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30.強化、手がかり、そして不穏な集結

30話目です。


ではどうぞ。



「わっ、可愛い……。私、アトリよ。ファムっていうのよね? よろしく」



 妖精姿のファムを見て、アトリは優しく触れるように指先で撫でて挨拶する。



≪うん。よろしくね、エッチなお姉さん! ……わっ、きゃっ、ふふっ、くすぐったいよ~。見た目だけじゃなくて指の仕草も凄くエッチだね!≫

 


 ファムも遊んでもらえた子供のようにはしゃいで応じている。

 えーっと……ちょっと何を言ってるのかはわかんないです。


 ……アトリには伝えない方がよさそうだ。



「さて――」  

 

 

 これでようやく揃った。

 また再びどこか目的地を定めて、探索に出かけることができる。


 ファムが来たからには、俺の戦闘力は53万になったも同然です。

 ガチャでアトリを当てた時に得た能力値などの分も、ちゃんとステータスに反映されている。


 ふっ。

 ソルア、そしてアトリよ。

 お前たちを倒すのはこの俺だ、それまで他の奴に負けるんじゃないぞ?




[ステータス]


●基礎情報


ジョブ:

①ガチャ師Lv.2

②魔術師Lv.1(New!)



●能力値

Lv.6

HP:24/24→30/30 +6

MP:34/34→44/44 +10


筋力:22→23 +1

耐久:6(装備+5)(【身体硬化】+20)

魔力:6→12 +6

魔法耐久:3→5 +2

器用:10→11 +1

敏捷:12→13 +1 



容量(キャパシティー)34/37(③[●●●●●●]+④[●○○○○○]→41/49)

容量(キャパシティー)39/39(③[●●●●●●]+④[●●●●●○]→50/51)+2



●スキル

【異世界ガチャLv.2】

【身体強化Lv.2】

【MP上昇Lv.2】

【索敵Lv.2】

【時間魔法Lv.1】

【操作魔法Lv.2】

【セカンドジョブ】

【状態異常耐性Lv.10】

【剣術Lv.1】

【身体硬化Lv.1】

【HP自動再生Lv.1】(new!)

【火魔法Lv.1】(new!)


保有Isekai:2297


[ガチャ結果]

●アイテム

下級ポーション×2

下級MPポーション×2

中級ポーション×2

中級MPポーション×2

カジュの実×2

空のスクロール×2

耐久ポーション×1

黒パン×2

薬草×2

筋力ポーション×1

●装備

ただの盾

ただのブーツ

筋力の腕輪

●スキル・ジョブ

【魔力上昇Lv.1】スキル

【戦士】ジョブ


 ホブゴブリンから()った【身体硬化】のおかげで、前衛での戦闘が随分やりやすくなった。 

 

【索敵】とファムとの回避強化、仮にそこを抜けられても【身体硬化】で致命傷を避けられる。


 この2段構えがあるため、【セカンドジョブ】では【戦士】よりも【魔術師】の方を優先。

 ジョブを装備した分だけでMPが+6、そして【火魔法】も習得出来た。


 

 ただやっぱり容量(キャパシティー)がもうほぼ空きがない状態だ。

 またレベルアップかガチャで狙わないと……。



「――ファム。約束通り、MP注入、やっとくか?」



 これから動く前に、ファムのパワーアップを図っておくことに。

 アパートの【宿屋】で全回復して余裕ある今だからこそ、やっておいた方がいいだろう。



≪えっ、いいの!? うん! ボク、ご主人のあれ、凄く気持ちいいから大好きっ!≫



 嬉しそうに俺の人差し指へとしがみついてくる。

 ……だから君、言い方よ。

 そして人の指をだいしゅきホールドしないの、なんか変な気分になっちゃうから。


 アトリのことエッチだエッチだ言ってるけど、ファムも大概――



「? 何かしら、マスター」



 ……いや、普通にアトリの存在の方がドエッチだった。  


 とても恵まれたアトリの体つきもそうだが。

 サキュバスの服って、どこを見ても目のやり場に困るような恰好ですからねぇ。



 

