第13話「旅の終わりに」【Cパート おみやげ】
【3】
「それで、修学旅行は楽しんできたのかい、お二人さん?」
「ええ、もっちろん! ホテルの一緒のお部屋で寝てぇ、笠本くんのお父さんに挨拶したから、気分は新婚ハネムーンだったわぁ!」
「うわぁ、最近の若者は大胆でありますね……!」
「おい銀川! 富永さんが変な勘違いしちゃったじゃないか! 親父に挨拶ったって本当に『こんにちは』って挨拶しただけだろ!!」
修学旅行の代休日の昼下がりに、裕太とエリィは大田原たちのいる警察署に遊びに来ていた。
うっとり顔で妄想を膨らませていたエリィは、裕太に激しく否定されたことで一瞬頬を膨らませたが、すぐに持ってきた大きな袋に笑顔で手を突っ込んだ。
「えっとぉ。これが富永さんへのエルフィスキーホルダー」
「ありがとうであります!」
「それからぁ、大田原さんにはコロニー模様の湯呑み」
「おう、ありがてぇ」
「そして、照瀬さんには満月ぬいぐるみ!」
「……なんで俺だけぬいぐるみ?」
まん丸の満月をかたどったボール状の柔らかなぬいぐるみを、エリィから手渡された照瀬は渋い顔で一応の礼を言う。
「だってぇ、照瀬さんの好みってわからなかったんだもの。入浴剤とかのほうが良かった?」
「い、いや……笠元の小僧みたく食い物で良かったんだが」
頭を掻きながら、裕太が買ってきた三日月クッキーの盛られた皿に手を伸ばし、口に運んでパリッと心地よい音を鳴らした。
裕太も同じように自分の買ってきた土産菓子を手づかみで食べる。
「だから言っただろ銀川。土産に迷うなら菓子類にしとけって」
「けどぉ、せっかくのお土産なんだから食べておしまいの食べ物類より、実用的な方が良いかなーって思ったんだもの」
「言いたいことはわかるけどよ……ん? うわっ!?」
ふと裕太が部屋の出入り口を見ると、恨みがましそうな目でガラス窓にへばりつく、警察署のメカニックであるトマスの姿があった。
慌てて富永が「いけない、鍵締めてたであります!」と言いながら扉の方へ歩き、カチャリと鍵を開けた。
「ひどいですよ。僕を除け者にしてお菓子食べなくてもいいじゃないですか! 僕がこういうお菓子好きなの、照瀬さん知ってるでしょう!」
「知らせ忘れたのは悪かったって言ってるだろう」
そう言いつつバリバリと三日月クッキーを貪るトマス。
呆れ顔でその様子を見る照瀬の横で大田原がスッと立ち上がり、トマスの肩を軽く叩く。
「それにしてもトマス。お前、菓子を貪り食うために来たんじゃねぇだろ?」
「もめももむまむめむま」
「……飲み込んでから喋れ」
「んがぐっぐ……。ふぅ、美味しかった。それでですね、裕太くんに色々と話したいことがありまして。皆さん格納庫へ来てもらえますか?」
───Dパートへ続く




