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第46話「星を発つ者」【Aパート マザー】

 【1】


「方法なら、あります……!」

姉様あねさま!?」


 突然ブリーフィングルームの扉を開き、入ってきたのはマザーだった。

 彼女の美しかった金色の髪はやや色が抜けてボサボサになり、肌の表面もところどころに亀裂のような線が入っている。

 見るからにボロボロな姿になっていた彼女は、足を引きずりながらも深雪と入れ替わるように壇上へと上がった。


「先程、意識を失っている間に……私の使命を思い出しました」

姉様あねさまの使命……?」

「私は……地球での呼称にあわせるならば、私は“メタモス”という宇宙生命体の生体ビーコンだったのです」


 突然の発言に、みなポカンと口を開き固まる。

 いきなり宇宙生命体と名乗られても、ピンとこないのは当たり前である。

 だが、その唖然を意にも介さず、マザーは説明を続けた。


「私達の種族は、知的生命体の住まう星を喰らい、文化・技術・知識を吸収して増える真社会性生物です」

「真社会性生物って?」

「地球で言うと、蟻や蜂のように女王を中心として役割に合った姿に生まれた個体たちによって集団を営む生物の形態ですね」

「せやったら、あんさんは地球で女王なるために送り込まれた言うんか?」

「いいえ。私はあくまでも、知的生命体が住まう惑星を発見するための探知機に過ぎません。ですが私は、何らかの影響によって今日こんにちまでその使命を忘れていました」


 ブリーフィングルームにざわめきが起こる。

 誰かが「マザーのせいで地球が危機に陥ったのではないか」と言い出す前に、素早く手を上げ発言したのは深雪だった。


「では今、地球を襲うメタモスたちは、あなたが呼び寄せたのですか?」

「半分は当たりです。先日、何者かが光国の宮殿を襲撃し、“地球がヘルヴァニアというけがれから解放される”などと言いつつ私から招集プロトコルを奪い取っていきました。おそらくはその人物が、メタモスを呼び寄せたものだと思います」

「……あなたさえ来なければ、地球に危機は訪れなかったわけですね」

「それについては……申し訳ありません」


 深く頭を下げて謝罪をするマザー。

 その真摯な振る舞いに、ざわめきが少し抑えられた。


「しかし、メタモスは姉様あねさまが呼んだわけではなく、地球を滅ぼそうとする悪党が仕掛けたことじゃろう? 今回は手段がたまたま水金族であっただけで、もし水金族が地球に来ていなくても別の方法で地球を危機に陥れたはずじゃ」


 フォローするように、シェンが立ち上がって発言した。

 家族同然であるマザーが責められるのは、彼女にとって決して愉快ではない。

 シェンに続くように、裕太はフォローの声を上げる。


「その悪党が誰にしろ、まずはメタモスをどうにかしないといけないだろ。それで、メタモスを一掃する方法って何なんだ?」

「地球を襲うメタモスは、空間転移能力を持った先発隊に過ぎません。倒したところで次々と現れ、数日もすれば本隊が地球へと到着します。その際に、露払い役として集められた水金族が駆り出されるでしょう」

「その中に……サツキちゃんが」

「スレイブ032、サツキが消える前に……私は彼女に女王権限を移譲しました。プロトコルを奪われた私は……水金族として力が弱まりつつありましたから」


 今にも倒れるんじゃないかというマザーの弱々しい姿は、その言葉に説得力を与えていた。

 けれども、中央スクリーンにもたれ掛かりながらも、彼女は声を絞り出す。


「なんとかしてサツキの意識を呼び起こすことができれば……彼女が水金族を味方に引き入れてくれます。その力は、必ずメタモスを退ける力となるでしょう」

「でも、どうやって意識を呼び起こせば……」

「サツキは、愛を知るという任務のために……人間らしい感情の部分が飛躍的に伸びやすい構造にしてあります。なので、彼女に最も親しい人物が呼びかければ……応えて……くれるはずです」

「サツキちゃんと一番親しいって……もしかして、僕?」


 周囲の視線が、そう発言した進次郎の方へと集中した。



    ───Bパートへ続く

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