最終話 「大地に還る」【Fパート 一つになる想い】
【6】
「ぬぅぅぅん!! グレート・ブレェド!」
〈グレートエビルカイザー〉が手に持った、ジェイブレードに似た長剣にフォトン結晶がまとわりつき刃を形成する。
そうして出来上がった巨大な剣が、裕太へ向かって容赦なく振り下ろされた。
とっさに横っ飛びで回避し、ビームライフルで応戦する。
しかし、光弾を直撃させているはずなのに〈グレートエビルカイザー〉には傷一つ付いてはいなかった。
「無駄だ、地球人! グレート・フォトン・ブラスタァァァ!」
デフラグの咆哮と共に〈グレートエビルカイザー〉の頭部から放たれる、無数のフォトン結晶の弾丸。
回避行動をとりながら裕太はビームセイバーを回転させ防御を行う。
しかし、フォトン結晶はビームの刃を素通りするかのように次々とジェイカイザーの装甲へと突き刺さっていった。
「ぐあああっ!!」
『何故、何故なのですか博士! なぜあなたは地球を攻撃するのですか!? 地球を守るために私を作ったあなたが、なぜ!!』
「ジェイカイザー、貴様はひとつ勘違いをしているな!!」
『勘違いだと!?』
「わしが今憎んでおるのは、ヘルヴァニア人だけではない! 地球人もだ!」
『地球人もだと!? 何故だ!!』
「ジェイカイザー、貴様は平気なのか!? 地球人がヘルヴァニアを滅ぼしたがために、貴様は救星の英雄となる機会を逃したのだぞ!!」
『……!!』
「あまつさえ、ヘルヴァニア人によって穢された地球人のもとで、ヘルヴァニア人のために貴様は戦わされている!! それは裏切りではないか!!」
「違う!!」
裕太は、ダメージで警告音が鳴り響くコックピットの中で叫んだ。
「お前は、地球を何もわかっちゃいない!」
「何……!?」
「地球だ地球人だと分かったふうに言ってるが、お前はニワカなんだ!」
ウェポンブースターを起動し、ビームセイバーを強化する。
緑色に光る刃は、地球人類の英知とジェイカイザーの力が合わさった輝きを放つ。
「ニワカだと!? 若造がワシに説教をしようというのか!!」
再び放たれるグレート・フォトン・ブラスターの弾丸の嵐を、強化したビームセイバーの横薙ぎ一閃で全て焼き切る。
そして流れるようにジェイカイザーを跳躍させ、〈グレートエビルカイザー〉へと光の刃を振り下ろす。
だがしかし、光の刃が〈グレートエビルカイザー〉の巨大な手によって掴まれる。
非実体のはずの剣を、その邪悪な手のひらが確かに受け止めていた。
「地球人が舐めた口を利くなぁっ!! ヘルヴァニアは宇宙に蔓延る癌細胞ぞ! 根絶やしにせねばならぬ病魔なのだ!」
「ぐおあぁぁっ!」
ビームセイバーごと、ジェイカイザーを投げ返す〈グレートエビルカイザー〉。
地面に叩きつけられ手から離れたビームセイバーの柄が、邪悪で巨大な足に踏み潰される。
「その病魔に蝕まれ、精神まで堕ちた地球人ども、ワシはその全てを滅ぼしてくれる! そのためならば、我が身を神にも悪魔にも窶して見せようぞ!」
裕太は倒れたジェイカイザーを、操縦レバーに力を入れて立ち上がらせようとする。
しかしその背中を、〈グレートエビルカイザー〉が踏みつけた。
「なんと地球人の無力なものよ。フハハ……地球人よ、その無力さを更に思い知ると良い」
ジェイカイザーを踏みつけたまま、市街地の方を向き胸部の結晶体を光らせる〈グレートエビルカイザー〉。
それは、さきほど基路山の山頂を吹き飛ばした攻撃を、居住区へと放とうという意志だった。
「やめろぉぉぉぉっ!!」
「ヘルヴァニア人もろとも滅びるが良い、地球人よ! ブレスト・フォトン・ガイザ……」
「デフラグ、貴様の思い通りにはさせん!!」
ジェイカイザーの頭上で、突如現れた〈クロドーベル〉が〈グレートエビルカイザー〉の背部へと取り付いた。
その手に握る電磁警棒は、ビームが一切効かなかった黒い装甲へとたしかに突き刺さっていた。
「貴様ぁぁっ! フォルマットかぁぁッ!」
「訓馬さん!? 〈クロドーベル〉で無茶だ!」
「これ以上、亡霊などに兄の名を汚させはせんっ! 裕太くん、此奴の装甲にエネルギー兵器は通用しない! 物理的攻撃で攻め立てるんだ!」
「そういっても、警棒なんかじゃ致命打は……!」
「まもなく君の助けが来る! それまで耐え────」
「邪魔をするなぁぁぁっ!! フォトン・フィンガァァァッ!」
背部に取り付いた〈クロドーベル〉へと伸ばされた〈グレートエビルカイザー〉の指が、閃光を放った。
刹那、消滅するように爆散する〈クロドーベル〉。
旧式の〈クロドーベル〉には、クロノス・フィールドは搭載されていない。
その事実と、目の前の事象が示すものは……。
「訓馬さん! くそぉぉっ!!」
気を取られてか〈グレートエビルカイザー〉が踏みつける力が緩くなった隙に、足の下からジェイカイザーを脱出させる裕太。
そのまま背後を取り、ショックライフルを訓馬が突き刺した電磁警棒めがけて発射する。
「ぐぬぅぅっ!?」
「効いてる……! 警棒越しなら攻撃が通るのか!」
『裕太! 私はもう許さん!』
「ジェイカイザー!?」
『フォトンの光は世界を照らす希望の光だ! その力で悪を成すことは絶対に許せん!!』
怒りに打ち震えるジェイカイザーに、裕太は大きな頷きで同意を返した。
これ以上、だれも犠牲にはさせない。
そのために、先程からレーダーにチラチラと写り込んでいた存在へと意識を集中させた。
「裕太ぁぁぁっ!!」
「エリィ、来い! 合体だ!!」
上空から降るようにやって来たブラックジェイカイザーの元へと、裕太はジェイカイザーを跳躍させた。
そして空中で合流し、声を張り上げる。
「ジェイカイザー、ハイパー合体!!」
『おう!』
「ええ!」
『行きます!』
エリィの乗るブラックジェイカイザーの四肢が分離し、巨大な手足へと変形する。
空中に転送された合体パーツがジェイカイザーの足を火花を上げながら包み、そこに変形したブラックジェイカイザーの脚が合体。
今度は合体パーツがジェイカイザーの腕を通し、一体化。
足のときと同じようにブラックジェイカイザーの変形した腕が装着される。
エネルギーが通り光のラインを浮かび上がらせる腕から、金色に光る手が伸び力強く宙を握る。
残されたブラックジェイカイザーの胴体が上下に分離し、上半分が仮面をかぶせるようにジェイカイザーの頭部を包み込む。
残りの合体パーツが次々と舞い上がり、ジェイカイザーの胴体を覆っていく。
最後に残されたブラックジェイカイザーの胴体がコックピットハッチを守るように装着され、胸に輝くエンブレムが現れた。
そして、仕上げとばかりにジェイカイザーの口元が鋼鉄のマスクで覆われる。
『ぬぅぅんっ!! 青く輝く地球のために、人々の笑顔と平和を守る!! 旭光勇者ハイパージェイカイザー!! 降臨ッ!!』
───Gパートへ続く




