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第47話「天の光はすべて敵」【Gパート 暗闇の中で】

 【7】


 気がつけば、進次郎は真っ暗な闇の中であった。

 宇宙とは違い、星の瞬きひとつ感じられない暗黒の空間。


(僕は……どうなったんだ?)


 メタモスの中に飛び込んだところまでは覚えている。

 それからどうなって、この空間にたどり着いたのか。

 それだけが記憶にもやがかかっているように思い出せなかった。


「あなたは……誰?」

(サツキちゃん!?)


 声を出そうとして、口から何も音が出ない。

 けれども、頭の中に直接響くように次々と知らない声が入ってくる。


「何者だ?」

「誰?」

「仲間ではない」

「私達とは異なる」

「違う存在だ」

「違う」

「違う」


(ううっ……これは……水金族たちの声なのか……?)


 幾多もの声が、進次郎の中に入り込み、抜けていく。

 ぼうっと、視界に人影が映り始める。

 しかしそのどれもが、まるで人をかたどった塊に目と口を表す雑な穴が空いただけの、例えるならハニワのような影だった。

 無数の声が通り過ぎる中、ぼやけた人影が次々と現れては消えていく。


 この中に、サツキがいるはずなんだ。

 そう思っても、彼女の断片が掴み取れない。

 その存在を感じ取ることができない。


(僕は……サツキちゃんに会いに来たんだ!)


 心のなかでいくら叫ぼうとしても、口が動くばかりで声が出ない。

 まるで声を奪われたかのように、進次郎は何も喋れなくなっていた。


(ここまで来たのに……僕は何もできないのか……!?)


 絶望の淵に沈みながら、脳裏にサツキとの思い出が蘇ってくる。

 初めて出会ったときのこと。

 水金族だと明かしたときのこと。

 一緒に修学旅行に行ったこと。

 ジュンナのメイド修行を一緒に見守っていたときのこと。


(僕は……どうしてここにサツキちゃんがいるって、感じたんだろうか)


 思い出を振り返りながら、ふと思う。

 こんなに多くの水金族が混じり合った中で、何を元にしてサツキを感じ取ったのだろうか。

 目を閉じ、静かに精神を集中させる。


(サツキちゃんとの思い出をたどるんだ。何か答えがあるのかもしれない)


 進次郎は、記憶の中のサツキの姿を必死に思い出した。

 彼女の笑顔を。

 彼女の笑い声を。

 彼女はいつも、元気いっぱいで、笑っていた。

 そしてその首元には、いつもペンダントが輝いていた。


(あ……あれは、サツキちゃんの誕生日の)


 進次郎は、ダメでもともと、サツキが身につけていたペンダントの気配を探し始めた。

 雑音のような声がかすれたように消えていき、やがてひとつの人影だけが残った。


(あれが、サ……)


「サツキちゃん!!」


 伸ばした手が、確かに細い腕を掴んだ。

 ぼうっとした頭のような丸みが、徐々に輪郭を帯びてくる。


「しん……じろう……さん……」

「サツキちゃん! やっと見つけた!」


 徐々にハッキリと形作られるサツキの姿。

 一糸まとわぬ彼女の身体の上に、唯一首元のペンダントだけがハッキリと視界に映る。


「どうして……ここ……に……?」

「君を助けるために来たんだ! 僕が送ったペンダント、ずっと持ってくれ……」


 進次郎はそう言いかけて、ふと思う。


(あれ、僕はペンダントなんて送ってたっけ……?)


 記憶をたどり、半年近く前に行ったサツキの誕生日パーティのことを思い出す。

 あの時はたしか、進次郎はサプライズのパーティのセッティングと、パーティで食べる料理の手配をしていた。


(あッッ……!!)