[魔導人形ファム 追加機能の候補一覧]

 

①視覚共有……10MP ※【索敵】から要素獲得 ……取得済み○


②聴覚共有……10MP ※【索敵】から要素獲得 ……取得済み○


③付与魔法……30MP ※【身体強化】+【○○魔法】から要素獲得


④MP上昇 ……10MP ※【MP上昇】から要素獲得


⑤回復魔法……30MP ※【状態異常耐性】+【○○魔法】から要素獲得


異空間室(ディメンションスペース)……100MP ※【時間魔法】+【セカンドジョブ】+【操作魔法】から要素獲得

【セカンドジョブ】と【操作魔法】の要素により【時間】要素を変質……隣接概念【空間】へと変質成功


⑦フェアリーシールド ……50MP ※【身体硬化】+【○○魔法】から要素獲得(new!)


⑧筋力・魔力上昇 ……10MP ※【火魔法】から要素取得(new!)




 おぉっ、新しいのが増えてる。


 俺が注入する魔力によって、ファムは機能を獲得していく。

 だから俺が能力を増やすごとに、ファムもその可能性が広がっていくんだ。



 ①と②は前回取得したことがちゃんと反映されているな、よしよし。



「さて、どうしようかな……」



 ガチャ、そして【魔術師】のジョブ習得によってMPの総量がそこそこ増えてくれた。

 とりあえずコストの低い“④MP上昇”と“⑧筋力・魔力上昇”をとっておくことにする。



≪んんっ~! あっ、んっ、やぁっ、来ちゃうっ、ご主人の、ご主人の熱いのがぁ、ふぁっ――≫



「えっ、ソルア! マスターとファムは何をやってるの!? 凄くいやらしいことやってるように見えるんだけど!」    


「……私にも未だにそう見えます」



 いや違うから。

 本当、ファムの反応が俺を(おとし)めたいのかってくらい過剰なだけだから。



「……ですが、ファムは魔導人形で、ご主人様の魔力により動いています。ですから、いかがわしいことをしている、と見てしまう私たちの方がいやらしいのかもしれません」

  


 それもそれで考えすぎだと思うけど……。

 ……ってかお二人さん?


 そういう会話するなら、もうちょっと聞こえないようにするフリくらいしてくださいな。

 コソコソ話してるように見えて、全然こっちに丸聞こえだからね、うん。



●能力値


MP:24/44→34/54


筋力:23→30


魔力:12→19




 おっ。

 10MP消費で、MPの最大値が10も上がった。

 50に乗ったな、よしよし。

 

 筋力・魔力もともに7ずつ上昇。

 ファムはサポート型というだけあって、間接的だが本当にありがたい効果ばかりだった。


 

「っし、これならもう一つくらい出来そうかな……」



 ガチャで当てた下級のMPポーション、そしてカジュの実を消費する。



=========

●カジュの実 ★1

 異世界でよく食べられている果実。 

 酸味と甘みが程よく合わさっていて、口直しにも使える。

 

 若干のMP回復効果も期待できるため、冒険者もよく好んで食べる。


=========



 皮をむいたらライチの実のような白く透明な見た目だった。

 ……あんまり美味しいとは感じないが、まあこんなもんか。



 MP:54/54



 これでまたMaxになった。

 MPバッテリーも残り40あるし、これも使っちゃおう。



 まず“⑤回復魔法”を獲得。



≪あっ、やっ、りゃっ、りゃめぇっ、また来ちゃうのぉぉ~!≫



 MPバッテリーで、消費した分を回復。

【身体硬化】で要素を獲得した“⑦フェアリーシールド”も思い切ってゲットしてもらう。


 

 うぐっ……やばい、流石にMP50はキツいか……。



≪ごめんなしゃいぃ! 気持ちいいのたくしゃんしたいって言って、ごめんなしゃいぃ!≫



「…………」


「…………」



 ソルアとアトリの視線が痛い。

 けど、悪いことをしているわけじゃない。

 

 今後少しでも生存の可能性を上げるため、ファムには可能な限り強くなってもらう必要があるのだ。



 ……いや、だからファムさん? 


