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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第5話「裕太 VS エリィ」【Gパート 喧嘩するほど想いは深く】

 【5】


「崎口さん、〈ヴェクター〉は一旦差し戻して作り直すって言ってたな」


 江草重工の建物から出て駐車場を歩きながら、裕太はエリィに言った。


「もしかして、あたしが負けたせい?」

「どうだか? 大田原さんが何か言ってたし、問題を見つけたんじゃないかな」

「だったら良いけれどぉ……あら?」


 エリィは駐車場の向こうから、内宮が見知らぬ男と歩いて来ていることに気づいた。

 内宮もエリィ達に気づいたのか、「おーい」と手を振りながら小走りで駆けてくる。


「銀川はんと笠本はん、偶然やな」

「内宮さんこそ、どうしてこんなところにぃ? ハッ! まさかあの男にお金を掴まされて……!」

ダボ(アホ)が! んなわけあるかい! バイト先の上司と一緒に重役さんを迎えに来たんや」

「へぇー! 内宮さんがバイトしてるって聞いてたけれど、江草重工だったのね」

「ちゃうちゃう、うちが迎えに来たんは……」


 そう言う内宮の目線を追うと、ゆっくりとこちらへと歩いてくる訓馬の姿があった。

 訓馬はエリィと裕太には目もくれず、内宮と一緒にいた男へ声をかける。


「ふたりとも、迎えご苦労」

「お疲れ様です、専務。お車はこちらです」

「ああ」


 短い会話を終え、訓馬と男は駐車場の奥の方へと向かっていった。


「ああ、待ってーな! ほなおふたりさん、またな!」

「内宮さん、メビウス電子でバイトしてたのねぇ」

「そうだな……」


 訓馬たちの方へと走っていく内宮を見ながら、エリィと裕太はぽつりと呟いた。



 ※ ※ ※



「して、例の新型はいかほどで?」


 内宮と一緒にいた男──キーザが訓馬に尋ねると、訓馬は眉間にシワを寄せた。


「人の手が入る以上、操縦性がいくら向上したところで乗り手の腕前に左右されすぎる」

「となると、やはり我々のプロジェクトは性急に進めねばなりませんね」

「ああ……そのためには内宮君、君も頼むぞ?」

「うちは給料のために働いとるだけや。カネ切れんうちはつきおうたるわ」


 不敵な笑みを浮かべながら、3人はメビウス電子の社用車へと乗り込んだ。




 【6】


 江草重工を出た裕太とエリィは来た道を戻るようにして工場地帯を抜け、約束のパフェを食べるために繁華街へと足を踏み入れた。

 きらびやかな装飾の施された賑やかな通りを歩きながら、ジェイカイザーがハッと思い出したように突然声を出す。


『裕太! エリィ殿に勝ったのだから、約束の願いとやらを言ったらどうだ!』

「あ……!」


 そうだったとばかりに、エリィは口に手をあてて頬を赤らめる。

 あの時、たしかに願いをなんでも聞くと言ってしまった。


「さーて、どんな願いを言うかねぇ」


 口端を吊り上げながら顎に手を当て考える裕太。


『なんでもと言うからには、男ならばひとつしか無いだろう!』


 ジェイカイザーに囃し立てられ、エリィはますます顔を赤くする。

 なぜなら、男が女にぶつける欲望などわかりきっているからだ。

 エリィは急な展開を覚悟し、ゴクリと喉を鳴らして裕太の答えを待った。


 しかし──。


「じゃあ、パフェだ」

「えっ?」

「約束したろ、パフェ奢るって。あれ割り勘にして、でかいのを一緒に食べようぜ」


 裕太の言った素朴な願いに、エリィはポカンとあっけにとられた。


「そ、そんなことでいいの?」

『そうだぞ裕太! もったいないぞ!』

「うるせぇジェイカイザー。俺は銀川に嫌な思いさせちまったから、その償いはしなきゃ気がすまないんだ。償いと願いで合わせたら、それくらいが妥当だろ?」

「あたし、気にしてないのに……」

「俺がやりたいから言ってんだ。銀川は願いを聞くんだろ? だったらパフェ食いに行こうぜ」


 エリィは裕太の心遣いが、なんだか嬉しくなった。

 自然と表情が笑顔になり、思わず裕太の腕に抱きついた。


「わぁい! 笠本くん、だーい好き!」

「はいはい。じゃあジェイカイザー、いい感じの店探してくれ」

『おい裕太! 私を音声認識ソフト扱いするんじゃない!』


 賑やかに笑いながら、裕太とエリィは繁華街の通りを進んでいった。



  ……続く



─────────────────────────────────────────────────

登場マシン紹介No.5

【ヴェクター】

全高:8.3メートル

重量:13.5トン


 江草重工で開発中の新世代キャリーフレーム。

 新型と銘打ってはいるが、機体の大半は同じく江草重工製の既製品〈アストロ〉の流用であり、その手先の器用さは引き継いで入るものの性能的に真新しい部分は一切見られない。

 メビウス電子が開発した新型OSによって操縦時の反応速度が劇的に向上しており、操縦が不慣れなパイロットでもすぐに自分の手足のように動かすことができる。

 なお、操縦性が良すぎるがゆえに咄嗟の立て直しや危機回避がしづらい点を大田原に指摘されたため、再び開発中に差し戻された。

 【次回予告】


 年中常夏のビーチへと遊びに来た裕太たち。

 エリィ達の水着姿にみとれつつも、海を満喫する。

 そんななか、水中用キャリーフレームの影が砂浜へと迫る。

 ジェイカイザー初の水中戦が、幕を開けた。


 次回、ロボもの世界の人々第6話「死闘! 海中決戦」


「海だーっ! 熱っ!」

「イヤッホーウ! 熱っ!」

「ふたりとも、何やってるのよぉ!」

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