第48話「光を動かすもの」【Fパート 願い】
【6】
突如として現れた思わぬ援護攻撃に、〈グアーゼ・メギマ〉が大きくその巨体をよろめかせる。
同時にチャージされていたエネルギーが射出され、あらぬ方向へと滅びの光が伸びていき、虚空を貫き消えていった。
千載一遇のチャンスに、〈ガイアディア〉は攻勢をかける。
押さえつける相手の力が削がれたことで、踏ん張る必要のなくなった片脚を振り上げた。
鋭い蹴りとなって襲いかかったハイキックは、胴体に突き刺さった敵の両腕を、一撃のもとに切り裂く。
そしてすぐさま、切り離された敵の腕を吸収し、得た質量で〈ガイアディア〉は腕を始めとした自らの損傷した部位を修復する。
「ハイパァァァ・ミサイルゥゥゥ・マイトォォォォッ!!!」
咆哮を上げながら、サツキは復活した両腕の先から無数の超大型ミサイルを高速連射する。
ひとつひとつがスペースコロニーサイズのミサイルを、胴体に次々と直撃された〈グアーゼ・メギマ〉。
その巨体が初めて後方へと後ずさるように、地球を離れ下がっていく。
後退した〈グアーゼ・メギマ〉が修復に集中し、一時的に攻撃不能となっているのは明白だった。
この隙を逃すまいと〈ガイアディア〉は足の底からジェット噴射をし、高く、高く舞い上がった。
「ハイパァァァ……!!」
ちょうど足先が地球の頂点を超えたあたりで上昇をやめ、同時に地球の引力を打ち消すための重力アンカーを解除する。
そして先端を円錐状に変形させた足先を〈グアーゼ・メギマ〉へと向けたまま、背部から無数のジェットを噴射。
「スピニングゥゥゥゥ……!!」
ただでさえ超がつく巨体を動かすための推進力に、地球の重力が加わり途轍もない速度で“落下”する〈ガイアディア〉。
「キィィィィック!!」
速度の上昇とともに、足先の円錐に溝が生まれ、回転を始める。
さながら、惑星をも彫り抜けるドリルを模した凶器の脚が、〈グアーゼ・メギマ〉の胴体に突き刺さり、打ち貫き、そして風穴を開けた。
敵の胴に片脚で突き刺さった形となった〈ガイアディア〉。
そのまま前かがみになりつつ、脚と同じく円錐状のドリルと化した両腕を、容赦なく〈グアーゼ・メギマ〉の両肩に当たる部分へと押し当てる。
巨大な火花を四散させながら入り込んだ手の先を、ビーム砲身へと作り変え、そして。
「トドメです!! ハ・イ・パァァァァァ………ビィィィィムッ!!」
抉りこまれた両腕から、内側へと直接照射される無数のビーム。
その一つ一つが〈グアーゼ・メギマ〉の内部機構を次々と誘爆させ、その爆発が連鎖するように巨体全域へと広がってゆく。
それにより、外側では表面走行から次々と半球状の膨らみが、内部の爆発によって生み出されていた。
頭頂部から足先まで、余すところなく膨れ上がった〈グアーゼ・メギマ〉。
胴体に〈ガイアディア〉が刺さったまま、破滅を導く金色の巨人は……大きな、あまりにも大きな爆炎の中へと消えていった。
至近距離でその爆発を受けた〈ガイアディア〉も無事ではなく、刺さった足先から徐々に耐えきれなくなった部位が崩れ落ちてゆく。
そんな中、サツキを模した巨大な顔面、その額から飛び出すサツキ。
彼女はそのまま爆炎の中へと飛び込み、そして願った。
(この力は、私だけで得たものではありません!!)
塵となって炎の中に消えゆくメタモスの粒子の中で──
(私の願いを聞き、味方となってくれたメタモスの皆さん……!)
無垢で、純粋で、素直な少女が発する願い──
(私に多くのことを教えてくれた、地球の人たち……!)
それは、地球という惑星の中で、素晴らしい体験をしたという報告──
(いつも私のそばで、優しくしてくれた進次郎さん……!)
愛を育むという、生物の幸せという概念──
(そして、彼らを育んだ地球という惑星の力が、1つになって初めて得た力なんです!!)
辛いことも、悲しいこともあるけれど──
(星を食べなくても……!)
それ以上に、嬉しいことと楽しいことが得られるという幸福──
(争い合わなくても……!)
それらを教え、そして──
(私達は生きていけるんです……!)
メタモスも……水金族も、その幸せを享受することが可能であるという事実。
(だから皆さんも……!)
それは、人間としての素晴らしい人生への勧誘であった。
(私達と、お友達になってください!!!!)
───Gパートへ続く




