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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第一章:獣の厄災と強欲の魔女
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獣の軍靴と強欲者⑥

『四方のボスモンスターを討伐しました!』


街へ帰還したアーサー達は、物音の無い大通りで、そのアナウンスを聞き、困惑した。


「アレが、討伐された?」

「マジか……誰だ?」

「………」


皆が疑問を口にする中、アーサーは顔を顰める。


「どういうつもりだ……〝ハデス〟」


直感だろうか、彼の脳裏に、忌々しい男の顔が浮かび上がる……同郷の異端者、人類の敵対者の顔を。


「それよりアーサー、取り敢えずの危機は去ったんだしさ、ほら」


斥候が指を指した方では、住民、プレイヤーがワラワラと出て来ていた。


「分かった………」


アーサーは目を瞑り、息を吸い、声を発する。


「我々の勝利だ!!!」


――ウオォォォォォ!!!――


歓声を上げる住民と守護者達……第一イベント、〝飢え狂う魔物の軍靴〟はこうして終わる……。


――ゾォッ――


「『巫山戯るなよ下等生物共ォ?』」


事は無かった。


「グゥッ!?」


凍える様な、冷たい声に濃縮された殺意、ソレを聞き、多くの者が立ち尽くす、辛うじてアーサーは少し動き……空を見上げた。


――其処にソレは居た――


見た目は少年の様な姿で、白い服が目立つ……だが、それ以上に目立つのが、背に生えた蝙蝠の羽と、悪魔の様な尻尾だろう。


「下等生物の分際でよくも僕の計画を邪魔しやがって……しかも僕の駒も殺しやがって……マジで巫山戯んな」


人の間に降り立ち、淡々と無表情に語る男。


「アレを作るのに何年掛けたと思ってんの?どれだけ資材掛けたと思ってるの?コレで漸く階位が上げられると思ってたのにさぁ、ホント、守護者って鬱陶しいよね」


淡々と声を出しながら、静かに語る男……それを聞きながら、アーサーは剣に手を掛けようとした。


「はぁ? そんなカスみたいな魔力で僕を……〝悪魔〟の〝リグラドナ〟が殺られると思ってるわけ? ホント、人間って馬鹿だよねぇ?」


嘲笑たっぷりに、そう嘲る悪魔は、顔を貼り付けたような笑顔で覆い、手を叩く。


「ま、良いや、ちょっと面倒くさいけど僕が殺るかぁ……君達も僕の糧になれるんだから光栄でしょ?」


そう言い、指を鳴らすと……リグラドナの周りに魔法陣が現れ……蟲型の魔物が現れる。


「それじゃ、いただきまーす♪」


その声と共に飛び出した蟲達は、住民達へ飛翔し、その牙を突き立て―――


――ブチュッ――


―――る前に、黒い影の下敷きに成った。


「……は?」

「グエェ……あ、姉貴、ちょっと退いてくれ、流石に身体が痛え」

『うわぁ〜!今の凄いね〜!ねぇねぇセレーネ!もう一回!もう一回やって〜!』

「あん?また今度なまた今度、今はそれより彼奴と合流しねぇと……あ、丁度だな」

「相変わらず無茶苦茶するなぁ、セレーネちゃん」


「私の勝ちですわ!」

「ちょっと!飛ぶのは狡くない!?正々堂々勝負しなよ!」

「ふふ〜ん! 飛べない貴方が悪いのですわ!」


「ベクターさん、皆着いてるよ〜?」

「おぉ、コレは失礼、どうも珍しい野草などを見つけるとついつい寄り道してしまいますな! ホッホッホッ!」


不意に現れた〝7人〟の声……突如現れた乱入者に、人も、蟲も、悪魔も、7人以外の全てが呆然と見ていた。


