第45話「終末の光」【Gパート 天よりの救済】
【7】
2機の〈マグナドーン〉のうち片方が、肩部からミサイルを放出した。
背後の校舎に一発も通すわけにはいかないため、裕太はハイパージェイカイザーをミサイルの飛ぶ先へと飛び込ませ、正面で腕をクロスさせる。
「フォトンフィールド、展開ッ!」
無数のミサイルがジェイカイザーから放たれた緑色の光に触れ、爆散する。
その傍らでは、もう1機の〈マグナドーン〉が〈赤竜丸〉へ向けて先端がミサイルポッドとなっている腕を振り下ろしていた。
「そんな鈍重な動きでは、拙者は捉えられぬっ!」
軽快なバックステップで殴りつけを回避する〈赤竜丸〉。
そのまま地面へとポッドを叩きつける形になった〈マグナドーン〉だったが、突然その腕が激しい爆発を起こして吹き飛んだ。
「なっ!?」
「ミサイルポッドで地面を殴ったら爆発するのは当たり前よぉ!」
「あいつら……戦い方を知らないのか!?」
肩から先を失った〈マグナドーン〉は、まるで何が起こったのか理解できていないように首を傾げていた。
かと思うと飛び散った破片がひとりでに集まり、何事もなかったかのように失った腕が元に戻っていく。
「変形に、無限再生かよ!?」
「これじゃあ倒せないわよぉ!」
「拙者に任せるでござる!!」
一歩前に出た〈赤竜丸〉が、天高く剣を掲げ足元に魔法陣を出現させた。
その周囲からは炎の柱が次々と昇り、剣先へと集まってゆく。
「人に仇成す悪しき魂よ、地獄の牢獄にその身を収めよ! プリズン・バーニングッ!」
ガイの詠唱とともに剣が振り下ろされ、放出された炎が2機の〈マグナドーン〉を包み込む。
そのまま炎が渦巻のように螺旋を描き、その中心に敵を閉じ込めた。
「オヤジ、何をしたんだ!?」
「魔法の炎で敵を閉じ込めたでござる! これで、拙者の魔力が尽きるまでは動きを封じられるでござろうが……」
『……この方法は根本的な解決にはなりませんよね?』
ジュンナの言うとおりである。
この方法は、いわば敵を封じ込めたにすぎず問題を先送りにしただけである。
しかも、ガイの魔力が尽きるまでのわずかな時間だけ。
「今のうちに、この敵をなんとかする方法を考えないとぉ……」
「性質的には水金族? だよな?」
『確かに、日頃から我々が見ているサツキどのの変容と似たものではあったが……』
『彼女はかつて、私がガトリングで霧散させても元通りに戻りました。物理的な方法で致命打を与えるのは不可能では?』
「とは言っても、魔法剣も効かなかったでござる」
時間がないというプレッシャーの中であることを除いても、とっさにいいアイデアなど出ようもない。
唯一答えを知っていそうなマザーは、現在意識を失っている状態。
悩んでいる間にも、徐々に敵を包み込む炎が細くなっていく。
「オヤジ、後どれくらい持つんだ!?」
「うむ……おおよそ、あと1分と言ったところであろうか……」
「たったの1分!? もう時間がないわよお!」
「そう言われても拙者、魔法は不得意分野であるからして……」
『裕太、敵が暴れ始めたぞ!』
ジェイカイザーの叫びに前方に視線を戻すと、檻の中の〈マグナドーン〉がしきりに腕を振り回していた。
炎の中で爆発と再生を繰り返しながら、脱出しようともがいていた。
「ぐうっ……! こう暴れられては持たぬッ!!」
「くそっ、時間切れかよ……!」
炎が消え、自由の身となった2機の〈マグナドーン〉。
校舎を狙うように、両腕のミサイルポッドを正面に向ける。
魔力を失い、膝をつく〈赤竜丸〉。
このまま守り続ければ、ジェイカイザーのエネルギーが持たない。
かといって、相手は倒す方法のない敵。
絶体絶命の、ピンチだった。
「こうなったら、あいつらを宇宙まで打ち上げて……」
「どうするのよぉ! 真空で死んでくれるようなヌルい怪物とは思えないわよぉ!」
「じゃあどうすれば良いんだよ! このままじゃ全員やられちまうだろ!」
どうしようもない苛立ちが頂点に達し、肘置きを殴りつけたときだった。
突如入る通信、聞こえてくる少女の声。
「総員、対ショック防御! 空間歪曲砲、発射ッ!」
上空から、光の螺旋が敵へと降り注いだ。
まるで粉になって吹き飛んでいくように、光線の中で消滅する〈マグナドーン〉。
これまでの苦戦が嘘のように、あまりにもあっけなく、着弾点の地面ごと謎の敵は消滅した。
「間に合ったようですね。ご無事ですか?」
「助かったよ……遠坂さん」
「レーナから緊急の通信が入ったため駆けつけました。これより校庭に〈Ν-ネメシス〉を着陸させます。怪我人等がいる場合は優先的に運び入れてください」
通信が切れると同時に、上空からゆっくりと降下する宇宙戦艦〈Ν-ネメシス〉。
その勇姿を見上げながら、裕太は安堵の息を漏らした。
───Hパートへ続く




