52話 極限。
52話 極限。
ニャルの言葉など無視して、むりやり息を整えた砦は、またナイフを構えた。
「おいおい、砦さん。なんだよ、その、『来るなら、何度でもやってやるぞ』的な顔は……」
「何度でも……やってやるさ……トコを守るために……それしかないというのなら!」
「なんか、もう、怖くなってきたんですけど。ほんと、ホラーだよ、ホラー。コズミックがつかない、ただのキモいホラー」
「死んでも……守ると誓った……」
全てがかすれて滲んでいる、そんな砦の、
「だから、俺は……まだ終わらない」
下らない宣言を聞いて、ニャルは表情を歪ませた。
「流石に、イライラしてきたな」
不快気に右手を天に掲げ、指をパチンとならし、
「イビルノイズ・カンファレンスコール」
そう宣言すると、ニャルの頭上に、
淡く光る、ピンポン球サイズの真っ黒な光球が無数に出現した。
「せめて芸術的に殺してあげようと思ったけど、やめた。HPが1残っているだけの君を殺すのに大技なんかいらない。ミリ削りのバルカンでヌルっと殺してあげる」
「……」
「なに、その顔。まさか、全部を避けてやろう・弾いてやろうとか考えている? もう、ほんと、君、異常だよ。流石に、諦めようよ。仮に、この全てを防げたからって何なのって話じゃん。言っておくけど、コズミックホラーエッセンスは、まだ残っている。余裕で20分くらいは持つんだよ?」
「20分後には……尽きるのか……?」
「えぇ……そこに希望を感じちゃうの? まさか、ここから20分も耐える気? うそでしょ? これは、もはや、勇気があるとか度胸があるとかじゃなく、ただただ発狂しちゃっているだけだねぇ。もう、ほんとキモいから、死んでよ」
そう言うと、ニャルは、無数の黒球を砦に向けて放った。
襲いかかってくる無数の魔光球。
そのコアを見極めようと頭を超速回転させた砦。
(多すぎる。見えない。流石に。無理。関係ねぇ。無理かどうか。どうでもいい)
超高速で回転する頭。
鼻血が溢れた。
ギュギュっと時間が圧縮される。
(六手足りない)
時空を演算しきって捻出した解答。
――詰み。
(いやだ。守れない。ダメだ。無理。詰み。どうして。なんで。守る。どうやって。チェック。不可能。六手。削る。何を。詰み。どこを。無理。何も――)
どれだけ検算しても、終焉以外の解答に辿り着かない。
(守れない。いやだ。守る。絶対。どうやって。不可能――いやだ!!)
無限にも思える拒絶が重なっては弾けて溶ける。
そんな砦の目の前に、
――猛毒の龍化外骨格を纏った彼女は飛んできて、
「この空間を守れ、ジェネラル・ドリームオーラ/クラスAAA!!」
飛来してくる無数の光球は、薬宮が生成した防御障壁に衝突しては掻き消えていく。
アウターゴッドの魔法とはいえ、ひとつひとつの火力が低い黒球ではクラスAAAのドリームオーラを突き破る事は出来なかった。
爆裂音が収まり、場が静まり返った直後、ニャルは口を開いた。
「薬宮トコ……君って確か、変身できなかったよね……」
そこで、ニャルは、視線を、紅院たちの方に向ける。
まったく魔力を感じなくなっている彼女達を確認すると、ニタっと笑い、
「へぇ、携帯ドラゴンを五体融合させたのか……コアフレームを、最強個体である茶柱罪華ではなく、君が担った理由は……君のワガママ以外になさそうだね。ははは、彼女達、よく承諾したねぇ。ボクの前で無防備になる怖さとかは無かったのかな?」
「あんたが相手やったら、携帯ドラゴンがおろうがおるまいが、あんまり関係ないやろ」




