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第47話「天の光はすべて敵」【Cパート 最後の会議】

 【3】


 Ν(ニュー)-ネメシスのものとあまり変わらない、〈サジタリウス〉内のブリーフィングルーム。

 コロニー・アーミィの幹部たちと見られるコワモテの大人たちで席が埋まっている中。

 裕太達は最前列の席から、壇上のマリーヴェル大元帥と深雪の話に耳を傾けた。


「では、本作戦……エイユウ作戦について、深雪嬢から説明をしてもらおうか」

「はい。ですが大元帥閣下、エイユウ作戦という作戦名はどこから?」

「敵性生物メタモスの実体は、液化した黄金のようなものだと聞いている。そこから金の元素記号であるAuと、地球を救うヒーロー……つまり英雄をかけてエイユウ作戦と命名した」

「なかなかのセンスの作戦名をありがとうございます。では改めて、本作戦の概要を説明します。進次郎さん、壇上に来てください」


 深雪に呼ばれ、おずおずと壇上に上がる進次郎。

 彼は、手に持っていた宇宙服のヘルメットの内側から、何やら荒い網目状の帽子を取り出し、皆に見えるように持ち上げた。


「えと、これが地球有数の科学者によって作られた、ExG能力の感応力を高める装置です」

「この装置と、彼が持つExG能力。そして同乗するパイロットの能力を使い、作戦の目標となるメタモスにさらわれた少女・金海サツキさんの救出を行います」


 深雪の説明に、アーミィの者たちがざわざわと声を上げ始めた。

 たった一人の少女を救い出すことが、地球を救うことにどう結びつくのかわからないからであろう。

 ざわめきの中、大元帥が刀の鞘の先で床を突くと、その音を合図にしたようにしんとブリーフィングルームが静まり返った。


「深雪嬢、続けて」

「はい。金海サツキさんは、一部のメタモスと心を通わせることが可能です。彼女の能力があれば、メタモスの半数を味方につけることができます。それにより戦力差が覆り、メタモスとの戦いに勝利できる……といった算段となっております」

「なるほど?」

「そして、そのサツキさんを救い出すことができるのは、彼女と親交が深かったこの岸辺進次郎さん……というわけです」


「聞いたか、我らアーミィの者たちよ! 我々コロニー・アーミィは、この少女ひとりを救い出すことが最初にして最大の任務となる! そのため、我々はこの進次郎少年が搭乗する機体を、生命を課して守らねばならない!」

「「「イエス・マム!」」」


 大元帥の号に、一斉に立ち上がり声を上げるアーミィの男たち。

 背後から感じるその叫びに圧倒されながらも、裕太は壇上で緊張のあまり固まっている進次郎の様子をじっと見守っていた。


「……む、そろそろ時間か。では少年少女諸君、手間を取らせて済まなかったな。君たちの艦に一度戻ると良い」

「はい。マリーヴェル大元帥閣下、ありがとうございました」

「ああ。健闘を祈る」



 ※ ※ ※



 宇宙空間で一度分離し、ジェイカイザーとブラックジェイカイザーに分かれてΝ(ニュー)-ネメシスに戻ってきた裕太とエリィ。

 すでにスペースボートで一足先に戻っていた深雪たちと合流し、作戦前の最終ブリーフィングに望んだ。


「作戦開始まであと数分となりました。予め言っていたように、本作戦においてはジェイカイザーとブラックジェイカイザーには、それぞれレーナさんと進次郎さんに乗っていただきます」

『なにっ!? 裕太たちではないのか!?』

「おいジェイカイザー、お前さては話聞いていなかったな?」

『私が改めて説明します。作戦において何より重要なのは進次郎さんをサツキさんのもとへ無事に送り届けること。そのために最も頑強なハイパージェイカイザーに彼と支援をするレーナさんを乗せることになったんですよ』

『さすがジュンナちゃん! わかりやすい説明だ!』

『あなたが話を聞いていれば説明する手間が省けたんですがね』


「とにかくです」


 深雪の低い声に、周りの全員が深雪の方向へと向き直る。


「ジェイカイザーに二人が乗るため、手空きとなる裕太さんとエリィさんにはそれぞれ、〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉と〈ブランクエルフィス〉に搭乗して貰います」

「お姫様! わたしのエルフィス、大事に乗ってね!」

「ええ、もちろんよぉ!」


「俺が〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉か……」


 ここに来て、一大決戦にほぼ初乗りの機体。

 宇宙に出る前に一度、慣らし操縦はしておいたが実戦では初となる。

 しかし、裕太は怖気づいてはいられない。

 親友の進次郎が命を張って最前線に行く手前、文句を言っている余裕など無いからである。


「他、ナインさんは〈クイントリア〉」

「ああ」

「シェンさんは〈キネジス〉」

「うむ!」

「内宮さんは〈エルフィス(ストライカー)〉」

「……思たんけど、なんでうちだけ名字呼びなんや?」

「返事は?」

「しゃあないなぁ。はぁい……!」


 問いへの答えが帰ってこなかったのかが不服だったのか、やや不真面目な返事を返す内宮。

 しかし深雪は彼女の態度は意にも介さず、ひとつ大きな頷きをした。


「以上、機体割り当ての発表を終えます。知っての通り、メタモスはΝ(ニュー)-ネメシスの空間歪曲砲以外の武器では足止めしかできません」

「そら、いくらボコスカ撃とうにもすぐ再生するからな」

「本来であればΝ(ニュー)-ネメシスが矢面やおもてに立ち、メタモスを撃破しながら侵攻するのが理想です。しかし空間歪曲砲の連射が効かない以上、相手の数が膨大なためそれは叶いません。ですので、皆さんは自身の安全を第一に考えつつも、ハイパージェイカイザーのアシストに徹していただきます」

「「「「了解!」」」」


 全員が返答を返したこのタイミングで、格納庫内に警報が鳴り響いた。

 赤い光が裕太たちを照らす中、ブリッジクルーのひとりが廊下の方向からあわてて深雪へと駆け寄る。


「艦長! 前方より無数のワープ・アウト反応を確認しました!」

「始まりますか……ではみなさん、最後にひとつ私からの命令です。どうか、死なないで。……以上です」


 そう言って、廊下の方へと走り去る深雪。

 最後まで徹底して、生命を大事にするように言い続けた小さな艦長。

 その背中を見送ってから、裕太と進次郎は向かい合い拳を突き合わせた。


「進次郎、頑張れよ!」

「裕太こそ……死ぬなよ!」


 深雪に、進次郎に、そしてエリィに報いるためにも、裕太は覚悟を決めて〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉の方へと駆けた。



    ───Dパートへ続く

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