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第48話「光を動かすもの」【Eパート 光が動く時】

 【5】


「サツキちゃんが押されている……!!」

「進次郎さまぁ! なんとかできないの!?」


 レーナに揺さぶられる進次郎であるが、方法などただのひとつもない。

 ジェイカイザーのフルパワーですらも、先程サツキが放ったビームの何万分の1の火力にしかならないのだ。

 すでに惑星級生物同士の戦いという人類の手には余りすぎる戦いなのである。

 そんな状況でちっぽけな人間にできることなど、有りはしなかった。

 進次郎は、なまじ頭が良いがゆえに、その事実をわかってしまっていた。


「僕らにできることなんて、何もないんだ……! 惑星サイズの大きさの敵に立ち向かえるほど、地球のテクノロジーは進んじゃいないんだ!」

「本当にそうなの!? 何か……何かあるんじゃないの!? 今までも、どうしようもない状況なんて、何度もあったじゃないの……!」

「けれど今回ばかりは……サツキちゃんを信じるしかないんだ。僕らにできるのは、サツキちゃんの戦いを見守ることだけなんだ……!」


 信じる、ということは行動を起こさないということである。

 その勝利を信じるだけでは、勝つことはできないとわかっている。

 けれども、成すすべがない今、彼女の勝利を信じることしかできないのであった。



 ※ ※ ※



「もう終わりじゃ……わらわ達にできることなど、もはや何も……」


 シェンも進次郎と同じく、絶望の淵に立っていた。

 損傷した〈キネジス〉の中で、圧倒的なまでの戦いを見せつけられ、無力さに打ちひしがれていた。

 愛しの姉様あねさまの名誉を回復させることもできず、人類の敗北を見届けるしかないのか。

 まさに今とどめを刺されようとするサツキが映る画面を見て、ずっと〈クイントリア〉と通信が繋がり続けていることに気がついた。


「……ナイン、そなたはクールじゃの? さっきから一言も発しておらんようじゃが」

「ああ、すまない。メッセージの返信を読んでいた」

「返信じゃと? いったい、誰からのメッセージじゃ」

「この状況を打破できる相手とだ。間に合うと良いが……」


 シェンにはナインの言っていることの意味がわからなかった。

 完全に人智を超えた戦いを前に、打破できる人間がいるとは思えなかったからだ。

 たとえ地球最強のキャリーフレーム乗りだというエリィの父を持ってしても、何一つとして事態を好転することはできないだろう。

 真顔で画面に目を通す友人の姿を、シェンはただ首を傾げながら見守っていた。


 ※ ※ ※



「お前たちは、母艦に戻らなくても良いのか?」


 大元帥からの問いかけに、俯きという形で裕太は答えた。


「もう、戻ったところでどうしようもないでしょう。それよりも最後まで金海さんの戦いを見たほうが……」


 裕太の心は、完全にポッキリと折れてしまっていた。

 手の届かない場所に等しい壮絶な戦いに、何も力になれない無力さが合わさり無気力になっていたのだ。


「諦めたというのか? 我々アーミィは諦めんぞ。最後の最後まであがき、勝利を追い求める。だからこそお前たちもΝ(ニュー)-ネメシスに戻れ!」

「でもぉ、あたしたちに何ができるっていうのよぉ……金海さんがあんなに苦しんでいるのに、あたしたちは何もできないもの……」

「グダグダ言うてんや無い! ほら笠本はんも銀川はんも、一旦Ν(ニュー)-ネメシスに戻るで!」


 ぐいと、内宮が操縦する〈エルフィス(ストライカー)〉の手が裕太たちの機体を引っ張った。

 裕太は無気力になりながらも、仕方なしという感じでペダルに乗せた脚に軽く力を入れる。

 突如として鳴り響いた警戒アラートに気がついたのは、その時だった。

 画面の中の大元帥が、呆れ顔になりながら声を張り上げる。


「ええい、何事だ! 多少のことではもはや驚きはせんぞ!」

「大元帥閣下! 味方識別のビーム砲撃射線データが送信されました! 退避を!」

「射線データだと!?」


 裕太は通信を聞き、レーダーに目を向ける。

 確かに映る射線データであるが、明らかにおかしい部分があった。


「これから放たれるビーム……やたらめったらデカイぞ!?」


 目一杯にペダルを踏み込み、危険域から一斉に脱出する裕太たち。

 直後に眼前を一瞬で通り過ぎる白い光の帯。

 キャリーフレームはおろか、艦隊をも飲み込まんばかりの超巨大光線。

 人知を超えた戦いへと入れられた規格外の横やりは、地球をかすめるような軌道で飛んでいき……。


 そして、〈グアーゼ・メギマ〉の横っ面を殴り抜けた。




    ───Fパートへ続く

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