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第10話「フルメタル・ガール」【Eパート 忍び寄る刺客】

 エレベーター脇にある非常階段へと通ずる扉を開け、カツカツと靴音を立てながら無機質な壁に囲まれた階段を降りる裕太たち。

 階段を降り、踊り場で向きを変え、また階段を降りる。

 壁にかかっている数字をカウントダウンのように脳内で呟きつつグルグルと回るように階段を降りていると、突然上階から急いでいるかのような間隔の短い靴音が聞こえ始めた。


「私達の他にも階段を降りる人いるんですね」

「階段の昇り降りをトレーニングにする人でもいるんじゃないか?」

「物好きな人もいるものねぇ」


 徐々に近づいてくる足音を気にせず階段を下っていると、やがてその足音が裕太たちのすぐ近くで止まった。

 そして、どんな人が階段を降りてきたのだろうと裕太たちが振り向く間もなく、爆音のような連続した銃声と共に裕太の目の前の踊り場の壁に小さな穴が開いた。


「「「!!?」」」


 咄嗟に裕太たちが振り向くと、そこには右腕の肘から先がガトリング砲になった、灰色のジャケットと青いジーンズを身に着けているスタイルの良い女性が銃口を裕太に向けていた。

 そんな状況でなかったら、ジェイカイザーが好きそうな美人だなあとか考えられるくらいには美しい容姿の女性ではある。

 女は目を赤く光らせ、静かに口を開く。


「……ターゲット確認、排除開始」

「逃げるぞ! 銀川!!」


 裕太たちが足を踏み出すと同時に踊り場の壁が蜂の巣のように穴だらけになり、パラパラと壁の表面が剥がれ落ちる。

 強く繋いだエリィの手を引っ張りながら階段を降りていく裕太。

 その後ろを少し遅れるようにしてサツキもテンポよく足音を響かせて滑るように階段を下っていく。

 


「何なんだよあいつ!?」

「あの人の格好って、ニュースで言っていた格好じゃない!?」

「ってことは……」

「愛国社の人を襲った方みたいですね! 敵の敵は味方と地球のことわざにありますが、今日は敵の敵でも敵みたいですね!」

「言ってる場合かぁぁぁ!」


 女から逃げようと滑り降りる様に階段を降りきり、ビルの外へと飛び出す裕太たち。

 そこでサツキが何かを思いついたように階段へ通じる扉を閉め、手から生成した鍵を取り出してガチャリと音を立てて扉を施錠した。


「ふう、これで一安心ですね!」

「……そう簡単には行かないみたいよぉ」


 ガン、ガン! という大きな音とともに扉がへこみ、歪んでゆく。

 そして数秒も持たずに扉が蹴破られ、腕がガトリングになった女はキラリと赤い目を光らせた。

 と同時にサツキが「離れてください!」と叫びながら、いつの間にか手に持っていたサブマシンガンを乱射する。

 女は銃弾の雨を受けてもびくともしなかったが、弾が当たった頬の皮膚がめくれ、その下から金属質な層が顔を見せた。

 腕がガトリング砲になっている時点で気づくべきであったが、あの女はどうやら人間と同サイズのロボットのような存在だったようだ。

 損傷し金属の露出した部分を修復しているのか、みるみるうちに女の傷ついた肌がもとに戻っていく。

 そして反撃とばかりに女はサツキに向けてガトリング砲を向け、轟音とともに無数の弾丸をばら撒いた。

 弾が人体を貫通するような痛々しい音とともに、全身穴だらけになり崩れ落ちるサツキ。

 しかしすぐにグネグネと金色のスライムのような姿になって裕太たちのもとでもとに戻った。


「痛かったです~」

「痛いで済むんだぁ……」

「詐欺ですよ! ああいった銃は無痛銃って呼ばれているって進次郎さんが言っていたから安心していたのに!」

「それって痛みを感じる前に普通だったら死んじゃうからじゃ……」

「馬鹿なこと言ってる場合か!」


 逃げつつも笑えないジョークを交えた呑気な話をしているふたりをよそに、裕太は後ろを振り返ると、問題の女はガトリング砲を少し回転させた後、立ち止まってその砲身を人間の腕の形に変形しているところだった。


「しめた! 弾切れ起こしたみたいだ!」

「そうよ金海さん! 2脚バイクに変身して逃げるのよ!」

「ダメだ銀川、2脚バイクじゃ遅い! えーっと……」


 裕太は走りながら携帯電話を操作し、サツキにホバーボードの紹介ページを見せる。

 それを見たサツキは黙ってコクリと頷き、目を閉じながら四つん這いの格好になりつつもその体を変化させ、銀色に輝くホバーボードへと変身を果たした。


「これでよろしいでしょうか?」

「ええと……100万円くらいする、プロ仕様のボードになれとまでは言ってないんだが」

「どこでこのボード知ったのぉ?」

「進次郎さんの家で見た覚えがあったんです!」

「あいつ……なんでそんな高級品持ってるんだ? ともかく上等なのならなおありがたい!」


 ぼやきながら、裕太はサツキが変身したボードに足を載せる。

 後を追うようにエリィもその後ろに乗り、裕太の胴体を両腕で抱くようにしっかりと掴んだ。


「笠本くん、いいわよ!」

「……よし、行くぜ!」


 裕太がアクセルスイッチを力強く踏み込むと、キュイインという音とともに周囲の大気が波紋のようにうねり、そして風を切り裂く凄まじいスピードでホバーボードが発進した。



    ───Fパートへ続く

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