エピローグ短編1「ジェイカイザーの初デート」【Eパート AIの子】
【5】
ジェイカイザーとジュンナがデートに出かけてから2時間後。
ふたりはあっさりと裕太の家へと帰ってきた。
あまりに早く帰ってきたのでジェイカイザーの粗相を疑ったが、どうやらそうではないらしい。
二人して視線を合わせて頷くのを見るに、この数時間で何か仲が発展するようなことが起こったのは確かであろう。
ひとまず、ジュンナがAIの掛け合わせに了承するという当初の目的が達成されたので良しとする。
しかしジュンナは協力する代わりに、いくつかの条件を提示した。
「……君たちを元にして作ったアンドロイドには、購入者に面接をして欲しい、か」
「具体的には商品としてではなく、人間を里子に出すような感覚で引取先に適性検査をして欲しいのです」
「もともと富裕層に売り出す予定だったから構わないが、よかったらその理由を教えてくれないか?」
「はい」
進次郎へと、ジュンナは説明を始めた。
曰く、自分たちは他者のエゴによって作られた存在だから。
曰く、そのため自分たちの子供たるアンドロイド達には人間としての幸福を得られるようにして欲しいから。
曰く、だからこそ引き取り手となる人間は信頼の置ける人物だけにして欲しいから。
「……なるほど。事情はわかった」
「ワガママを言ってすみません。けれども、どうしても私たちの子供と思うと……これだけは守っていただきたいんです」
「わかった。社の人間には父を介して、そのように伝えておこう」
「あと……ワガママついでにもう一つだけよろしいですか?」
「何だ?」
「その……子供たちが旅立っていったら、通信でもいいので私たちと交流をもたせてもらえませんか?」
「お安い御用だよ。それじゃあ、今日のところは僕はこれで」
足早に立ち去る進次郎。
そもそもここへ来た理由も、答えを今日中に出す必要があったかららしい。
なので、実はジェイカイザーがデート中、進次郎が一番落ち着きがなかったのである。
親友の背中を見送ったところで、裕太の携帯電話からチープな電子音が鳴った。
『あ~やっぱりデータの状態が一番落ち着くぞ!』
「おつかれ、ジェイカイザー。ところで……このボディどうしようか」
壁際に伝っている、おしゃれな格好をしたジェイカイザーだったアンドロイド。
こんど進次郎が来たときにでも返すかなどと、のんきに考えていた。
後日、進次郎が新開発の股間ユニットを持ってきて、ジェイカイザーとジュンナが大喧嘩をするのは別の話。




