142 月明かりの中で
今、裸のルナが大きなベッドの上で正座している。ラブホのルームナンバー301で。
勇太もルナに脱がされて裸だ。そして首から下は、胸も局部もキスマークと歯形だらけだ。
酔った状態で警官とニアミスしそうになったルナを勇太が避難させるために入った。
けれど酔ったルナは、理性のタガが外れて肉食乙女の本領発揮。
勇太の服をあっという間に脱がせた。勇太はルナという肉食獣に捕食された。
遠慮なしのルナに襲われた勇太は、未知のゾーンに足を踏み入れた。
勇太の方も火が付いて2回戦突入かと思えば、ここで上になっていたルナがパタリと勇太に体を預けた。
そして寝た。もちろん全裸で笑顔だ。
「前世のドラマとかなら未遂で終わるパターンだよな・・」
ここは肉食女子が動かす世界。やることはきっちりやって寝オチするのがスタンダードなのか。
これが異世界パターンのルナなのだ・・。女性がこんな性質だと、本当に思い知った勇太だ。
そして2時間寝てすっきりしたルナだが、きっちりナニをしたか覚えていた。
で、ベッドの上で全裸の正座だ。
「ごめんなさーい、勇太。反省してます」
「いや、チョコにお酒が入ってたのが事故みたいなもんでしょ。仕方ないよ」
「機転をきかせて、警官から避難させてくれたんだよね。なのに、勇太を襲って●ックスしちゃって・・」
てへっと笑うルナ。
可愛いんだけど相変わらず、あからさまなルナである。
「ルナ、酔いはさめたみたいだね」
「ありがとう勇太。あのまま帰ったら、家族にも心配をかけてたよ。特にお父さん」
そのとき勇太のお腹からぐーと、音が鳴った。
ルナには食べられた。だけどその前に、差し入れも食べた、打ち上げでも色々と食べた。
だけど空腹。勇太の燃費が悪い。体ができてきて拍車がかかっている気もする。
「ルナ、ご飯を食べに行こうよ」
2人でラブホを出た。
ラブホを出た直後に巡回中の婦人警官2人とばったり会った。
だけどルナも酔いは覚めたし、堂々としている。そして、歌でも有名人の勇太のことを警官2人は気付いた。
ネットで見たのかルナの顔も知っていて、義務の声かけだけでサヨナラ。
「お楽しみのところ、すみませんでした」
「いえいえ、ご苦労様で~す」
警官、高校生、制服、ラブホ、夜。まだ前世の感覚が残っている勇太はドキドキだったが、何も問題はなかった。
成人年齢は18歳。婚姻は15歳で可能だし、高校在学中に育児休学をする女子がいる世界。
『性』すなわち人口維持につながるもの自体には、やっぱり肯定的なのだ。
◆
「ルナ、この辺にご飯屋ってあるんだっけ」
「あまり歩いたことがない場所だし、分かんないね」
「じゃあ、適当に探そうか」
「うん」
手を繋いだ。ただ歩いた。
「何か食べたいものがある?」
「お腹はすいてきたけど、何がいいかな~」
「じゃあ、最初にたどり着いたお店を覗いてみようか」
「お酒のお店はダメだよ」
「あはは。乱れたルナも可愛かったな~」
「もー、ふふふ」
勇太が空を見上げると満月だった。そして思いついた。
「ルナ、明日は暇って言ってたよね。海の方に行かない?」
「うん。水族館とかある方?」
「ごめん、ただ俺が懐かしいから行きたいだけ。何もない入江の方かな・・」
勇太は、ネットの画像を探し、前世で住んでいた街に似た場所を見つけた。
このルナと、そこに行ってみたくなった。
「ぜひ連れていって欲しい。勇太」
なんだかルナは『かつて勇太が愛したルナ』絡みかもと思った。たまにあるシンクロしない勇太の中の自分との思い出。
だけど、最初のように引け目は感じない。
誰かの代わりではない。きちんと自分に愛情を向けてくれた上で、その場所に連れて行ってくれる。
嫉妬や焦りはない。
大人になって知り合った恋人が、自分が子供の頃に好きだった場所を見せてくれる感覚とでもいうのか。
最近は勇太のそんな部分が心地いい。だから明日は、ぜひ行ってみたい。
「勇太、今日の月には、くっきりウサギが見えてるよね」
「本当だ。こっちでも、同じようにウサギなんだ」
そして勇太は『こっちでも』なんて、またも不思議ワードを言う。
食事をする店は、まだ見つからない。家はあるけど人も歩いていない。
だけど、そのお陰で勇太と手をつないでゆっくり歩ける。
お腹を減らした勇太には悪いけど、もう少し今を楽しみたいルナだった。




