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最終話 「大地に還る」【Hパート 昇る光】

 ハイパージェイカイザーから伸びる結晶が、警棒を通して〈グレートエビルカイザー〉の内部へと入り込んでいく。

 なおも輝きを増していく相手の胸部を見ながら、ジェイカイザーは損傷によってカメラアイから涙のようにオイルを滴らせていた。


(ありがとう、エリィどの。私のような存在を、最後まで友として扱ってくれて)


 ハイパージェイカイザーに押され続けた〈グレートエビルカイザー〉が、ついにバランスを崩し仰向けに倒れる。

 それでもジェイカイザーは胸部から離れず、フォトンエネルギーを送り続けていた。


(ジュンナちゃん。一度でも良いから君の口から……私が好きだと聞きたかったな)


 内部で膨れ上がるエネルギーに耐えられなくなった〈グレートエビルカイザー〉の外部装甲にヒビが入る。

 そして空気を送り込まれた風船のように、その巨体が徐々に膨らんでゆく。


(進次郎どの……サツキちゃんとレーナちゃんと幸せにな)


 溢れ出るエネルギーに、ハイパージェイカイザーの装甲が融解を始めた。

 数多の戦いを耐え抜き、人々を救ってきた戦士の、最期が近づいていた。


 死を前にしてジェイカイザーの中に、思い出が蘇る。


 パトカーから逃げるように夜空を飛んだあの日。

 免許を取るために、警察と戦ったあの日。

 美少女転校生が、異種生命体だと知ってもなお、友となったあの日。

 ドラマの撮影をしようとして、軍用機と戦う羽目になったあの日。

 裕太とエリィが、パフェをかけてキャリーフレームで戦いあったあの日。

 海水浴場で水着姿を拝んだあの日。


 軌道エレベーターから落ちそうになったあの日。

 サツキが虫と仲良くなったあの日。

 宇宙怪虫との戦いの中で、バラバラに必殺技を叫んだあの日。

 愛するジュンナと、最悪で最高の出会いをしたあの日。

 ネメシス海賊団と知り合い、レーナが進次郎に惚れたあの日。

 大気圏を堕ちながらも、強敵をみんなの力で退けたあの日。


 ジュンナがメイド修行に励んだあの日。

 初めてエリィがジェイカイザーに乗ったあの日。

 裕太とともに、グレイに敗北したあの日。

 カーティスとともに、犯罪者と戦ったあの日。

 改良した身体で、グレイに対しリベンジを果たしたあの日。


 異世界からの来訪者に驚いたあの日。

 巨大兵器を一刀両断したあの日。

 学校の校庭で忍者ロボと戦ったあの日。

 自分とそっくりなロボットから、エリィを救い出したあの日。

 裕太の代わりにエリィとともに、敵に立ち向かったあの日。

 みんなの力を合わせて、内宮を救ったあの日。

 初めてハイパー合体をし、巨大怪獣を倒したあの日。


 宝島を目指し、みんなで航海したあの日。

 深雪が艦長として、初めて指揮をしたあの日。

 ネコドルフィンと共に、島に眠る謎を解き明かしたあの日。

 島を守るためにΝ(ニュー)-ネメシスと共に戦ったあの日。

 初めてダブルフォトンランチャーを放ったあの日。


 光国グァングージャへと漂着し、神様と崇められたあの日。

 内宮に操縦してもらい、反政府軍を相手取ったあの日。

 ナインに対抗するべく、分離合体攻撃に転じたあの日。

 木星へ向かう途中で、のんびりと過ごしたあの日。

 裕太がスグルと戦う姿を、ハラハラと眺めてたあの日。

 心を開いてくれないナインのために、裕太が女装をしたあの日。

 捕らえられた要塞の中から、レーナと共に脱出したあの日。


 部活の練習試合が、台無しになったあの日。

 ネオ・ヘルヴァニアとの戦いに覚悟を決めたあの日。

 軌道エレベーターで、再び戦ったあの日。

 カーティスの恋路を、全力で応援したあの日。

 グレイの機体と合体し、ドラゴニックモードとなったあの日。

 敵も味方も手を携えて、落下する要塞を押し返したあの時。


 地球にメタモスの恐怖が舞い降りたあの日。

 サツキを救うべく、地球を発ったあの日。

 メタモスとの激闘に、進次郎とともに臨んだあの時。

 サツキの強さに、驚いたあの時。

 そして、地球を侵略しようとする自分のオリジナルを相手に、決着をつけつつある今。


 どの思い出も、まるで昨日のように思い出せる。

 けれども、それも後少し。

 

(裕太。楽しい思い出を、ありがとう……! あ、でも……)


 心残りが無いとなれば、嘘になる。


(今季のアニメの最終回くらい、見たかったなァ……)


 叶わぬ願いの中に、ジェイカイザーは消えていった。


 

 ※ ※ ※



 山から真っ直ぐに立ち昇る緑の光。

 その輝きを窓越しに感じ、まぶたがゆっくりと開く。


「あら、きれいな光……」


 上体を起こし、窓の外で輝く光の柱にしばし見惚れる。

 背後で看護師が放つ「先生、笠本由美江(ゆみえ)さんが目を覚ましましたァァ!」という叫び声も気にせずに、じっと見つめていた。

 その光が、息子の友が命を燃やし大地に還る光だと知らぬまま。

 ただじっと、その瞳は輝きを見つめ続けていた。



───────────────────────────────────────



登場マシン紹介No.49

【エビルカイザー】

全高:9.0メートル

重量:9.4トン


 ドクター・デフラグが製造した邪悪なジェイカイザー。

 人間の人格を移植した球体ユニットをパイロットした指揮官型と、人工知能IDOLA(イドラ)を搭載した兵士型が存在する。

 なお、装備・外見ともに両型とも際はない。

 外見は丸みを帯びたトゲのような意匠が各部位にまんべんなく施された黒いジェイカイザーといった風貌をしている。

 量産型ジェイカイザーといった性能をしており、改良後のジェイカイザーを凌ぐスペックを持つ。

 また、ジェイカイザー同様フォトンリアクターを内蔵しており、ウェポンブースターを使用しての攻撃も可能。

 武装は遠近両用のフォトンソードと頭部バルカン砲のみ。



【グレートエビルカイザー】

全高:16.4メートル

重量:44.2トン


 ドクター・デフラグが製造したハイパージェイカイザーの邪悪バージョン。

 地球人類ごとヘルヴァニア人を殲滅するための悪鬼魔神というコンセプトで開発されている。

 ハイパージェイカイザーとの大きな違いは胸部の大きな宝石型ユニット「ブレスト・フォトン・ガイザー」。

 これは圧縮したフォトンエネルギーを、内部で更にウェポンブースターによって増幅し放つ悪魔の兵器であり、その威力は山ひとつを消し飛ばすほど。

 他にもグレート・ブレードという名の改良型ジェイブレードと、頭部にはフォトン結晶をマシンガンのごとく放つグレート・フォトン・ブラスターを搭載している。

 外部装甲はあらゆるエネルギー性攻撃を無効化する特殊装甲であり、フォトン結晶による攻撃も無効化される。

 しかし実体武器に対しては耐久性が薄く、電磁警棒で貫かれるほどだった。



 【次回予告】


 すべての終わり。

 それは、すべての始まりでもある。

 新たな季節は、人々を新しいステージへと駆り立てる。

 だがひとつ信じられることは、未来は常に希望に満ち溢れていることだ。


 次回、ロボもの世界の人々 後日談「希望の未来へ」


 ────少年の戦いが終わっても、世界は廻り進み続ける。

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