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第12話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:後編」【Aパート 出撃準備】

 【1】


「パパ、何があったの?」


 艦橋ブリッジに飛び込んだレーナが開口一番そう尋ねると、艦長席に座ったナニガンが椅子の正面にある巨大なモニターを指で操作し、裕太たちに見えるように映像を表示させた。

 進次郎はレーナの隣から画面を覗き込み、その後ろから裕太たちは天井から下がった別のモニターに表示されている同様の映像を見上げている。


「何だこれは、キャリーフレームが船を襲っているのか?」

「襲われているのは民間の輸送船。キャリーフレームの方は周囲に母艦が無いことと、規律のあるような動きが見られないことから恐らく──」

「──亡霊、か。どわっ!?」


 裕太がカッコつけて低い声で言うと、レーナが突然踵を返して裕太の腕を掴み艦橋ブリッジの外へと引っ張ろうとしていた。


「おいちょっと待て! 俺をどこに連れて行く気だ!」

「決まってるでしょ、格納庫よ。出撃するわよ」

「あの輸送船を助けろっていうのか?」

「ええ、そうよ。放っておいたらあの船、沈められちゃうもの」


 映像の中でビームを受け小さな爆発を起こす輸送船。

 そんなことはお構いなしといったふうに攻撃を続けるキャリーフレーム。

 輸送船のあの大きさなら、恐らく20人以上は乗っているだろう。

 大勢の命が目の前で危険にさらされているという事実に、裕太はジッとしてはいられないだろう。

 そして想像通りに、裕太は勝手に身体が動くような衝動に駆られたように廊下に向かって走り出した。

 後を追おうとするレーナの背中に、進次郎は心配して声をかける。


「裕太とレーナちゃん、大丈夫なのか?」

「ええ進次郎さま、わたしはすっごく強いんだから心配はいらないよ! じゃあ後でね!」


 自信満々にそう言って、裕太とともに艦橋ブリッジを後にするレーナ。

 進次郎は隣に立つサツキにも声をかけようとして、言葉に詰まる。

 艦長席のモニターを食い入るように見つめるサツキは、どこか恐ろしい事実を知ったかのような青白い顔をしていた。



 ※ ※ ※



「41点、早く乗りなさいよ」

「だから点数で呼ぶなって……、ゼェ……ゼェ……」


 カッコつけて飛び出したはいいが艦橋ブリッジから格納庫までの距離が長く、全力で走ったことで息を切らせる裕太。

 格納庫の脇にある更衣室に入り、呼吸を整えながら服を脱ぎ捨て、パイロット用の宇宙服へと手早く着替える。

 私服のまま乗っても慣性制御システムのおかげで操縦自体は特に問題はない。

 しかし、攻撃を受けてコックピットに穴でも開いたら、空気漏れの末にお陀仏が確定である。

 なので、急いでいるときでも宇宙戦の前に宇宙服の着用は必要不可欠だ。

 もっとも、宇宙服を着るのにたいした手間は必要なく、薄着になった状態でブカブカの宇宙服に身体を突っ込み袖を通した後、股の下まで伸びるファスナーを締めてスイッチを入れれば、宇宙服が縮んでいき自動的に身体にフィットする構造となっている。

 背中側についている宇宙服のバックパックには、人間が宇宙空間に放置されても数週間は生きながらえる生命維持装置が備え付けられており、万が一の事態でも安心だ。


 宇宙服に着替え終えた裕太は、同じく宇宙服に身を包んだレーナと共に格納庫へと足を踏み入れる。

 そこには傷ついた装甲が修復され、見違えるようにピカピカになったジェイカイザーの本体が立っていた。

 その脇でえばるように腕を組んでいるヒンジーが裕太に向けてサムズアップを送る。


「へへっ、どうだ坊主。ピカピカにしてやったぞ。それにしてもとんでもねえロートル機で戦ってきたんだな」

「……好きで選んだ機体じゃないからな」

「事情は知らんが、守りが薄そうだったからな。選別代わりに最新式のビームシールドをつけてやったからよ、死ぬんじゃねえぞ!」

「……ああ、ありがとな!」


 ヒンジーの激励を背中に受けた裕太はヒンジーとハイタッチをし、ジェイカイザーのコックピットへと飛び乗りパイロットシートに腰掛けた。

 そして両手で操縦レバーを手で握り神経接続を果たし、コンソールを操作してコックピットハッチを閉じる。

 と同時にカタパルトが自動的に動き出し、レーナの乗る〈ブランクエルフィス〉の後ろに続くようにしてジェイカイザーがカタパルトデッキへと運ばれていく。

 その間、裕太はコンソールを操作しビームシールドの詳細情報を参照していた。




    ───Bパートへ続く

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