第11話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:前編」【Eパート 100点満点の超美形】
「まあまあ、レーナちゃんも裕太も落ち着きなよ。ここは天才の僕に免じて……」
レーナと裕太があわや口喧嘩に発展しそうなのを割り込むように進次郎が仲裁すると、レーナと進次郎の視線がピタリと合った。
時が止まったように固まったレーナに対し、進次郎が首を傾げハテナマークを浮かべる。
するとみるみるうちにレーナの頬が紅に染まっていき、彼女の口からは「はわわゎ……」と、さっきまでの彼女の声とはうってかわった可愛らしい声がこぼれ始めた。
そしてレーナはバッと進次郎の両手を握り持ち上げ、顔をグイッと近づける。
「あ、あの! あなた……お名前は!?」
「え、僕? 僕は岸辺進次郎、ただの天才さ」
「シンジロウ……ああっ、なんて素敵なお名前……!」
握った進次郎の手に頬をすり寄せながら、うっとりした顔をするレーナ。
事態が飲み込めず固まっていた裕太たちをナニガンが「おーい」と眼前で手をひらひらさせて気が付かせた。
「こらこらレーナ、お客さんが困ってるじゃないか」
「でもパパ! この人とっても素敵なの! 100点満点の超美形!」
「艦長と呼びなさいって……。すみませんねえ、うちの娘が」
「あ、いやいや。僕は別にいいんだけどね。あは、あははは!」
ツインテールの美少女に腕を捕まれ、鼻の下を伸ばしながら上ずった声で高笑いする進次郎。
本人はまんざらでもないという態度で喜んでいるが、その隣ではサツキが頬を膨らませて不満そうな顔で押し黙っていた。
しかし、進次郎はそんなサツキの態度に気づかずにレーナに腕を引っ張られながら。
「進次郎さま、わたしが艦内を案内するわ! ほら、行きましょう!」
「ちょちょっとレーナちゃん。レーナちゃーん!」
艦橋を出て廊下の奥へ消えていくふたり。
それを追ってスーッと滑るように廊下を進んでいくサツキの姿が裕太たちには不気味極まりなかった。
裕太たちも追いかけようとしたところで、ナニガンに肩を掴まれて止められた。
「おじさん、何か?」
「あのね、姫様たちはキャリーフレームを運んでもらいたかったんじゃないの? だったら早く持ってきてよ。格納庫への入り口は艦の後方にあるカタパルトだからね。急がないとカタパルトだけに肩が張る、なんちゃって」
「お、おう……。行くぞ銀川」
「え、何であたしもぉ?」
「良いから来るんだよ。ほら、ジュンナも」
「わかりました、ご主人様」
そんな会話を交わしながら、足早に裕太たちは艦橋を後にした。
───Fパートへ続く




