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第44話「ネオ・ヘルヴァニアの落日」【Aパート 急転直下】

 【1】


「そうか……私は敗れたのか」


 通信の向こうから、ネオノアが力ない声を出す。

 その言葉に返答をしたのは、〈雹竜號ひょうりゅうごう〉のコックピットにいるフィクサだった。


「兄上。あなたの敗北は必然だった」

「必然だと?」

「兄上は運命を待つばかりに、自ら行動を起こすということに消極的だった。自ら運命を切り開こうとする、裕太くん達が勝つのは必然だったんだ」

「わかったことを言うな、我が弟よ。私の力が足りなかったことが敗因だ。それ以上でもそれ以下でもない」


 ハイパージェイカイザーの周囲に浮かぶ機体たちから、黒い物質が消えてゆく。

 自由になったキャリーフレームや重機動ロボだったが、戦いを再開する素振りは見せなかった。

 ネオノアが搭乗する〈ブラッド・ノワール〉が倒れたことで、ネオ・ヘルヴァニアの敗北という形で決着がついたことを理解しているのだろう。


「私は敗北を認め、裁きを受けよう」

「兄上……それでは────」


『ご主人様、緊急事態です。宇宙要塞の高度が低下し始めました』


 ネオノア兄弟の会話に割り込むように、ジュンナ放つ冷静な報告。

 しかし、その内容はとんでもない一大事。

 裕太は急いで、ジュンナが表示した報告に目を通した。


「少しずつ……だけど要塞が火星に近づいていっている!?」

「重力に引かれ始めてるってことぉ? でもどうして!?」

『おそらく、先程のエネルギーのぶつかり合いによる爆発の余波で、静止衛星軌道から離れてしまったものと思われます』

「エネルギーのぶつかり合い……あれか!」


 ジェイカイザーから放たれたツインドラゴニックランチャーと、〈ブラッド・ノワール〉が放出したクインテッド・ダークネス・キャノン。

 人知を超えたパワーのぶつかり合いは、たしかにあのとき宇宙を震撼させた。


「そんな……そんな……!!」


 この事態に、真っ先に動いたのはキーザの搭乗している重機動ロボ。

 落下しつつある要塞を持ち上げようとしているのか、要塞底部に張り付く〈ディカ・ノン〉。

 しかし両腕を失った状態で胴体を押し付け、バーニアを吹かせるだけでは要塞を支えることなど不可能である。


「あの中にはドクターが、私の娘たちが、私の部下たちがいるのだぞ!!」


 悲痛な叫びをあげるキーザ。

 その声を聞いて、裕太はいても立ってもいられずにペダルを踏む足に力を込めた。


『裕太!?』

「見捨てられねーだろうが! あれが落ちたら、真下にいるカーティスのオッサンたちも、タダじゃすまねえ!」

『ですがご主人様、我々だけでも要塞を支えるには出力が不足しています』

「それでも、やるんだよ!!」


 要塞の下へと潜り込み、両手で壁面を掴んだままバーニアを吹かせるハイパージェイカイザー。

 その隣に、内宮が乗っている〈エルフィス(ストライカー)〉が同じ様に要塞に手を添えた。


「内宮!」

「うちかて、目の前で人がぎょーさん死なれるのは見てられへん!」


 次々と、無事だった機体が要塞の下部に集まり、持ち上げようと手で支えバーニアを吹かせはじめた。

 援軍とばかりに、〈Ν(ニュー)-ネメシス〉から出撃した数機の〈ザンク〉達が。

 要塞の格納庫から出てきた〈ザンドール〉が。

 次々と要塞へと張り付いていくものの、落下速度は僅かずつだが増す一方であった。


『キャリーフレームがいくつ集まっても、要塞の質量が大きすぎて支えられてません』

「ジュンナ、どれくらいパワーがあったら持ち上がるんだ!?」

『概算ですが……通常のキャリーフレームの出力にして3千機は必要かと』

「そんなに……!?」


 絶望的な数字だった。

 それだけの数のキャリーフレームなど、この宇宙空間に存在はしない。

 火星中からかき集めれば十二分に揃うであろうが、今から招集をするには時間がなさすぎる。

 こうしている間にも、刻一刻と要塞は火星へと近づき加速しつつあるのだ。


「せやかて……このまま諦めろ言うんはナシやで……!!」

『……! 〈エルフィス(ストライカー)〉の支える力だけが、他のキャリーフレームより高い数値を出しています』

「そら、こいつはビーム・スラスター言うてビーム発射の反動で加速しとるから……そうや!!」


 内宮が思いついたことは、裕太にも理解できた。

 それは、武器を発射したときの反動である。

 本来、ビーム発射などの反動は反対側から対になるエネルギー噴射やバーニアをあわせて打ち消している。

 しかし、その打ち消す力をなくし、100%の反動をその身に受ける。

 その勢いは直線的な上に制御が効かないため移動には使えないが、ただのバーニア噴射に比べれば何倍もの力がある。


「ジュンナ! ハイパージェイカイザーの……」

『ハイパージェイカイザー・ドラゴニックモードと呼んでくれッ!』

「んなこと言ってる場合か! ダブルフォトンラ……」

『ツインドラゴニックランチャーだッ!!』

「なんたらランチャーの発射反動を使って押し出したらどれくらいの力になる!?」


 ジェイカイザーの訂正をガン無視して問いかける裕太。

 ジュンナは少しだけ沈黙してから、返答した。


『ハイパージェイカイザーの最大出力で、キャリーフレームのバーニア千機分に相当する出力が得られるでしょう。そして、他の38機のキャリーフレームが同様に携行火器の反動を利用すれば、あわせて千機分ほどの出力になります』

「それでも足して2千機分……。あと千機分が足りねえのかよ……!!」

「せめて、もう1機ジェイカイザーがあれば良いのにぃ……!!」





    ───Bパートへ続く

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