最終話 「大地に還る」【Aパート 悪魔の皇帝】
【1】
ジェイカイザーはΝ-ネメシスの甲板上で、人間で言うならば胸騒ぎに近い感情を抱いていた。
レーダーに次々と映り込む反応。
そのひとつひとつがアーミィから送られる敵性反応を示しつつも、ジェイカイザーの中ではそれらが仲間という認識が途切れ途切れに介入。
その結果、レーダーの光点が赤と緑を交互に繰り返し、人間の目は黄色に見えるような輝きを発していた。
『画像解析の結果、出現している機体群は……非合体時のジェイカイザーにその意匠が78%ほど酷似しております』
『一体あれは……何なんだ?』
「ジェイカイザー!」
通信越しの叫びと共に、ヘルメットをかぶった裕太がコックピットへと飛び込む。
そのままパイロットシートに座った相棒へと、ジェイカイザーは不安を吐き出した。
『裕太、あれは何なのだ!? 何が起こっているのだ!?』
「わからねえけど、ヤバいってことだけは確かだ。……ん?」
『ご主人さま、艦長より通信です』
「裕太さん。あの機体群について、ジェイカイザーから情報はありましたか?」
このような状況でも、相変わらず冷静な深雪艦長。
返答に困っている裕太を見ていると、ふとジェイカイザーの古い記憶の断片のようなものが紐解かれた。
『……〈エビルカイザー〉だ』
「えっ?」
『あの機体は〈エビルカイザー〉だ! 合体していない私とほぼ同等の力を持つ機体だ!』
なぜそう確信したのかはわからない。
けれども、突然に天啓が降りたかのごとくそう感じたのだった。
「では便宜上〈エビルカイザー〉と呼称しましょう。コロニー・アーミィに攻撃を仕掛けているので敵と断定し、迎撃を開始します。よろしいですか?」
「ああ……だけど、ジェイカイザーのエネルギーが割とギリギリだ」
『では分離して戦闘してはいかがでしょう? 通常火器での応戦中は、フォトンリアクターによる充填が行われます』
「……そうだな。素ジェイカイザー並なら、高出力ビームが効くだろうし」
『素ェイカイザー!?』
「1文字だけ縮めるな!」
にわかに、爆発のような光が宇宙に発せられ始める。
すでにサジタリウス艦隊の〈ジエル〉と交戦を始める〈エビルカイザー〉。
ただでさえ先のメタモス戦で損耗しているアーミィの部隊では、苦戦は免れないだろう。
「とにかく、迎撃に出るぞ!」
『わかった!』
『ブラックジェイカイザーは、私にお任せください』
『頼んだぞジュンナちゃん! オープンカイザーッ!』
一瞬で分離し、バーニアを吹かせるジェイカイザー。
裕太の操縦のもと、〈エビルカイザー〉で溢れる戦場へと真っ直ぐに向かう。
その間にも、レーダーに映る敵性反応は増え続けていた。
───Bパートへ続く