「………何なの、君等、邪魔しないでくれる?」

「あぁ? 知らねぇよ餓鬼、こちとら今それどころじゃねぇんだよ」


餓鬼……そう言われ、無視された事に、悪魔は苛立ちを浮かべる。


「たかが不死者如きが、この悪魔である僕に逆らうなんてね……フフフッ♪良いよ、良いとも……それじゃあ君達諸共」


――パチンッ――


「僕に食われて死ね!」


次の瞬間、魔法陣から大量の蟲が流れ込む。





「ハイダ〜メ♪」


――ドロォッ――


しかし、その蟲の軍勢は、突如現れた声の主によって、何も出来ずに落ちて行った。


「ッ!ハデスッ!?」

「はいそうです、人類滅ぼす側のハデスです、そういう貴方はアーサー君じゃないか!お久し振り〜……見てたけど」


「次から次に何なんだよ!?」

「あぁん? 其処に居るのは……あぁ、あの雑魚を創った三流悪魔か……ほらアジィ、美味そうな蟲が採れたからたらふく食いな」

「キキャーッ♪」


三流悪魔と呼びながら悪魔を一瞥すると地面に肩の蛇を降ろして向き直る男。


「三流だと……僕の傑作が?」

「ほぉ?あの程度が悪魔の傑作か……存外大した事ないもんだな」


――ギィンッ――


「鈍いなぁオイ運動してんのか?……後」


――俺の獲物だから手ぇ出すなよ?――


「「「「「「ッ! 御意!」」」」」」


四方八方から飛び掛かろうとした不死者を睥睨し、表情を柔らかくして悪魔へ名乗る男。


「じゃあ改めて、俺はハデス……コイツ等の主をしてる悪魔モドキだ♪よろしくな三流悪魔……さて、挨拶も済んだ所でだ」


――ブンッ――

――ガシッ――


「なっ!?」

「やろうか!」


――ドゴンッ――


振るわれた短剣を弾いて頭を掴み、頭から後ろの石畳へ思いっ切り叩き付けるハデス。


「リラグナドかリグドナラか知らんが、たかだか悪魔如きが俺の獲物を横取りしやがってなぁ?」


――ゴスッ――


「ガッ!?」

「そのせいで俺はこの街に手出しできなくなっちまった、なぁどう思うよ、酷くねぇか?」


――ゴスッ――

「グベッ!?」

「折角楽しい襲撃作戦考えてたのに台無しにされたんだぞ?ほ〜んとどうしてくれようか、悪魔の魂1つじゃ釣り合わんよな?」


――ギュンッ――


「死ねェッ!」

「攻撃がワンパターン何だよ餓鬼」


――ボキッ――


短剣を突き刺そうとしたリグドナラの腕をハデスは掴み、圧し折る。


「※※※※!?!?」

「お?何だ、寄生先の身体の損傷は本体に共有されんのか」


その言葉を紡いだ瞬間、リグドナラの身体は膨張し、爆ぜる。


――パァンッ――


「『この僕ガ本気のすがタを見せるなんテ……予想外だっタ――』」

「御託は良いから来いよ」

「『ッ!?』」


上空で態態言葉を垂れ流すリグドナラにハデスはその上から頭を掴み叩き落とす。


「街の守護って言っても建物は範囲外だよなぁ?」


――グシャッ――


地面を跳ねるリグドナラの身体を思いっ切り蹴り飛ばし、1つの家を半壊させるハデス。


「クフフッ♪良いね、ノッてきた」


そう言い、消える様に大地を踏み砕くハデスを、全員が呆然と見ることしか出来なかった。



○●○●○●


「グハッ……舐め――」


――バコンッ――


起き上がろうとした三流悪魔の顔を思いっ切り撃ち抜く、半壊した家を打ち抜き、大きな道を作る三流悪魔。


「ん〜……程良い反発力に再生能力、サンドバッグとして殴り甲斐があるな♪」


転がる悪魔を蹴り上げると、空を舞う。


「クハッ♪凄い爽快感」


身体に魔力を通し跳躍すると、一瞬で十数メートルを突き抜ける、空中で血を吐く悪魔の身体に拳を叩き込む。


