123 ルナVSカオル
新人戦の準決勝。パラ高の敗けは決まったが、戦いは終わっていない。
ルナとカオルの、勇太の嫁対決だ。正確には婚約者だけど、世間では嫁と呼ばれている。
練習試合も含めてカオルが圧勝している。公式戦ではインターハイ予選でルナが完敗。
この時点ではルナだけが勇太の彼女だった。だから、こんなに熱視線は集まらなかった。
今では本人同士も婚約者となったルナとカオルの対決。東京の夜の2人のキスシーンもネットに流れている。
婚約者、嫁同士の対戦は、スポーツ界全体でもめったに見られない。
圧倒的に強いカオルが本気でルナと戦えるのかとか、恋愛脳の女子達の妄想をかきたてている。
「なんか、カオルと私の愛の劇場みたいに言われてるよ・・」
「ははは。ルナ、ここが因縁の嫁対決の決戦場だってよ」
「無茶でしょ。けど食い下がれるように頑張るよ」
「だな。畳の上ではガチだな」
「こら、私語は慎むように」。審判から注意を受けた。早くも両者に注意1回だ。
が・・
ルナは、ちょっと卑怯な手を思い付いた。まあ、カオルのムードもインターハイに比べると緩い大会だからだ。
「愛してるよ、カオル」
「ほえ?」
「始め!」
試合開始と同時。ルナはレスリングのタックルのように、低い体勢で飛び込んだ。
そして、愛のささやきに気を取られたカオルの両足をつかんだ。
奇襲技の、もろ手刈りだ。
「そりゃああ」
「うわわっ、ずりい!」
「よっしゃルナ!」
ばた~ん、とカオルが後ろに倒れてしまった。
「技あり!」
「ルナ部長、惜しいっす」
「追撃敢行」
すかさず寝技に行こうとしたルナだが、カオルが亀になって防戦。惜しくもルナは最大のチャンスを逃した。
「やりやがったな~。真面目なルナがこんな手を使うとはな~」
「へへへ、残念。カオルにだけ通用する、私だけの必殺技だったのにな~」
「・・・違げえねえ。破壊力あったぞ」
「ふふ、でしょ」
「もう食らわねえぞ」
「ざ~んね~ん」
「こら、両者警告!」。審判に怒られた。有効扱いとなる。あと1回で技ありと同等となる。
カオスな技巧の連続でカオルが追い詰められた。
ちょっと顔を赤くしたカオルと笑うルナ。開始20秒から仕切り直し。
ルナはポイントでリードしたが、カオル相手に4分半も逃げ回れるとは思っていない。最初に反則技を使ったからには、あとは正攻法でいく。
開始4分。
カオルの反撃で有効2つと、技あり1つ。ポイントではカオルが逆転した。
カオルは感心している。進学校で練習漬けでないルナが、意外に受けが強くなっている。
フィジカルが格段に強くなった勇太を相手に練習している効果かと分析している。倒したあとも対処が速く、寝技に持ち込ませてくれない。
なので、奇襲の仕返しを考えている。
ルナが背負い投げを仕掛けたところを潰して、寝技に持ち込もうとした。
と、見せかけて、ルナが丸くなる前に左腕をルナの左脇に突っ込んでひっくり返した。
右手で襟を取って、インターハイ団体戦と同じく絞め技の体勢に入った。
ただ、今回は強く絞めてない。
「おい、ルナ」
「・・分かってる」
カオルの温情だ。もうルナに逃れる術はないし、どうにもならない。ルナがカオルの柔道着をぱんぱんとたたいて、参ったの合図。
試合終了。
試合が終われば仲良しな茶薔薇柔道部とパラ高柔道部。
対戦した同士が、反省会とアドバイスをしている。
「やっぱりカオルは強かったな」
「勇太、ざんね~ん。カオルから金星取れるかと思ったのに~」
「アタイもまさか、ルナがあんな手で来ると思わなんだ」
「どんな手?」
「教えられな~い」
「だな。アタイも、あんな手に引っ掛かったなんて言いたくねえ」
「ふふふ」
「くくく」
2人の秘密だ。
勇太は、カオルとルナが試合をやって通じ合うものがあったっぽいから、いいやと思っている。
「勇太君、あの返し技はすごかったね」
「ツバキ部長もすごい寝技の技術だったよね。完敗」
「あ、あんな技術でよければ、いくらでも教える。いつでもわが校に来てくれ」
「寝技特訓、ぜひお願いね」
『寝てやる技の特訓』。モロに誤解したギャラリーから、山田ツバキ部長へのヘイトが集まっている。
決勝も茶薔薇学園が全勝で勝って、団体戦は幕を閉じた。
明日は個人戦。現在68キロの勇太は、69キロ級で出場する。




