第12話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:後編」【Hパート 夕暮れの決着】
【6】
しかし、一時も休息を許さないかのようにレーダーに敵機反応が表示される。
『〈ザウル〉が来るぞ、裕太!!』
「しまった忘れてた! あいつまだ生きてるんだった!」
空中で姿勢を調整しようにもバーニアの燃料が切れている以上細かく動くことはできない。
それを知っているかのように〈ザウル〉はビーム発射口を内する口のような頭部パーツをガパっと開きながらこちらの落下速度に合わせエネルギーを充填していく。
「くっ……!」
今にも〈ザウル〉がビームを吐こうとしたその時、1機のガンドローンがジェイカイザーの目の前に飛来し、〈ザウル〉の口内を撃ち抜いた。
発射しようとしたエネルギーが暴発をしたのか爆発を起こし、〈ザウル〉はその巨体を後方にのけぞらせる。
そして上方から、進次郎の〈エルフィスMk-Ⅱ〉が腕を伸ばしながらバーニアを吹かせ近づいてきていた。
「裕太ーーーっ!!」
「進次郎! トドメは任せた!」
裕太はペダルを加減しながら踏み、ジェイカイザーの足に格納されていたビームセイバーを進次郎機に向けて射出した。
進次郎は裕太がやろうとしていることを察したのか、ジェイカイザーの腕を掴もうとしていた〈エルフィスMk-Ⅱ〉の手をビームセイバーの柄に合わせ、そのまま握らせる。
そのまま空中で一回転しながらビームセイバーのスイッチを起動した〈エルフィスMk-Ⅱ〉は真一文字に〈ザウル〉の巨大な全身を頭部から縦に真っ二つにするように斬りつける。
空中で両断された〈ザウル〉はそのまま左右に分かれ、断面から大きな爆発を起こしバラバラに破片を落とした。
やがてサツキの説得を受けたのか、落下しながらその残骸は消滅する。
そして辺りには、キラキラと金色に光る粒子だけが残り、輝いた。
「フッハハハ! 見たか裕太、僕の手柄だ!」
『いかんっ! 海に落ちる!!』
「進次郎ーーーっ! 笑ってないで助けてくれー!!」
真下に広がる太平洋の海面が徐々に近づいていることに、今更裕太たちは気づいた。
進次郎は咄嗟のことで操作を誤ったのか、〈エルフィスMk-Ⅱ〉のバーニアを吹かせて落下速度を下げてしまい、ジェイカイザーから離れていく。
このままこの速度で落下すれば、せっかく助かったのに海底に沈んでしまう。
バーニアが吹かせない中で水没したあとのことなど、考えなくても地獄だとわかっている。
半ば諦めかけたその時、裕太の耳に救いの声が聞こえてきた。
「笠本くーーーん!!」
ふと声につられて見上げると、エリィの乗った〈ザンク・スナイパーカスタム〉がバーニアを全開にしてジェイカイザーの方へと向かってきていた。
そしてそのままジェイカイザーの腕を掴み、今度は下方向へとバーニアを噴射する。
「止まってぇぇぇ!!」
「銀川、お前……!!」
「もう嫌よ! あたしの届かないところで笠本くんが危険な目に遭うなんて!! あたしにできることがあるなら!! 笠本くんを助けられるのなら!!」
徐々に落ちていく落下速度、徐々に近づく海面。
裕太は操縦レバーから手を離し、ただただエリィを信じて祈ることしかできなかった。
そして、穏やかな海面に巨大な水柱が昇った。
───Iパートへ続く




