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第11話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:前編」【Gパート 人食い鬼か亡霊か】

 コホン、とひとつ咳払いをして頭を掻きながら申し訳なさそうな顔をするヒンジー。


「……怖がらせてすまんかったの。じゃが、その亡霊によって俺達だけじゃなく他の宇宙海賊、果ては民間のシャトルやロケットまで大勢被害が出ている」

「それは恐ろしい話ですね」

「ヒンジーの爺さん。それって地球に出るグールに似ていると思うんだ」

人食い鬼(グール)だって?」


 いつの間にかジェイカイザーの装甲によじ登っていたヒンジーが振り返って驚く。


「ああ、俺たちも何度かやりあったんだ。何もないところに突然現れて、さんざん暴れたのを抑えたらパイロットがいなくなるって……」

「それで人食い鬼(グール)か。地球人の発想力は面白おかしいな。亡霊にパイロットなぞ最初からおらん。落としても落としても暗闇の虚空から湧いてくるんだ」

「ふーむ……」

「それにしても小僧の機体、装甲がボロボロじゃないか。派手にドンパチやらかしたのか?」

「……まあそんなところです」


 裕太は視線をそらし苦笑いして答えた。

 実際のところは隣にいるジュンナが襲ってきた跡なのであるが、下手に危険人物と思われるのも問題だと考えての判断である。

 幸いジュンナも余計なことを言わず空気を読んで黙ってくれているのでホッと胸をなでおろす。


「ま、せっかくのお客さんだ。綺麗スッパリ修理してやるから安心しろや坊主ども。……おっ、レーナじゃねえか」

「あら、お姫様と41点じゃない」


 失礼なあだ名を呼びながら進次郎とサツキをつれたレーナが裕太たちに手を振って駆け寄ってきた。

 進次郎は相変わらずデレデレした顔をしているが、反面サツキはぷくっと頬を膨らませた不満げな顔つきをしていた。


「人を点数で呼ぶな点数で」

「いいじゃない41点。それよりさ、お姫様ってキャリーフレーム好きなんでしょ? 大半修理に出してるけど見ていかない?」


 キャリーフレームと聞いてか、エリィの耳がピクピクっと反応した。

 そのままエリィはレーナに引っ張られるようにして格納庫の奥の方へと走っていく。


「おい進次郎。俺たちも向こうに行くぞ」

「裕太、モテ期って本当にあるんだな! 僕は都市伝説かと思っていたぞ!」

「あーはいはい、よかったね。金海さん、進次郎を……ってすげー顔」

「進次郎さんったら女の子にくっつかれてデレデレしちゃってるんですよ! むー! なんだかよくわからないんですけどとても怒りたい気分なんです!」


 それは多分嫉妬だろう、と裕太は言いたかったが普段温厚なサツキ怒っている今、何が起こるかわからないのであえて黙っておき、エリィたちの向かった方へとジュンナをつれて走った。


「キャ~! これって新型の〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉よねぇ! それからこっちは〈ザンク・スナイパーカスタム〉! で、こっちは……エルフィスのカスタム機かしら?」


 格納庫の一番奥に格納されている黒い塗装のエルフィスを見上げながら首をかしげるエリィ。

 裕太も遠目でその機体を見るに、ベースはエルフィス系列のようだが所々に改修が行われているようで、特にカメラアイがエルフィスタイプのスタンダードである2つ目(デュアルアイ)タイプではなく、1つ目(モノアイ)タイプであった。

 しかも背部にはX字に伸びる謎めいたパーツがバックパックとして装備されている。

 口をぽかんと開けて機体を見上げるエリィの横に立ったレーナは、手すりにもたれかかりながらドヤッとした顔で説明を始めた。


「ふっふーん! なにせこの子、わたしの愛機〈ブランクエルフィス〉だもーん!」

「愛機……って、あなたキャリーフレーム乗りだったの!?」

「あれ、言ってなかったっけ? この艦一番のエースパイロットなの、わたし」


 フフンと得意気に鼻を鳴らすレーナに呆気にとられる裕太たち。

 てっきりレーナは艦橋ブリッジのオペレーター要員で、廊下ですれ違った男たちの誰かがパイロットだと思いこんでいた。

 人は見かけによらないものだと裕太が思っていると、戻ってきたレーナが「次の場所に案内するわ」と言い、進次郎の腕を抱き寄せながら廊下の方へと駆けていく。

 裕太は「元気なやつだなあ」と側に立っていた円柱状の柱に寄り掛かろうとして、それが柱でないことに気づき慌てて飛び退いた。


「おい小僧、気をつけろよ。そン中にゃ核弾頭が入ってんだからよ」

「ああ、すまん。核がねぇ……って核ぅ!?」

「宇宙海賊はアトミックキャノンねえとやってられねえからな」


 唐突に出てきた核兵器に戸惑いを隠せず、裕太が説明を要求すると、ヒンジーは手のひらでアトミックキャノンを叩きながら「小僧っ子には関係ねえこった」と小馬鹿にした表情で言った。


「ほらほら、さっさとレーナの後に行かねえと置いてかれるぞ!」

「お爺さんの言うとおりよぉ。行きましょ笠本くん!」

「あ、ああ……」


 廊下の方へと走りながら、裕太は心のなかで(大丈夫かこの艦)と不安を募らせていた。



    ───Hパートへ続く

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