番外編10 シオンくん誕生日記念
シオンくん、誕生日おめでとう!
学校祭。普通の部活は出し物を出せないが、うちの部は特別に許可を取って公演を許可してもらっている。
あと5分で開場、10分もすれば開演だ。
もう準備は終わっているからあとは時間がくるのを待つだけだ。
僕は目をつぶってこの劇のために努力してきたことを思い出していた。
(この場面はもうちょっと真面目な雰囲気出したいからそのつもりで演技して!)
(はい、分かりました)
(ここの場面の曲なんですけど、もっといいの無いですかね?)
(う〜ん、私が探した中じゃこれが一番いいんだけどな)
(でももっとテンポ速い曲の方がいいと思うんですよ)
(なら、もうちょっとだけ探して見るか!)
(スポットライトもっと暗くできない?)
(これ以上暗くすると役者の顔が見えなくなるんですよ)
(なら照明の方法変えよう、今のままじゃ不自然だし)
(じゃあそれっぽくならないか機材いじって実験してみますね)
(ありがとう)
(大道具準備できた?)
(はい、あとはペンキが乾くのを待つだけです!)
(思ってたよりも早く完成したわ、ありがとう)
(いえ、次は小道具作りますね)
(よろしく)
自分たち役者だけではなく、裏方のみんなが支えてくれているということを改めて思い出すことができる。
お客さん、そして誰よりも支えてくれたみんなの期待を裏切らないようにこの劇を最高のものに仕上げなくては。
僕はそう意気込んで初期の位置につく。
もうとっくに開場しており、開演も近い。
「皆さま、本日は国立イシス学院演劇部の公演に足を運んでいただき、ありがとうございます。公演に先立ちましていくつかの……」
前説が始まっている。
もうすぐ、劇は始まるんだ。
今からはシオン=ブルームじゃない、主人公であるキラだ。
ゆっくりと幕が上がるのを見て声を発する。
「私はーー」




