表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
385/398

後日談 「希望の未来へ」【Bパート 勝ち取った未来】

 【3】


 始業式が滞りなく終わった放課後。

 校門で集合した裕太達は、一斉に警察署へと歩き始めた。

 もちろん、裕太は話しかけられなければ無言で、ただ先頭で話を聞くだけのスタンスだった。


「わぁ! 前も思ったけど、ナインとシェンの制服姿、似合ってるわよぉ!」

「それは褒めているのか? まあ感謝はしておこう」

「素直じゃないのうナインは」

「せやせや、二人とも部活はキャリーフレーム部に入るんか?」

「他に得意分野は無いしな」

「わらわとナインの無敵コンビがおれば、全国大会とて無双じゃろう!」

「でもさ、それって他の学校からしたらたまったものじゃないよな」

「高校野球にプロ野球選手が参加するようなものですね!」

「ついでにメジャーリーガーもってな感じやな。確かに相手がかわいそうや!」

「かわいそうといえばぁ、現2年生もかわいそうよねぇ」

「レギュラー、しかもエースの座を1年生に取られるわけだからなあ」

「訓練が足りないだけではないか。私よりも強くなるのは不可能ではない」

「学生に軍人級の練習を強いるなや……」


 後ろでかわされる楽しそうな会話。

 ジェイカイザーを失う前であれば、あの輪に気兼ねなく入れたのだろう。

 けれども今の裕太には、その勇気もなかった。


 自分の臆病さに嫌になりながら、気づけば警察署に到着していた。

 門の前で待っていたレーナが、遠くからこっちだと手招きする。


「ゼロセブン、なぜここに?」

「わたしも呼ばれたんですぅ~! っていうかナイン、まだナナねえって呼んでくれないの?」

「恋愛が成就したから無しだ。離婚のひとつでもしたら呼んでやらなくもない」

「じゃあもういいわよ! だって、進次郎さまとわたしはずーっと一緒だもん!」

「私も忘れちゃだめですよ! ですよね、進次郎さん!」

「う、うん。ふたりとも僕の大切な人だからね!」


「翼……」

「二人は僕の翼……やっけ、くすくす」

「ええい! ひとのプロポーズの台詞でいちいちからかうんじゃあない!」


「相変わらずにぎやかだな、若いもんは」


 裕太が顔を上げると、目の前に立っていたのは大田原だった。

 彼は裕太の肩をバシバシと叩きながら、格納庫の方へと引っ張り寄せていく。


「い、痛いですよ大田原さん」

「坊主、なにいつまでもしょげてんだよ」

「俺だって、好きでこうなったわけじゃありません」

「へっ、その態度がいつまで持つか見させてもらうぜ」

「え……?」


 背中を押され、よろめきつつ足を踏み入れた格納庫。

 その中心には、ブルーシートにかけられたキャリーフレームの前に立つジュンナの姿があった。

 彼女の手には、宇宙服のヘルメットのような物体が抱えられている。


「ジュンナ……?」

「ご主人さま、これを」


 差し出されたヘルメットを、裕太は無意識に受け取る。

 その中には、なにやら機械の部品みたいな塊が一つはいっていた。


「ジュンナ、これは?」

「よくわかりませんが……あなたの大切なものだと」

「俺の……?」


 しばらくその部品を見つめ、思案を巡らせる。

 どう記憶をたどっても見覚えのない物体。

 頭の中にハテナマークを浮かべながらしばらく考え込んでいると、不意にポケットに入れていた携帯電話が震えだした。


「何だろ、母さんの病院からか……な……!?」


 携帯電話を手に取り、その画面を見た裕太は言葉を失った。

 明らかに有るはずのないものが、そこに映っていたから。

 角張った、直線で構成されたような、お世辞にも格好いいとは言えない顔のアイコン。

 まるで眠っているようにフガフガと言っていたそれは、目を覚ましたようにハッとした顔をした。


『な、なんだ……? ここがマシン戦士のヴァルハラか……? それとも天国か?』

「ジェ……ジェ……」

『むむっ!? なぜここに裕太がいる!? まさか、あの爆発に巻き込んで一緒に!?』

「ジェイカイザー!!?」



 【4】


 後から聞いた話によると、ジェイカイザーが生き残ったのは奇跡のようなめぐり合わせだったという。

 あの戦いの決着の時、この世に未練を残していたジェイカイザーは、機体が溶け切る前に無意識のうちに意識データを周囲に飛ばしていたらしい。

 その際、偶然にも近くに投棄されていた古い携帯電話にデータが転送され、爆発とともにその携帯はあらぬ方向に吹っ飛んでいったとのこと。

 そして昨日、落とし物として交番に届けられたボロボロの携帯電話。

 持ち主を探すためにとメモリの内容を引き出そうとしたところ、ジェイカイザーが発見されたという。


