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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:悪夢に足掻く者達
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白の鬼と黒の鬼


拠点間に転移門を繋げに行った、タラト含む四人の性質が垣間見えて中々面白かったよ。


バリッドのは屋敷の周りに罠を張り巡らせた……そうだな、戦場要塞?連結トーチカ……取り敢えず、対外敵に目を向けた戦闘向けの拠点だった、名は〝戦猪の要城〟、良いネーミングセンスだ。


ディヴォンは湿地帯に不気味に鎮座する洋館風、周囲を湿地帯の湿気った霧で視認性を下げ、幾つも視線を誘導するような物を作っている、見た目は子供だが、やはり狡猾さは健在な様で、中々楽しかった……忍者屋敷の様で、因みに名前は〝白蛇の家〟、シンプル。


グルーヴのは、〝屍御殿〟に似た黒い屋敷、中は、とても美しい調度品で飾られ、しかし何処か恐ろしげな、畏怖と美を感じさせる、気品ある令嬢の様なグルーヴに、とても良く似合う拠点だった……名前は〝黒愛の館〟。


「どれも特色が濃く、それでいて求められた機能は満たした、素晴らしい拠点だったな」


現在屍御殿、各々が自由行動(タラト&グルーヴは俺の研究室に籠もりっ切り)、イベント開始まで一週間を割った現在、最終調整に入って居る段階だが。


「………」

「………」


俺の隣で……そう、俺の隣で、じっと…じぃっと見つめてくる緋色の双眸……随分と熱烈な、思わず身震いするような激情の籠もった眼。


――ギギギギッ…――


「……近イネ?」

「………そうか」


……近い、さっきまで1、2メートルは離れていた距離が、既に手を伸ばせる位置に。


「……」

「………」

目を逸らして、再度見る……さっきまでの距離よりも更に近い。


「……如何サレタ?」

「別に」


…………。


――チラッ――


「………」

「………」


最早何も言うまい……一言言うなら、メンチ切ってる輩か、或いは熱々のカップルの距離である、鼻がくっつきそうな程近い……それに気の所為かな?殺気が凄い。


「……流石に離れてくれるか?このままでは動いた拍子にキスしかねない」

「………暇だ」

「そうだな、でも少しやることが有るんだが」

「私は今回、何も出来ない、見てるだけだよな?」

「……まぁ」

「新設の拠点を見に行く道中で、戦った奴等は弱過ぎた……すっごい暇だ」

「つまり?」

「私とヤレ」

「……今?」

「今」

「何処で?」

「此処で」


オーケー……つまり闘争本能がゲージを振り切ったのか、オーケーオーケー。


「……仕方無いか」


――ガシッ――


「流石に此処を壊すのは困るからな、〝中へ来い〟」


――グパァッ――


セレーネの手を掴み影が覆う……そのまま暗闇に意識を落とし……。



――グチャッ――


俺とセレーネは心象世界……肉とそれに突き刺さる血濡れの武器の無限回廊に立っていた。


「ようこそ俺の世界へ、始めに言っておくと此処は精神だけが居る、現実の肉体とは無関係、つまり死ぬ事は無い、しかし攻撃は死ぬ程痛い、ちゃんと相応のダメージは受ける、オーケー?」


――ドォッ!――

――ブパァァンッ――


「取り敢えず早く殺ろうぜ!」

「オイオイ、流石に不意打ちの全力攻撃は洒落にならんな……腕が一本オシャカだ」

「不死身の化物が何言ってやがる」

「不死身でも痛いものは痛いぞ?」

「そんな風に見えねぇなァ!」


説明終了と同時に発射された緋色の弾丸、控え目に言って重く、鋭い一撃に辛うじて差し込んだ腕が千切れ飛ぶ。


「一応聞いておこうか、〝殴り合い(タイマン)〟? 〝殺し合い(キリング)〟?」

「どうでも良い!」


――シュッ――

「それじゃあ〝殺し合い〟で」

「ッ!?」


跳び進むセレーネの真ん前に〝移動〟し、そのまま蹴りを入れる。


――ブチブチブチッ――


「――ックゥ……テメ、ソレ〝転移〟かッ!?」

「正解……まぁ、色々と特殊だが」


何とか衝撃を殺したセレーネの背後へ回り、再度蹴り飛ばす……む?


「捕まえた――ッ!!!」


蹴り込んだ瞬間、脚を掴まれて、壁へ投げ飛ばされる……そのまま壁に激突し。


――ドシュドシュドシュッ――


受け身を取る暇すら無く、そのままセレーネに心臓を剣で貫かれ、そのまま抉り斬られる。


「痛いな」


セレーネを弾き飛ばしながらそう呟く、幾らシステムで軽減されていようが流石にこの攻撃は痛い。


「〝百屍:屍人死獣百鬼夜行〟……偶にはセオリー通りに動こうか……〝行け〟」


百の人獣屍がセレーネへ駆ける。


「〝激動の赤鬼〟」


セレーネのその一声、そして一斉に集り飲み込む屍の群れ、しかしその瞬間。


――ボシャッ――


「……嘘ん」


俺の視界は潰れた……セレーネの拳によって。


「『その姿……〝技名〟……物理系の中で〝身体強化(フィジカル・ブースト)〟って言うのが有ったよな?』……アレは一定時間自身のステータスを引き上げて期間終了で一定時間半減させる……今回のはソレの延長か?」

