第47話「天の光はすべて敵」【Eパート 瞬く戦場】
【5】
「四方八方敵だらけだぜ、エリィ!」
「んもう! そんなことはわかってるわよぉ!」
メタモスの先陣に突き刺さった裕太とエリィは、周囲の物量に圧倒されながらも陣形を崩すように戦闘を始めた。
兵士級メタモスをビームセイバーで切り裂き、少しでも再生が遅れるように溶断された破片を蹴り飛ばす。
側面から戦艦級メタモスが光弾を放とうとしていれば、ビームライフルを連射しその攻撃を阻止する。
大火力を浴びせても倒せないことだけが厄介ではあるが、足止めをするくらいのことならば不可能ではない。
「裕太! これを使って!」
「ビームブロードか、よしっ!!」
エリィから投げ渡された武器を振るい、眼前の兵士級を両断する。
しかし2つに別れた金色の残骸が、すぐさま重機動ロボの形へと変化し、ゼロ距離でミサイルを放とうとした。
「なっ!?」
「どおっせいやぁぁーーっ!!」
雄々しい叫び声とともに内宮の乗った〈エルフィスS〉がメタモスのミサイルポッドをビームセイバーで切り離した。
残った本体が一瞬怯んだところに、裕太は頭部バルカンを放ちながら再生中の個体を殴り飛ばす。
「内宮、助かった!」
「油断大敵やで、笠本はん!」
今作戦の鍵は、唯一メタモスに打撃を与えられるΝ-ネメシスである。
これまで2度、ハイパージェイカイザーの手を借り戦艦級メタモスを屠った空間歪曲砲、ディメンショナル・フォトン・バースト。
だがその有効射程は、広すぎる戦場においてはあまりにも短かった。
しかし、目的はメタモスの殲滅ではなく進次郎をサツキの元へと送り届けること。
そのため、まずキャリーフレームと艦隊の砲撃で敵の塊を止め、目的地に向け掘り進める。
そして空間が空いたところでΝ-ネメシスを突撃させ、サツキまでの道を強引にディメンショナル・フォトン・バーストでこじ開ける。
あとはハイパージェイカイザーがサツキの元へとたどり着けるかの勝負だ。
その第一段階を完了すべく、裕太達は戦っていた。
※ ※ ※
「食い散らせ、インベーダー!」
「シキガミよ! わらわの敵を撃つのじゃ!」
〈クイントリア〉と〈キネジス〉から放たれたガンドローンが光の帯をデタラメにばら撒き、周辺のメタモスをこれでもかと切り刻む。
しかし単発のビームでは戦艦級メタモスの巨体を貫くことは叶わず、撃ち漏らした戦艦級がギョロリと巨大な目をナインへと向けた。
「狙われておるぞ、ナイン!」
「それならば……シェン、攻撃を合わせろ!」
「がってん承知じゃ!」
こちらを狙う戦艦級メタモスの眼球へと、すべてのガンドローンの銃口を集中させる。
そして手持ちのビームライフルの発射に合わせ、一斉にビームを放射。
幾重もの光の束がひとつに収束し、巨大な戦艦級の胴体を撃ち貫く。
「やったのう!」
「む……! シェン、後ろだ!」
「わかっておるわい!」
素早くビームセイバーを抜き、背後から襲いかかろうとしていた兵士級メタモスを切り裂く。
切り裂かれて飛んできた破片へと、ビームドローン・インベーダーの砲身を向け発射。
少しでも細切れにし、再生を遅らせる手間を惜しまない。
それがこの混沌とした戦場で最も有効な戦術であった。
※ ※ ※
「艦砲一斉砲撃を行う! 前線のキャリーフレーム隊は送信した危険ラインから離れよ!」
キャリーフレームたちの攻撃により、メタモスの前進が停滞したのを見てマリーヴェルは号令を出した。
戦場内の前キャリーフレームに向けて、ビーム砲撃の射線データが送信される。
これによりレーダー内に、どの位置にいれば味方の砲撃を喰らわないかが表示されるのだ。
「大元帥閣下! 射線オールクリア!」
「全砲門開け! サジタリウス艦隊、主砲一斉発射!!」
「「「「主砲、一斉発射!!」」」」
メタモスの軍団に向かって、次々と戦艦から青白い光線が放たれた。
旗艦〈サジタリウス〉を戦闘にくの字型の陣形から放射された一斉砲火は、一瞬の後に戦場を貫き、幾重もの爆発を巻き起こす。
まるで宇宙が振動しているような錯覚さえ覚える大火力攻撃に、操縦レバーを握る手も小刻みに震えだす。
「反撃、来ます!」
メタモスの軍勢から飛来する、無数の光弾。
艦隊の中へと叩き込まれたそれらは大きな爆発を何度も起こし、次々と弾けていく。
「損傷確認!」
「2番艦中破! ですが戦闘続行可能との報告があります!」
「退かせろ! 艦の撃沈は士気に関わる! 砲撃の効果はどうだ!?」
「大元帥閣下! わずかに突入距離足りません!」
「であるならば、〈ジエル〉隊、我がもとへ集合せよ!」
マリーヴェルの命令により、周囲に退避していた〈ジエル〉が次々と指揮官機の元へと集結する。
そのまま速やかに砲撃陣形を取り、移動用に後方噴射していたビーム・スラスターを一斉に前方へと向けた。
「出力全開! メガビーム・ブラスター一斉発射!!」
戦場のど真ん中から、強力なビームの応酬が一点に向けて放たれた。
周囲のメタモスを巻き込みながら進み行く光の螺旋が、道を作るようにメタモスの集団をえぐり抜けていく。
「今だ! Ν-ネメシス!!」
───Fパートへ続く




