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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第二章:悪夢に足掻く者達
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七罪と悪神

――カチャッ――


「んで何?人の心象世界にズケズケと入って来やがって、ぶち殺すぞ悪魔共」


7人全員を見ながら紅茶を啜りそう告げると、喧しい奴等の騒音がピタリと止まる。


「……随分と小生意気な小僧だな?」

「些か、分を弁えろよ餓鬼ィ?」


俺の発言に一番反応したのは2匹か……赤と橙の……見た感じ〝憤怒〟と〝傲慢〟か。


――ドスッ――


「汚えから退けろ」

「ちぇ〜ッ、ちょっと位分けても良いじゃん」

「蟲を引っ込めろって言ってんだよ」


机に集る蟲を潰しながら黒髪の子供にそう言うと、蟲の群が引っ込む……コイツは〝暴食〟ね。


「それで? 〝七罪〟の悪魔が俺に何の用だ?」


再度問い掛ける、顔を赤くする二人は無視だ無視。


「ん〜……美味い、あぁ君の所に来た目的ね、目的……いやぁ僕の手下の手下殺して悪魔になったでしょ?」

「手下の手下なら問題ねぇだろ」

「そうも行かないんだよね〜……実は僕ら〝冥界〟に封印されててさ〜」

「現世で使える部下が一人でも多く欲しいの♡」

「僕は別にどうでも良いんだけどね〜」


菓子を勝手に取りながら言葉を紡ぐ〝悪魔〟共、あと人の腕に纏わり付くな、俺は抱き枕じゃ無い。


「フンッ、そういう訳だ、お前を我の眷属にしてやろう」

「ざけんな!この餓鬼は俺の玩具にすんだよ!」

「私のよ!」

「うぉ〜……良い抱き枕〜」

「中々良い筋肉してるわね〜♪」

「ねぇねぇ君、僕専属のパティシエにならない?」


口々に騒ぎ立てる悪魔共……はぁ。


「〝黙れ〟」


俺が殺気を込めてそう言うと七人が七人俺から離れる。


「人の心象に入って騒ぎ立てるな下郎共、たかだか七罪如きが俺を〝眷属〟にとは笑わせる」


俺は全員を睥睨する、本当に面白い(不愉快だ)


「封印される様な間抜けに従う気など更々無い、とっとと失せろ」

「「「「「「……」」」」」」

「Zzz……Zzz……」


瞬間6人の魔力が溢れ始める……成る程、封印されては居るが力自体は残ってるのか、成る程、成る程。


「ただの悪魔如きが誰に向かって「前口上とは余裕だな?」――ッ!?」


手前でそう呟く〝暴食〟の顔に拳を減り込ませる。


「下らんな、七罪の悪魔を、強力な悪魔と己を誇示する割に、七人寄り集まってでしか来れない無能が、偉そうに」


――ブンッ――


「〝傲慢の嵐槍〟」

「〝天妬む群蛇〟」


天からは槍が、大地からは蠢く毒蛇が、埋め尽くさんばかりに迫りくる。


「クハッ♪――」


――ブシャアッ――


大地を槍の豪雨が降り注ぐ、下では蛇の群が集り、血飛沫が周囲に降り注いだ。


「フンッ、身の程を思い知ったか」

「私を受け入れて現世へ解き放ちなさ――」


「うん、うん……良いね、面白い……1つ1つが本物の武器、生命……〝召喚術〟を直接の攻撃手段にしたのかな?」



名ばかりの悪魔では無い事は分かった、それじゃあ。


「さぁ、まだまだ余裕だろう、続きだ」


――グチュチュッ―― 


大地の形を変える……心象世界とは言え床も壁も全てが屍だ、当然術は使えるとも。


「実践はコレが初だな……〝百屍(ひゃくかばね)屍人死獣百鬼夜行しびとしじゅうひゃっきやこう〟」


〈屍魂の外法〉を使って分かったが……この死霊術は〝大量召喚〟と言う行為に特化している、死霊を創るに能って、死霊術が直面する難点は、〝質の良い死霊を創るには一体一体に術を使わなければならない〟点だった、範囲で使うと敵味方の区別もつかない低能死霊にしか出来なかったのだが、この進化した死霊術は個別に術を行使するのは勿論、必要な量の死骸を用意したら後は魔力を用いるだけで、一体一体が通常と遜色無い死霊を、均一に創れる、レベルが上がれば消費魔力も下げられ、より強力な召喚を行えると大変素晴らしい術だ。


