【PHASE1-1】地底から来たゲーム戦士
――――これは、VRと現実の2つのステージで織り成す最先端型ゲームストーリー【GAMEWORLD ONLINE】シリーズの新たな物語。
現実世界に隠されたVRフィールドのゲームを舞台に、幻の秘宝を探し求める四人の勇士の物語。
そして冒険の先に待つ真の“正義”や“自由”とは何か。本気と冗談が混じり合った壮大な物語。
そんな物語の三人称語り部を担当します、額縁メガネと真っ赤なスーツ、ゲーミングヘッドホンがトレードマークのMr.Fが読者の皆様を退屈させない口八丁語りで盛り上げて参ります!!
―――梅に鶯、ステーキにポテト。そしてゲームチェイサーにMr.F! 張り切って参りましょう!! オープン・ザ・ゲート!!! (Gの兄さん、私頑張りますよ〜!)
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
――――『超次元ゲーム時代』。
ゲームがこの世の全てを変える、遠からずも近い未来なのかもしれない時代。
世界政府に所属する科学者がたった一人だけで創り上げた地球規模の電脳仮想空間『ゲームワールドオンライン』の誕生が、このゲームが中心となった時代の始まりとなった。
それ以来IT社会や情報技術は急速な成長を遂げ、インターネットやコンピュータの発展から、今や日常において現実と電脳の世界が完全に重なり合った生活を人々は送っていた。
最先端技術は日々進歩を続け、『ゲームワールドオンライン』がある理由で一年間の閉鎖となった現在に至るまでも、また新たなゲームの発足が人々の活気を促そうとしていた。
―――超次元ゲーム西暦・0050年の頃であった。
〘◇Now Lording◇〙
そんな超次元ゲーム時代に、ゲームセンターの数は都内に幾多も存在するコンビニのように数多く設置されている。全国のプレイヤーと対戦出来るオンラインアーケードゲームで毎月のようにランキングやランクバトル制度に賞金報酬をかける事すら当たり前な時代に、皆1クレジットの100円片手に挑まぬ筈がない。
現に店内にてそのゲームに熱中する男女の高校生コンビもその一組だ。
「出たよ剣くん! ネノン虫だよ!!」
「っしゃ、待ってろオパオパのお父ちゃん今助けたる!!」
プレイしているゲームは往年の名作『ファンタジー◯ーン』。オパオパと呼ばれる上下左右自由に操作出来る自機を巧みに操作する剣は、オパオパのお父さんオパパに寄生されたネノン虫に孤軍奮闘。しかし……
「嫌ァァァ伸びてる!!」
「アカンアカンアカン怖い怖い怖い怖い!!!」
「「あっ……」」
ネノン虫の執拗かつ素早く伸びる攻撃に混乱。制覇まであと一歩及ばず、甲高いビット音と共に敢え無くゲームオーバー。
「あっちゃ〜、惜しかったね剣くん」
「しゃーないよ結構ムズかったし。制覇した人はどんな奴なんかな」
ゲーム終了時に見れるスコアランキングで真上の一位を確認する二人。そこにはダントツで550万点獲得したプレイヤーの名が。
「『HAT』……ハト、鳩??」
「『Hat』だから“帽子”って意味じゃないかな」
「じゃゲーセンで帽子被ってゲームしてるんか? 頭蒸れて将来ハゲるぞ」
「いや流石に取ってるでしょそこは……」
と冗談を言いながらも凄腕である事に尊敬しつつ精進しようと思う両者。
……その後ろのテーブルで、キャップを目元まで隠し仮寝していた一人の青年が、剣達のプレイを遠目でチラッと見るなり含み笑い。そして彼はそのままテーブルを後にし退店していくが剣らは気付きもしない。
話題になった『HAT』というプレイヤー、何を隠そう先程のキャップの青年が張本人な―――
「いや、『HAT』じゃなくて俺『HEAT』にしたかったの本当は!」
あ、そうだったんですか?
「レトロゲーは三文字しか名前打てないからな。確かに俺帽子被ってるけどこれキャップだし! ハゲるだとか言いやがって失礼しちゃうな若いの!」
まぁまぁお気になさらず。ところで貴方がこの作品の主人公の一人、焔陽唯斗さんでしょう?