「ジェイカイザーーー、お前~~~!!!」

『な、なんだ裕太!? やっぱり一緒に死んでしまったのか!?』

「違うよ、俺もお前も……生きてるんだよ!! みんな!」


「え? なになに? ジェイカイザー?」

「生きてたのか! 本当に!?」

「わ~~良かったです~~~!!」

「だから言っただろう。あいつのようなやつが死ぬはずがないと」

「ほんま良かった~~! ジェイカイザー、笠本はんあんさんがおらん間ずっとな」

「めでたしめでたし、じゃのう!」


「裕太!」


 後ろから覗き込む面々をかき分け、裕太を背後から抱きつくエリィ。

 彼女の柔らかな感触が、裕太の背中を包み込む。


「本当に……本当に良かった……!」


 涙声で喜ぶ彼女に釣られて、涙が出そうになる裕太。

 けれども、ジェイカイザーの『いけーキスだー』というはやし立てを聞いてから、涙を流すのが馬鹿らしくなった。


「さて、もう一つサプライズがあるんだが……良いかな?」


 いつの間にか現れた訓馬に声をかけられ、「サプライズ?」と首をかしげる。

 彼の指差す方を見ると、ブルーシートがかけられたキャリーフレームの横で、照瀬と富永がシートの端を引っ張っていた。

 数秒の後に取り払われるシート。

 その下からは、信じられないようなものが姿を表した。


 趣味の塊のような、原色をふんだんに使ったロボット。

 青を貴重とし、頭部は絶妙に格好良くないカクカクとした顔が彫られている。


「ジェイカイザー……なのか!?」

『うおおっ! すごいではないか! 新品のピカピカだ!』


 細かいディテールこそ変わっているが、それはジェイカイザーそのものだった。

 エリィ達が一斉に群がり、ペタペタと装甲を触り始める。

 裕太が遠目からその外観に感動していると、訓馬が前に出てコホンと咳払いをした。


「正確には〈ジェイカイザーⅡ〉と言ったところか。フォトンリアクターこそ搭載していないが、〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉をベースにしたから性能は折り紙付きだぞ?」

『聞いたか裕太! ついに私のベースもエルフィスか、しかもマークツー!』

「……訓馬さん。俺、すっげー嫌な予感がするんですけど」


 ジェイカイザーの改修なりパワーアップに必ずつきまとうこと。

 それは、あまりにも膨大な費用がかかったことにより発生する借金。

 しかし、裕太の不安を吹き飛ばすかのように老人はクククと笑った。


「なあに、メタモス戦を始めとした地球を守る戦いで、コロニー・アーミィから莫大な報酬金がでていてな」

「そっか! よかった~」

「……で、残念なことに元のジェイカイザーのデザインを起こす際に、結構予算オーバーをしてしまって……」

「……やっぱり?」

「まあ、借金と言っても50万円ほどだ。君ならすぐに返せるだろう」

「ああーっ!! やっぱり借金生活じゃねえかよぉぉぉぉ!!」


 感動から一転、立て続けに別の涙を流すこととなった裕太。

 しかし、裕太の気持ちを汲む気などない、といった風に突然格納庫に警報が鳴り響いた。


「工業地帯にて、愛国社を名乗る暴走キャリーフレームが出現! 特殊交通機動隊は直ちに出撃せよ! 繰り返す、特殊交通機動隊は直ちに出撃せよ!」


 大田原たちへと放たれたであろう命令を聞き、裕太は訓馬と頷きあう。

 そして、目の前でコックピットハッチを開く〈ジェイカイザーⅡ〉へと駆け出した。


「よし、行くぞジェイカイザー! 出撃だ!!」

『おう!!』



 ───────ロボもの世界の人々 ~ 完 ~


          けれども、彼ら彼女らの人生は、これからも続く!!



───────────────────────────────────────



登場マシン紹介No.50

【ジェイカイザーⅡ】

全高:8.3メートル

重量:7.8トン


 訓馬が裕太のために用意した、ジェイカイザーそっくりな外見を持つキャリーフレーム。

 エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)をベースとしているため、性能は軍用機レベルの中の上といったところ。

 ジェイカイザーの意向を汲みフォトンリアクターは搭載していないが、実は後から搭載できるように訓馬が用意している。

 固定兵装は頭部バルカンのみで、標準装備として警察から支給された電磁警棒とショックライフル、及びΝ(ニュー)-ネメシスから差し入れされたビームシールドを搭載。

 これからの裕太の人生を彩る、素晴らしい機体である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