 本当、マジで。

 その舌足らずな感じになるのとか、トロンとした顔になるのもやめてもらえませんか? 



 MPが4となり疲労感が押し寄せてくる中、怠い体に(むち)を打つ。


 残量10となっているMPバッテリーを空にし。

 そしてもう一度下級MPポーションとカジュの実を使って、二人の視線から逃れるように回復したのだった。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「よしっ、じゃあ改めて、午後からも頑張ろう!」


≪うん! ボクも、ご主人のおかげで元気一杯だよ! 皆のために沢山飛んでくるね!≫



 その後何もなかったかのように、パソコン教室を後にした。

 ……ソルアとアトリからのジト目なんてなかった、うん。



「……はぁぁ。――で、どうするの? 目的地は具体的に決まってるわけじゃないんでしょう?」



 アトリも仕方なくといった感じで切り替えてくれた。

 ありがたい……。



「いや。さっきまではそうだったんだが、ちょっと事情が変わった」



 そういうと、ファムが得意げな顔で降りてくる。

 ……ついさっきまで魔力注入に夢中でド忘れしてたくせに。



≪これだよね! えへへっ、ボク、ちゃんと持ち帰ったよ!≫


「? ご主人様、それは?」



 ファムから手渡された物が何か、ソルアは覗きこむようにして尋ねてくる。

 それは、とても小さく折りたたまれたメモ用紙だった。


 四重におられたそれを開くと、丁寧な女性らしい字が書かれている。



『新聞の販売店 【施設】あり 【マナスポット】に関連ありと思われる』


「【マナスポット】……!」  

 

 

 ソルアもこのメモの重要性に気づいたようだ。


【マナスポット】はメールで“一気に大きな成長を遂げることが可能な場所”と表現されていた。

【異世界ゲーム】の運営が推してるかなり重要な場所らしい。 

 この件単体でのメールを送ってくるくらいだしな。 

   


≪“トウコ”お姉さんが持たせてくれたんだ! 『これで恩を返せたとは思ってないから。だからいつでも拠点に来てね、お礼するわ』って≫



 つまり、久代さんと来宮さんのペアが、拠点かどこかで入手した情報を教えてくれたってことだ。

 こうして義理というか恩義を大切にしている相手だと分かって、なんかほっこりする。


 来宮さんはともかく、久代さんって結構クールビューティーっていうか。

 高嶺の花で近寄りがたい人ってイメージがあったからな。



「……ふ~ん。またその“トウコ”って人が出てくるのね。とても綺麗な人で、マスターと一緒の学校に通ってたっていう“トウコ”さんが」



 ……いや、アトリさん、凄い久代さんに食いつくじゃん。


 だから、あっちは大学のミスキャンパス。

 で、俺は大学生Aにもなれないただの陰キャボッチ学生。


 全く住む世界が違うんだから、何もないって。



「フフッ。大丈夫ですよ、アトリ。多分、奪い合うライバルって感じじゃなくて。一緒に頑張りましょうねって感じでしたから」



 ……ソルアさんは何のアドバイスをされてるんでしょうか。

 偶にあるよね、ソルアが何言ってるかわかんないって時。

  


□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□     



「この近くだと、A新聞に、B新聞、あと地元新聞の販売店も確かあったはず」

    


 知っている限りで、だが。

 店舗の前、複数の配達用バイクが置かれているのを目にしたことがある。

  

 その一つは今でも思い出深い。


 完全に忘れていた課題を徹夜で終わらせ、不眠テンションで外をぶらついていた時だ。

 朝早い中オッチャンたちがバイクで配達へと向かう姿は、何とも言えない不思議な気分になった。


 自分は寝ずに迎えた時間を。

 あの人たちは寝て、しかしとても早い時間に目覚めて迎えてるんだろうな、と。



「複数か……どうするの?」 


「うーん。そのどれにも【施設】がある可能性はあるし、全部ハズレの可能性もある」



 これから全部を(しらみ)(つぶ)しでもいいが、とりあえず狙いを定めて行った方がいいだろう。



「久代さん……いや、多分“来宮さん”経由での情報だと思う」



読心術(テレパス)】という圧倒的な情報収集力を持つスキルだ。

【鑑定】もチートっぽいが、今回教えてくれた情報の出どころとしては【読心術】で得たと考えた方が納得がいく。



「まあそこはどっちでもいいけど――二人が拠点としているのは“百均”。で、この二人が行動した過程で知ったとすると……」


「あぁ~。ですね。じゃあえっと、地図は……あっ、これですか」


 