「あぁ、別名『灼熱のヒート』さ。まさかアーケードゲームでトップを掻っ攫ってる“HAT”が、地上に忌み嫌われてる地底空間出身のゲーム戦士だとは、誰も思わないだろうな!」
黒と赤をベースにしたキャップを被り、黒のジャンパーに真っ赤なカラーシャツを見せる青年ヒート。
この飄々とした陽気な三枚目が、ゲームに敗北した者の成れ果ての地である地底空間・アンダーグラウンド出身だという。
「今度レトロゲーやる時“CAP”って名前付けようかな。ファンが混乱しちゃう」
勝手にして下さい。
〘◇Now Lording◇〙
――アンダーグラウンドに追放された者は、敗北者のレッテルを貼られるだけでなく二度と地上に這い上がる事は許されないとされていた。
だが近年、超次元ゲーム時代の管理組織機関【WGC】は、厳重な規則の中に地底空間在住の者への地上帰還について特例でその制限が緩和した。
条件として『満18歳以上』『ゲーム戦士として見込みがあるもの』『地上において税金を支払える保証がある者』等など。それをパスした者だけが地上のお天道様を拝める事になった。ヒートもその一人。
いやヒートみたいなプロゲーマーな者だけではない。フルカウルバイクでカッ飛ばしレースに参加する者、ファッションモデルとして渡り歩く者、プレミアゲームを集めて商売する者も。日本各地に地底空間出身のゲーム戦士が再び名誉を取り戻すべく戦い、非情な世を一生懸命生き抜いているのだ。
「……おっとそうだ。今日は大事な用事があったんだっけ」
と、ヒートがジーパンのポケットから取り出した大容量携帯機器『プレイギア』を取り出して、メモのアプリを開く。二重もロックしていたメモに書かれていたのは、
《ヒート、ハリアー、アリス、ツッチーへ。
二十歳になる年の11月11日の夜に、
地底空間・イーストTKエリア18の喫茶点
【パラケルスス】へ集合する事。
そこで君達の大事なものを授けます。―麻空丈一―》
「今日がその11日だ。ジョーカーのおじちゃん、一体何くれるのかな〜?」
ヒートにとって“ジョーカー”のあだ名で通る丈一は気の良いおじさんとして通っていた。誕生日でも無いのにこうして自分も含めた四人にプレゼントする所までは無かったものの、今日に至るまで大事に保管したメモが役立つ時が来た。
「もっと地上で遊んでたいけどしゃーない。地底に戻るとすっか!」
〘◇Now Lording◇〙
――さて地底空間と聞いて、皆さんはどうやってヒートが地上から上がっていくのか不思議に思いませんか?
地底空間とは日本列島の隅々まで張り巡らされた裏の世界。その各地の目立たない場所、或いは意外な所から出入りする為の秘密の通路があるのです。
例えば、先程ヒートが居た大阪の場合は、梅田の大型電器店の地下2階にある関係者専用区域に、地底空間に入る為のゲートが存在する。
……噂をすれば何とやら。そのヒートが地下2階に現れ、関係者専用区域へと近づいていく。
「よぉ、おっちゃん!」
関係者以外立入禁止の個室には、貧弱な身体のおじさんがポツンと立っているだけ。何を隠そうこのお方、地底空間の入り口を守衛する門番なのだ。
ヒートはおじさんに対し、証明書として真っ黒なパスポートを提示した途端に、おじさんの睨んだ顔から一気に笑顔に崩れた。
「……おやおや、誰かと思えばヒートのぼっちゃんじゃないですか! もうお帰りで?」
「ぼっちゃんは止めろつったろ、俺もう二十歳だぜ。もうちょっと遊びたかったけど野暮用でな」
何やら門番とヒートは親しい関係のようで。根暗なイメージから転じて親戚のおじさんと化していた。
「それで何処に行きなさるんで?」
「えーと“イーストTKエリア18”だったかな」
「随分長い道のりですなぁ! 地上で例えるならこの大阪から東京へ行くくらい遠いですぞ!」
「でも地上と違って地底にゃワープゾーンがある。そんな疲れる旅でも無いさ」
さり気なく近未来なシステムが飛び交っていましたが……。地上の進化し続ける文化とて転送移動までは出来ない世の常を翻し、地底空間が各地にて軽々と目的地へ転送出来る『ワープゾーン』なるものが出来ていた。
所謂社会不適合者達が集う地底に、地上よりも発展した技術があるというこの矛盾もちょっとした皮肉になる。
「それもそうですな! それじゃ気を付けていってらっしゃいませ」
と、おじさんが何やらリモコンでスイッチを押した途端、個室の床からスーッと出てきた隠し階段。これが地底空間・アンダーグラウンドへの入り口の一つ、ヒートは乗り気に地底の階段を降りていくのだった。
慣れ親しんだ故郷でも、地上よりは若干退屈な地底空間・アンダーグラウンド。
そのメッセージの元に地底の喫茶店に集結するヒートを含めた四人の若き勇士。
―――彼らの集結が、地底空間の未来を大きく変える重大な決意を固める事を、まだ誰も知る由がなかった……!!
〘◇To be continued...◇〙