「〝十屍(とつかばね):夜統べる宵闇の大梟〟」


地を這う蛇を百鬼夜行が、空から見下ろす傲岸不遜な大男を更に上から大梟が……さて。


「〝一屍(いちかばね):語らず謀らずの屍夜叉〟」


迫る2匹の悪魔に俺が丹精込めて創った一匹の死霊を向かわせる。


「クハハッ♪ それじゃあ最後はとっておきだ、千――」


――カチャッ――


「ふんふん、冷めては居るが中々美味いのう♪」


「「「「「「ッ!?」」」」」」

「Zzz……Zzz……ムグゥ……」

「あ、それ俺のだぞ悪神」


俺が次の死霊を出そうとしたその時、背後から暢気な声が響く……それと同時に6人は目を見開き固まる……其処には俺の紅茶を飲みながら菓子を〝怠惰〟に詰め込む〝悪神〟が居た。


「おぉハデス、現世の菓子は美味いな!」

「何で自分で淹れねぇんだよ、人の飲みさしを奪うな阿呆」

「阿呆とは何じゃ、阿呆とは……全く、お前の所に馬鹿共とベルが居たから来てみれば、面白そうな余興をしているでなぁ……搾り滓とは言え〝大罪悪魔〟と善戦するとかどうなってるんじゃ?」

「死なねぇ場所だし、心象世界なら無限に屍出せるからなぁ、そりゃ善戦も出来る」

「十分可笑しいわ」


クツクツと笑う悪神が手を上げる、それを俺は制する。


「俺がやろう……〝招門〟」


悪魔共を囲う様に出来た〝召喚陣〟に魔力を走らせる。


「〝冥府護る巨人ヘルガーディ・ギガント〟、強制退去だ阿呆共」


逃げようとする間もなく、巨人の腕に掴まれて冥府へ引き摺り込まれる悪魔の搾り滓達。


「ホレ、ベルも何時までも此処に居るでない、自分の住処へ帰れ」

「んにゃ?……あ、ボス〜……わ〜かったよ〜、じゃ〜ね〜ハデス君」


悪神に揺すり起こされ目覚めた〝怠惰〟はそう言うとフヨフヨと浮いて召門の中へ入っていった。


「そんで、悪魔の次はお前か……何の用だ?」

「何じゃ?久し振りに顔を見に来たら随分な言い草だの……それより悪神呼びとは随分と他人行事な」

「いや、なら名前位教えろよ」

「………言ってなかったかの?」

「聞いてないな」


俺がそう言うと悪神は暫く目を瞬かせる。


「……取り敢えず、場所でも替えようぞ」


――パチンッ――


悪神が指を鳴らすと途端に風景が変わる……澄み渡る青空、色取り取りの花畑……とても屍の悪魔と悪の神が居るような場所には見えんな。


「悪神の割にエラくファンシーな場所だな?」

「儂とて女ぞ?可愛い物は好きに決まっておろう……コホン、さて、儂の名前じゃったな」


ティーカップを置いてニヤリと笑う悪神。


「儂の名は〝悪神アーリーユ〟、好きに敬うが良い!」

「アーリーユね……んじゃアーリー、早速質問で悪いんだが」


――カチャッ――


「この白いのは誰?」


俺はドヤ顔で胸を張るアーリーユに、いつの間にか俺との間で茶を飲んでいる白い美女に目を向ける。


「ぬぉ!?貴様いつの間に来おった!〝ノア〟!」

「貴方がハデスの心象世界に居たときからですが?アーリーユ……ほお、人間のお菓子と言う物を初めて食べましたが、中々美味ですね」


無表情で感想を述べる白髪の美女ノアはその後もかなりのペースで俺のクッキーを貪っていく……リスかな?