 ソルアが相槌を打って理解を示す。

 そしてリュックから地図を取り出した。


 俺がこっちに引っ越してきた時、つまり入学の時に買ったやつだ。



「“百均”は大体ここ。だから、百均から近い場所から当たった方が確率は高いと思う」



 広げてくれた地図を指先でトントンと叩き、現在地などをわかりやすく教える。

 


「へぇぇ~、そっか。わかったわ」



 これからの行動指針がアトリにもちゃんと伝わったようだ。

     

 

「よしっ。じゃあとりあえず【マナスポット】探し、それに関係するかもしれない【施設】探しってことで行こうか――ファム、頼む」


≪うん! じゃあ飛ぶね、“誘導(ナビゲート)”は任せてっ!≫



 ファムが空を優雅に飛行していく。

 感覚の共有は、ファムからの打診があってからすることにする。

 

 それまでは【索敵】単体で十分だろう。


 

 ゆっくり気軽に散歩気分とまで呑気(のんき)にはいかないだろうが、まあそこまで肩肘張ってビクビクすることもない。


 

 そうしてリラックスと適度な緊張とが上手く混ざった状態で進み始め――



≪んぇ? ――あっ、ご主人ご主人! これ、一回繋いでもらっていい?≫



 ……出鼻をくじかれましたとさ。


 あっれぇぇ~。


 マジックゴブリンにホブゴブリンと、午前にちゃんと頑張ったんだし。

 午後はもうちょっと楽に行かせてよ。

 


≪んっとねぇ、モンスターが集まってる? ように見える。しかも強そうなのが……6体!≫ 



 ファムの言葉を聞き終える前に、視覚を早速接続する。

 ……確かに。



 まだ距離はあるものの、進行方向の先。

 あれは……ガソリンスタンドの近くか? 



 そこに、ゴブリンやゴブリン、そしてゴブリンが集結していたのだった。



 ……いや、ゴブリンばっかりぃぃぃ。


 だがその内の3体は明らかに一般のゴブリンとは違う雰囲気を放っている。

 ……ホブとかマジックゴブリンと同格かな。



「――あっ、でもオークもいるわ」



 ファムが“強そうなの6体”と評した残りの3体。

 それがガチムチのオークだった。

 

 

総合ポイントが20000ポイントに到達しました。

今で30話、大体投稿から1か月ですか……。


日間で1位になったことがない中。

こうして20000ポイントまで行けたことはとても誇らしく、またとても嬉しく思います。


昨日は本当にやらかしで絶望感が凄かったのですが、励まし・労いの感想もいただけて今も頑張れています。


やはりここまで続けられたのは読んでくださり、そして応援してくださる皆さんのおかげです。

私一人では決してモチベーションが続きません。

皆さんが感想やブックマーク・評価・いいねなど形を問わずしてくださるご声援がとても大きな励みとなっております。


本当にありがとうございます。

今後も当作品をよろしくお願いいたします。


また、引き続きブックマークや広告の下にある★★★★★のボタンの方、していただけますと執筆の際のとても大きなモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > ①と②は前回取得したことがちゃんと反映されていな、よしよし。 → ①と②は前回取得したことがちゃんと反映されているな、よしよし。 [一言] > お前たちを倒すのはこの俺だ、それまで…
[良い点] 更新乙い
[良い点] >そしてリュックから地図を取り出した。 やっぱり最後は紙の地図 新聞屋さんに住宅地図無いのかな どこになにがあるかバッチリわかる [一言] >お前たちを倒すのはこの俺だ、それまで他の奴に負…
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