 そして思い起こされる致命的なこと。

 それは、サツキへの贈り物は基本的に食べ物ばっかりで、アクセサリ類を送ったことはただのひとつもなかった。

 決して進次郎が無精者だったわけではなく、彼女が直接欲しがったのが食べ物であったことが原因だったのだが、それがことこの状況では致命傷となっている。

 いま眼前で光る、サツキを救い出す助けとなったペンダントも、送り主は自分ではなくエリィである。


「サツキちゃん……僕は、君に何もあげられなかったね……」


 自分自身に失望し、申し訳無さ満載で声を絞り出す。

 しかし、うつむく進次郎の前でサツキは首を横に振った。


「わたしは……しんじろうさんに……いっぱい貰いました。たのしい思い出に……たくさんの友達。そして……愛という感情……!」

「サツキちゃん……!」

「あなたのお陰で、私は人間としての幸せを得ることができました。……今度は、私が恩返しをする番です」


 サツキの肌に、薄っすらと文様が浮かび上がる。

 やがてその文様は服の輪郭となり、彼女の全身を包み込む。

 そして靴部分や手袋部分が形成されたことにより、白を基調とした全身タイツのような戦闘スーツへと変化した。

 彼女の目を覆うように、半透明なオレンジ色のバイザーが生み出され、首には真っ赤なスカーフが巻かれる。

 

「私に贈り物がしたり無いというのなら、平和になった世界で指輪でもください!」

「サツキちゃん、それって……!」

「うふふ! では進次郎さん、行きましょう! 私達の未来へ!」


 スペースルックとなったサツキから差し出される小さな手。

 進次郎は大きく頷き、彼女の手に腕を伸ばした。


───────────────────────────────────────



登場マシン紹介No.47

【先行試作量産型ジエル】

全高:8.0メートル

重量:7.7トン


 クレッセント社が次期コロニー・アーミィの主力量産機となることを目指して開発した次世代型キャリーフレーム。

 ジエルという名称は天使を表す「エン“ジェル”」と「次のエルフィス→エル」をかけたもの。

 半年戦争の英雄・銀川スグルが設計に携わった機体であり、JIO社の最新鋭機ザンドールを凌駕する性能を秘めている。

 エルフィス(ストライカー)の特徴であったビーム・スラスターの改良型を推進機構として採用しており、高機動戦では後方に向けたスラスターモードによる超加速、高火力モードでは前方に向け艦載ビーム砲並の威力を放つことができる。

 特に宇宙戦においては慣性を使い減速せずにビーム・スラスターの加速力と火力を同時に使うことが可能。

 

 なお、先行試作量産型は少数生産したものを試験的にコロニー・アーミィ大元帥直轄部隊にテスト運用として与えられたものである。



【サジタリウス】

全長:382メートル

全幅:140メートル


 コロニー・アーミィの大元帥直轄の絶対地球防衛艦隊こと、サジタリウス艦隊の旗艦。

 将来的にオーバーフレームの運用をも想定しているため、他の宇宙戦艦に比べるとかなり大型となっている。

 大型化の弊害となる被弾のしやすさを解消すべく、外部装甲には贅沢にドルフィニウム合金を採用し、特殊コーティングによって高い耐弾・耐ビーム性能を両立させている。

 主砲は艦首の3連装メガビーム砲4門。

 副砲としてほぼ全域をカバー可能な30門のビーム対空砲と40連プラズマミサイル砲を装備している。

 


【タウラス級】

全長:244メートル

全幅:87メートル


 コロニー・アーミィで運用されている宇宙戦艦。

 量産型宇宙戦艦の中では割と最近建造された型なので、他の組織で運用されている戦艦より性能は秀でている。

 しかし、旗艦サジタリウスと比べると物足りなさを感じてしまうもののこれはサジタリウスが化け物じみた性能をしているだけである。

 武装は主砲として大型ビームキャノン2門、副砲に連装機関砲が18門、ミサイルランチャーを装備。




 【次回予告】


 私は本当は争いは好きではありません。

 けれども、恐怖を乗り越えて助けに来たあの人のために。

 素敵な人生をくれた、大好きなみんなのために。

 私は、戦います。この惑星ほしを守るために。


 次回、ロボもの世界の人々第48話「光を動かすもの」


 ────みなさん、さようなら。


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