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第45話「終末の光」【Iパート タズム界の真実】

「なんやてっ!?」

「なぬっ!?」

「これって……!!」


 文章を見た内宮、シェン、エリィが口々に言葉を放つ。

 壇上に戻った深雪が、まずは内宮からと携帯電話で指し示す。


「“無数の虫”から始まる伝説やけど、これ修学旅行ん時のコロニーで起こった宇宙怪虫事件のことちゃうか?」


 内宮の発言を聞いてから、改めて見直すと納得がいった。

 暗黒に浮かぶ住居とは、スペースコロニーのこと。

 そうだとすれば、前半の文面は合点がいく。


「でも、あのコロニー・アトランタは攻撃を受けこそすれ、滅んではないぞ? 俺の父さんは今もあそこで働いてるし」

「……そこなんよなあ。宇宙怪虫に襲われた他のコロニーなんて知らへんしなあ」

「では次、シェンさんどうぞ」


 深雪に指示され、立ち上がるシェン。


「“光の国に現れし”から始まる文源じゃが、これはわが祖国・光国グァングージャのことじゃと思うんじゃ。わらわの母上たる女王は革命軍のはなった凶弾で命を落としておる」

「けれども、光国グァングージャは滅んでは居ないし、地の星……たぶん地球だろうけど、移住なんかもしてないよな?」

「あたりまえじゃ。今も民たちは元気にしておるはずじゃ」

「では、最後にエリィさん」


 おずおずと、指されたエリィが立ち上がり口を開いた。


「えっと……自信はないけどぉ。“火の星より滅亡の光”、これって火星のコロニー・ブラスターのことじゃないかしらぁ?」

「確かに……せやけどネオ・ヘルヴァニアを止めたさかい、コロニー・ブラスターは撃たれとりゃへんで?」

「うん……さっきのふたつの伝説もだけど、あたしたちがやったことが無かったことになってるみたいなのよねぇ……」


「……そうか!」


 エリィの発言を聞いて、裕太は立ち上がった。

 伝説に上がっていた3つの事象、その全てに立ち会った裕太は共通項にたどり着いたのだ。


「この3つの伝説、俺達とジェイカイザー、それから水金族が事件に介入しなかったものなんじゃないか?」

「勇者どの、それはどういうことでござるか?」

「まず宇宙怪虫。これは金海さんがツクダニ……宇宙怪虫の幼虫を助け、俺達が敵の女王虫を倒したことでコロニーが救われた事件だ」


 あの時、あの場にいたエリィと内宮、それから進次郎がうんうんと大きく頷いた。


「そして光国グァングージャのこと。シェンが撃たれた事件の時に俺はいなかった。けれど、水金族であるマザーが女王に成り代わったから国が存続したんだ」

「そして、再びの危機にはそなた達により救われた」

「最後にネオ・ヘルヴァニア。俺たちがエリィを助けに行かなければ、ネオノアが要求を通すためにコロニー・ブラスターが発射されたとしてもおかしくはない」


 ブリーフィングルーム中が、ザワザワとざわめき出した。

 みんな飛び出した可能性の点をつなぎ、線にしようとしているのだろう。

 そんななか、深雪が大モニターを平手で叩き、ドンという音で静粛を促した。


「皆さん、恐らく同じ結論に達したと思います。異世界……タズム界に伝わる伝説とは、私達の世界で起こった出来事を記録したものだった、でしょう?」

「しかし、なぜ拙者たちの世界にこの世界の歴史が?」

「しかもオヤジ達が来たのはネオ・ヘルヴァニアの事件の前だぜ?」

「ここからはあくまでも憶測ですので、話半分に聞いてください。私の推論では、もしかするとタズム界とは……私達の地球のはるか未来の世界なのではないでしょうか?」


 広大な部屋を、しんと静寂が包み込む。

 そうかも知れないと思っていたことでも、こう言葉として放たれると現実味が感じられなかった。


「……となると、どういうことだ?」

「ガイさん。タズム界創生の歴史、みたいなものはご存知ですか?」

「ええと、おとぎ話で良いのであれば。終末の光伝説の後、神の手により世界は再生され我らタズム人が生まれたとあるでござる。魔法騎士エルフィスのようなマシナ族は、神の創造よりも以前から存在するらしいのであるが」

「つまり、メタモスと戦うために地球人が〈Ν(ニュー)-ネメシス〉を建造するも敗北。その後にマシナ族を作り滅亡。後になんやかんやあって地球に自然が戻り、再び生命の進化がイチから始まり、タズム界が創生された……と考えると、筋が通りますね」

「だからマシナ族はキャリーフレームをモデルにしたような造形だし、タズム界の通貨は日本円なのか」

「恐らく遺跡として残った日本の居住地から発掘された旧貨幣を元にして作ったとか、そういうところでしょう。……とんでもないことになってきましたね」


 深雪の言うことは最もである。

 現在、世界中が水金族・もといメタモスの攻撃に晒され苦戦中。

 このままでは伝説通りに地球が滅ぶかもしれない。


「で、でもぉ! 他の伝説があたしたちと水金族によって結果が変わったのだったら、終末の光伝説も変えられるんじゃない!?」

「エリィの言うとおりだ! このまま滅ぼされてたまるか!」

「しかし、どうするのです? これから〈Ν(ニュー)-ネメシス〉で世界中のメタモスを倒す、巡業でも始めるのですか? 根本を叩かない限り、無限に敵が現れることは想像に難くないのですが」

「けれど何もしないんじゃこのまま……」


「方法なら、あります……!」


 ざわめき立ったブリーフィングルームに、弱々しくも芯が通った、女性の声が響き渡った。


───────────────────────────────────────



登場マシン紹介No.45

【兵士級メタモス】

全高:不定

重量:不明


 水金族と同じ擬態能力を持つ怪物、メタモスの尖兵。

 擬態先によって大きさは異なるが、兵士級とされるものはおおむね重機動ロボより少し大きい程度の大きさが擬態の限界だとされている。

 裕太たちが相手をしたものは、最初は宇宙怪虫の女王個体の姿を模していた。

 その後、旧式の重機動ロボ・マグナドーンの姿へと擬態する。

 戦闘能力は擬態先に依存するため非常に高いが、ミサイルポッドを打撃武器として使用し自爆するなど、擬態先の特徴を完全に把握しているとは言い難い挙動を取る。

 なぜか宇宙生命体や重機動ロボなどに擬態する個体はいても、キャリーフレームに擬態する個体は現状確認されていない。



 【次回予告】


 いつだって、僕らは抗ってきた。

 襲われれば抵抗し、奪われれば取り返す。

 だから僕らは、大切な人を取り戻しに宇宙を目指した。


 次回、ロボもの世界の人々第46話「星を発つ者」


 ────少年の想いが、世界を救えると信じて。

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