第43話「血塗られし漆黒」【Fパート 超勇者合体】
『裕太、何をしている!?』
「相手の言うことが本当なら、奴は宇宙から無限にエネルギーを取り込み、再生が可能。一方、俺たちは限られたエネルギーで戦わなければならない。根比べに持ち込まれたら俺達に勝ち目がない。相手もそれがわかってて、あえてこちらの攻撃を誘っているんだ」
『それでは、倒せないではないか!?』
「何か考えるんだ、何か……方法があるはずだ……!」
『ご主人様、やつの再生も完全ではないのでは?』
突然呟かれたジュンナの声。
片腕を失ったまま、眠ったようなジュンナの本体の方を見てから、コンソールに映る彼女のアイコンへと視線を移す。
正面で余裕を見せる〈ブラッド・ノワール〉の、その頭部をジュンナが拡大して見せた。
「これは……」
『頭部右側の角ユニット、その一つの先端が折れたままになっております』
「見て、裕太! この折れてるところ……断面が凍ってるわ!」
凍った傷口、敗北した姿の〈雹竜號〉。
そのふたつの事象をつなげれば、その秘密がなんとなく察せられる。
「もしもそうなら……グレイ!」
正面に〈ブラッド・ノワール〉を見据えたままスラスターを吹かせ、達磨状態の〈雹竜號〉へとハイパージェイカイザーを近づかせる。
こちらの意図がわかっていないネオノアが、通信越しに「お友達どうしで相談かね?」と嘲笑気味の声を響かせる中、裕太は機体の背中をグレイ達の乗るコックピットへと触れさせた。
「笠本裕太、敗者にかまっている場合か!」
「違う。なあグレイ、あいつの角の傷はお前が?」
「……ああ、そうだ。攻撃の軸をずらされ、致命打を与え損ねた」
「あの氷の剣、俺達に貸してくれないか?」
「なんだと?」
グレイが驚く気持ちもわからなくはない。
しかし、今のところそれだけが打開の鍵であるのは確かなのだ。
「斬りつけると同時に、その傷口を凍らせるあの剣なら……再生をさせずにダメージを与えることが可能なはずなんだ」
「待ってくれ、裕太くん。あの剣は〈雹竜號〉の魔法エネルギーで形状を維持する武器。君の機体では扱うことは……」
「ありがとうフィクサ。それだけわかれば十分だ!」
「わかっただと? おい!」
理解の追いついていないグレイの声を無視し、コンソールの表面に指を滑らせる裕太。
今まで使ったことのないジェイカイザーのシステムを、手際よく起動させてゆく。
『フォトンコネクター起動。フォトンエネルギーの出力調整を開始』
「ねぇ、裕太。何をするつもりなの?」
「何ヶ月か前に、訓馬の爺さんが発見していた新機能。使うなら今しかないと思ってな」
『あれをやるのか、裕太!!』
「新機能? それって何なの?」
「見てろってエリィ。……グレイ! 舌噛まねえように、歯ぁ食いしばれよ! フォトンエネルギー、全開ッ!!」
「笠本裕太! 何を!?」
『うおおおおっ!! 超勇者合体ッ!!』
ジェイカイザーの雄叫びに呼応するように、溢れ出るフォトンの結晶が機体の背部へと集まってゆく。
そして、バックパック部を完全に結晶が覆いかぶさると同時に、まるで触手のように細い結晶の先端が伸びた。
グレイ達が乗る〈雹竜號〉のボディへと巻き付くように張り付いた結晶が、ジェイカイザーの元へと手繰り寄せるように機体を近づけ、密着。
ガッチリと機体同士が結晶で結ばれた途端、機体を覆う緑色の光が青い輝きへと変化した。
『未知のエネルギージェネレーターへと接続を確認。リアクターからの魔力供給を開始します』
「よし! 〈雹竜號〉のエネルギーをジェイブレードへと伝送してくれ!」
『力が……みなぎってゆくぞぉぉぉっ!!』
ジェイカイザーが剣を振り上げると、フォトン結晶で構成された緑色の刃が青白く輝く氷に包まれ始める。
手の部分から送られる魔力エネルギーが、フォトンにより増幅され刃へとその姿を変えていった。
形が整えられ、一振りの氷の大剣へと姿を変えたジェイブレード。
ハイパージェイカイザーの背部に接続された〈雹竜號〉の翼が大きく開かれ、手にした新たな武器で空を払い、まっすぐに構えて見得を切った。
『名付けて、ハイパージェイカイザー・ドラゴニックモードッ!!』
───Gパートへ続く




