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第9話「コロニーに鳴く虫の音:後編」【Cパート 観光の道程】

 【3】


 進次郎のケガも尻の軽い打撲だけで済んだので、裕太たちは軽く朝食を済ませたあと、そのままホテルから外に出かけた。

 昨日から借りたままの2脚バイクに乗り、4人と1匹はキャリーフレーム博物館を目差してアクセルを入れた。

 コロニーの中央を通る人口太陽の心地よい日差しを受けながら、裕太は2脚バイクの後部座席で揺られながら携帯電話の地図アプリを操作する。


「えーっと……次の交差点を左だな」

「はぁーい。それにしても博物館って結構距離あるのねぇ」

『裕太、もしかして博物館とは真上に見えるあれのことか?』

「真上?」


 ジェイカイザーに言われて裕太が上を見上げると、天井にぶら下がるように綺麗な白い壁の大きい建物が視界に入った。

 その建物から続く道を目で追いつつ地図と見比べると、すぐにジェイカイザーの言う事が間違いでないことに気がついた。


「……さすが、スペースコロニー。目的地が天井にぶら下がってるとは驚きだなぁ」

「んもう、笠本くんってばいちいち反応が田舎者なんだからぁ。今から地面に沿ってぐるっと走ってあそこまで行くんだからねぇ」

「そうだぞ裕太。なにせ、コロニーの中っていうのは目に見える面の全部が土地なんだからな」


 スペースコロニーは、遠心力と人工重力によって外側が下になるようになっている。

 そのため、面に沿って移動すればいずれは天井として見えていたところに立つことも可能なのである。

 そんなことを考えていると、裕太は周囲の通行人から何やら視線を感じ始めた。


「……なあ進次郎。なんか俺たち見られてないか?」

『私のセンサーからは悪意のようなものは感じられないのだが』

「だって裕太、サツキちゃんの頭が……ねぇ?」


 進次郎に言われて2脚バイクの後部座席からハテナ、と首をかしげるサツキ。

 彼女の頭の上では器用にサツキの頭を掴んだまま風を受けるツクダニの姿。

 視線を集めている元凶は、気持ちよさそうにギュミギュミ歌っているようにも聞こえる鳴き声を出していた。


「私の頭? 金髪なのって珍しいんでしょうか?」

「違う違う、ツクダニが乗っているのが不自然なんだよ」

「どうしてですか? こんなにカワイイのに……」


 裕太はガクッとズッコケそうになったが、よく考えてみればサツキは人間に擬態をしている水金族。

 一件天然な反応も、人間の一般的な価値観を知らないからなのかもしれない。


「えっと、ペットを外に連れるときはほら。キャリーバッグとかに入れないと。電車とかに犬持ち込でいる人を見たことくらいあるだろ?」

「なるほど、それもそうですね! それなら……」


 サツキがそう言って目を瞑ると、サツキの金色の髪がフワリとツクダニを包むように伸び、やがてその髪は犬や猫を持ち運ぶ用のキャリーバッグに変化した。

 頭の上に成形されたキャリーバッグを手に持ち、裕太に向かって微笑むサツキ。


「これで大丈夫ですね!」

「そ、そうだな……」


 裕太は言葉を失いながら、(どこでも3Dプリンターだな)と心の中でつぶやいた。



    ───Dパートへ続く

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