「一発で当ててくんなッ!7割正解だ!――」

「あぁ、成る程」


セレーネの紅いオーラが止み、一転して蒼いオーラを纏う、それと同時にフッとセレーネの姿が掻き消える。


――ガシィッ――


「〝色鬼〟……効果はそうだな、〝対応した色のステータス変動〟、或いは〝調整〟か?」

「本気でどうなってんだお前の頭?」

「俺も分からん」


背後から無音で振るわれた拳を掴み止める……ふむ、やはり威力は赤より劣るか。


「しかし、そうか……魔術、武技、その何方も進化や変化は有るのか、そうだろうな、魔術に拡張性が有って武技に無いのは妙な話だよな」


イカンな、セレーネのストレス発散に付き合うだけだった筈なんだが……クフフッ♪


「少し楽しくなって来た」


セレーネの振るう拳に拳を合わせ、その衝撃で飛び退く……。


「やはり、お前は良い、セレーネ、見ていて飽きないな」

「……褒めてるのか?」

「あぁ、これ以上無い程に」


やはり、この世界は面白い……セレーネの様な〝宝〟がまだまだ眠っては居ないだろうか。


――ドガッ――


「っとイカンイカン、物思いに耽っていた……悪かったなセレーネ、お前の衝動に充てられて、少し昂ってきた」

「ッ!ニヒヒッ、良いねぇ!漸く本気で――」

「あぁ、付き合ってやる」

「ッ!?」


一瞬で間合いを詰めて殴り付ける、がセレーネがギリギリで防御を挟む。


死霊術のセオリー?大量の死霊による物量攻撃、大いに結構、それも1つの戦法だし、俺も好きだ。


「だがやはり、こういう異端も悪くはないだろう?」

「お前……ソレ」


死霊術における死霊の作製……質の悪い死霊を雑多に創り圧殺するか、或いは文献の屍龍の様に強力な個を一つ創るか……何方も正解だが。


「何故、自分に使うと言う発想に至らないか……簡単だ、〝人で居たいから〟だ」


だから気付かなかったのだろう、俺の前に存在した死霊術師共は、この術のポテンシャルの高さを、ただ作り襲わせるのではない、〝屍を支配する〟術の汎用性を。


「〝一屍:鏖殺に咆える黒鬼〟」


自身に扱う死霊術……この場に無限に存在する屍を俺へ寄り集め、混ぜ合わせ、制御し、形造った……1つが欠けた双角、内に秘めた膨大な怨恨の念、肢体に内包された力の塊。


「殴り合いならば、やはり全身全霊、全力が一番楽しいだろう?」

「オイオイ、そりゃ狡だろうがよ」

「その割に随分と楽しそうじゃないか?」


そうだろうな、お前なら、この圧倒的な力を内包した〝ソレ〟を前に、退く等あり得んだろうな。


「〝猛り笑む白鬼〟」


狂戦の笑みを浮かべる、緋色の髪を靡かせる白鬼。


対するは。


無垢な狂笑を浮かべる、黒い髪の黒鬼。


「時間が少ないし、さっさと始めるぞ?」

「……オーケー、やろうか」


――   ――


そこからは、何も言わず、何も躊躇う事も無く。


――ドガァァンッ!――


短く、面白い、〝殺し合い〟が始まった。











〜〜〜〜〜〜〜



「「………で?」」


現在、屍御殿にて、セレーネとの〝戯れ〟を終えて戻った所、グルーヴとタラト、その背後にはベクター達の全ての幹部達が居て……俺は正座させられていた。


「〜〜〜♪」


その横で、椅子に座りご機嫌な様子で菓子をつまむセレーネ……何故俺だけ?


「もう一度説明してくれますか主様?」


ニッコリと良い笑顔で問い掛けるグルーヴと、真顔で、それはもう能面の様な冷たい顔で俺を見るタラト、対極な見た目なのに背負う〝鬼〟は同じな二人の問に、俺は正座を余儀なくされた。


「何故、セレーネさんと、二人でくっ付いて、イタンデスノ?」

「クワシク、キキタイネ」

「………ストレス解消?」



――ビシッ――


オイ待てセレーネ、その言い方は誤解を生――。


「「有罪!」」

「……」

「「「「……行ってらっしゃい(ませ)」」」」


どうやら、四面楚歌、孤立無援らしい……ベクターめ、知っていて黙ってるな、何て性格の悪い奴なんだッ、一体誰に似た!?


――パリーンッ――


こうして俺は、怒れる二人に誤解が解ける間、ボコボコにされたのだった。


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[良い点] 面白いです。 [気になる点] 御前だと、 1.貴人の面前・座前を敬って言う語。みまえ。 2.相手に対する呼びかけの敬称。 おまえ、みまえ、ごぜん になる。 屋敷なら、御殿。
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