――コトッ――


「ありがとうございます、個体名ハデス、感謝します」

「それはドーモ……大体何となく理解できるが、貴方は?」

「……お答えしましょう、私は〝ノア〟、貴方達が活動している〝世界〟そのものであり、世界の崩壊を防ぐ存在、アーリーユと〝アレ〟の同期と言えば分かりますか?」

「オーケー理解した、それで?その〝世界〟が何で俺の心象世界でリスみたいにクッキー頬張ってるんだ?」


無表情で頬を膨らませるのは面白いので止めて欲しい……お、柔らかい。


「お答えしましょう……ズズッ……貴方と接触したかったのが4割、アーリーユのお気に入りが気になったのが1割、人間のお菓子を食べてみたかったのが5割です」

「欲望塗れだな」

「ノアは馬鹿正直だからのう……あ、これ!儂のクッキーを取るでない!」

「……個体名ハデス、私が〝人間〟と言う種族を滅ぼそうとしているのはご存知で?」

「まぁな」

「簡潔に申しますと、貴方にその手伝いをしてほしいのです」

「良いよ」

「快諾感謝します……私の想定では守護者が最初に召喚された街を滅ぼすと思ったのですが、何故そうしなかったのですか?」

「ん〜……気分?」

「理由をお聞きしても?」

「いやぁ?本当は滅ぼすつもりだったんだぞ? ただなぁ、準備中に横槍は入るわ、お気に入りの喫茶店が出来るわ、そこの娘は面白い色してるわで、そこの娘との取引で彼処は襲わない事になった」

「上から見ておったが中々外道な事をしおったよなぁお主……」

「別に構わんだろ、正道では二度と会えないだけで〝邪道〟ならやりようあるんだから、それに気付くかどうかはリーア次第だ」

「十分外道じゃ、常人が一生を賭けて手を出せるかどうかの道ぞ? 不老不死の身に成ったとは言え何百年掛かるか……そもそもソレに気付けるかが問題じゃろう、お主、わざと誘導しおったじゃろう?」

「クッカッカッ♪さぁなぁ?」


とまぁ、それは置いといてだ。


「今度4都市襲撃するから、準備しねぇとなぁ」

「ん?何じゃ、部下を使えば良いじゃろう、アレに軍を率いさせれば壊滅も容易じゃろうに」

「現有戦力的にもソチラの方が効率的では?」

「あのなぁ、そんな面白味の欠片もない方法なんざ取るわけ無いだろ、それよりも面白く、尚且つ効率的な手法だよ♪」

「うっわぁ、悪い顔じゃ、悪魔じゃ悪魔」

「褒め言葉だな」




――フワッ――


「ん、もう時間か」

「何じゃ、早いのう」

「我々もそろそろ退散の時間ですよ、アーリーユ」


光が集り、俺を包み隠していく。


「今度は別の菓子を食いたいぞ!」

「私も、リクエスト致します」

「菓子屋じゃ無いんだけどな?」


――ブツンッ――


素っ頓狂な事を抜かす二人に呆れながら、俺は意識を途切れさせる。







「どうじゃ?アヤツ中々面白いであろう?」

「えぇ、此度〝要請〟した個体は当たりの様です」

「傾き過ぎたバランスは正さねばのう」

「偏った世界は歪みを生む……〝アレ〟も知っている筈なのですがね」

「無駄じゃろうて、人に崇められて〝傀儡〟に成った奴がマトモな判断を下す訳無かろう……アヤツの眷属共ものう」

「我々の希望は〝彼〟に委ねられた訳ですか」



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聖神がいてそれが思いっきり人間に肩入れしてるのかな?
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