――ドゴォッ――

――ブシャアッ――


地面に減り込むソイツに膝を立てて腹に落ちると、地面が更に砕け散る。


――グチュチュッ――


「や、やめ――」

「断る」


腕を変形させて殴り続ける。


――ドスッ――


何度も。


――ドスドスドスッ――


何度も。


――ドスドスドスドスッ――


何度も何度も何度も殴り続ける。


「フゥ……スッキリした」


――ドチュッ――


もはや顔の原型も留めぬ程グチャグチャに成ったそれの、凹んだ胴体から心臓と、魔石を引き抜くハデス。


「いやぁ、久し振りに暴れると楽しいなぁ!」


半ば廃墟と化した住宅達に見向きもせず、立ち上がると。


「いやぁ、暴れ過ぎでしょハデス君」

「ん? お前は……確かセレーネに掴まれてた男と……光の塊?」

『ムキィーッ! 精霊だってのー! こんな可愛い私を下位精霊と一緒にするなー!』

「キキャーッ♪」

「お〜、アジィ、随分肥ったな……美味かったか?」

「キャーッ♪」

『無視すんなー!』


廃墟の影から、若い男と光の塊……精霊の二人に遭遇する。


「取り敢えず自己紹介を、僕はギルネーデ……セレーネちゃんの知り合いだよ、ほらフィリアーナ」

『ふふん! 私はフィリアーナ! 4属性を持った上位精霊よ!』


光が収まり、人型の女がドヤ顔で胸を張る……精霊ねぇ。


「不死者なのに精霊が見えるなんて面白いねぇ、君」

『ッ! そうよ! アンタ何で見えてるの……ヒィッ!?』

「ん? どうしたのフィリアーナ?」

『どうしたってギル!コイツ――へ? アレ?』

「へ〜……人の感情が見えるのか……」

『ヒッ!?……ど、どうなってんのよアンタ!?』

「クハッハッハッ!悪い悪い、ちょっとした悪戯だ、ほらクッキーやるから許せ、アジィも」

『クッキー!?わーい!』

「キキャーッ♪」


ギルネーデの精霊で遊んでいると、ふとギルネーデが俺を見る。


「ん?何だ?」

「ハデス君に聞きたいんだけどさ、君ってぶっちゃけどっち側?」

「……どっち側ぁ?何の事?取り敢えず人間滅ぼせって悪神に言われてるから、人間とは敵対してるけど」

「世界を滅ぼす為に?」

「うんにゃ、■■■■■■……あ〜、成る程、喋っちゃ駄目なのね、りょーかい」

「ふむ……取り敢えず、滅ぼす気は無いって事かな?」

「当たり前だろう?遊び場を壊す訳無いだろ」

「成る程……それなら良いや、いやぁ噂の本人を直接見れて良かったよ♪」


そうケラケラ笑いながらギルネーデ。


――ズパンッ――


「じゃ、僕はもう行くよ、また縁が有れば逢おう」

「オイオイ待て待て、何ナチュラルに人の首撥ねてんだよ、逃がすわけねぇだろ」

「いや〜、僕の友達殺されちゃったし、一応ね?」

「一応で首落とすとかイカれてんのかよ?」

「君に言われたくないなぁ」


少し雑談して、今度こそギルネーデは去っていった。



「……見えなかったなぁ、彼奴」


コレは面白そうなイベントの予感♪……取り敢えず帰るか、用事も済んだし。




●○●○●○


「フィリアーナ、何が見えたんだい?」

『ウッ……嫌な事思い出させないでよギル』


街を出て暫くして……ギルネーデはふと思い出した事を相方に問う。


『彼奴……ハデスだっけ?かなりヤバい奴よ』

「うん、確かにあの戦闘能力と頭は厄介『違うわよ!』」

『彼奴!彼奴の〝色〟が、変だったの、何かグニャグニャしてた』

「へぇ?それはまた」


それはまた、妙ちきりんな。


「〝今回の〟は面白そうだね♪」

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