コレにより残される楔は後3つ……プロフェスでは無く、君達がその偉業を成し遂げたのは何ら意外では無い、ゲームとはそういう物だからな」

「あ!テスさん!」


階段を降りて、私達の前に現れたのは……少し前に私達が出会い、その知恵を貸してくれた人……テスさんだった。


「お久し振り、ヒナ、グイン、カイ、ルスト……領主館の攻略おめでとう、祝福するよ♪」

「何だ〜!テスさんも此処に居たんですか!……何で教えてくれなかったんですか!」

「そうだぜ!なぁカイ!ルスト――」


――ヒュンヒュンッ――

――ゴォォォッ――


私とカイはテスへ〝攻撃〟を放った……その瞬間、二人は驚愕の顔を浮かべ、テスは火達磨に変わった。


「ッ!?ルスト!何して!?」

「カイッ!?テメェ何してんだ!?」

「黙れ!お前達も今すぐソイツから離れろ!そいつは敵だ!」

「「ッ!?」」


カイの声に二人が目を見開く……すると。


「アハッハッハッ♪……良く気が付いたね二人共♪……やはり〝露骨〟過ぎたかな?」


倒れ伏した火達磨がのそりと動く……焼け焦げた身体がうねり肉塊が人の形を取る。


「流石はこの街まで来たパーティーだ、第一陣に引けを取らない練度と火力……関わった者としては中々感慨深い物があるね」


「テス……さん?」

「いいえ、それは偽名よ……そうよね?〝ハデス〟」

「正解♪」


炎が止む……其処には焼け焦げた身体等無いかのように黒いスーツに身を包んだ、道化の仮面を着けたハデスが居た。


「ヒナ、グイン……君達はもう少し相手を警戒した方が良い、悪い大人に騙されるよ?こんな風に」

「え……嘘、ですよね?」

「……マジかよ」


二人の顔に、ハデスはクツクツと笑う、あの日見せた愉しげな目を向けて。


「さて、私が此処に居るのは楔を解いた者達への労いの為だ、私はこうして話していても良いが君達はそうも行くまい……それじゃあ、引き続き頑張れ」



――あぁ、それと――


「〝楔〟が全て解かれた獣は、その在り方を失う、手負いの獣は恐ろしい……精々気を付け給え」


そう言うと、グインの怒号を無視して、彼は闇に消えた……。



――ゴーンッゴーンッゴーンッゴーンッ――


狂い響く鐘の音を残して。

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